漂う空気の中に、ときおり出会う秋の色彩に心を躍らせながら、おふたりの結婚指輪を作っている。
今年は、いつもよりも少し遅い秋のような気がするのだけど、それでも夕暮れ時にはオレンジ色を纏った雲がとても綺麗だ。
作業机に向かい、プラチナリングを手にしていると、金属に流れる時間を、ふと感じることがある。
それは、限りなく永遠に近い時間であるように思う。
繰り返し巡りゆく季節。波のリズム。刹那と永遠と。
小さなリングの中に宿る果てしない時を思い描きながら。
さて、今日も作っている。
プラチナリングは、その幅に変化を持たせて仕立ててある。
表面には、何本もの罫書き線を描き、それをガイドラインにして、マジックで波のようにゆるやかなラインを描いた。
作業の間では、案外、0.1mm単位の数字もたくさん登場する。
そして、鉄鋼ヤスリを片手に、リングを削り出していく。
マジックで描いたラインを残すようにして、思い切りよくタッチを重ねていった。
フォルムの中に一つの流れが生まれるまで、手を動かし続けなくてはならない。
作業に夢中になっていて、気がつけば、プラチナの粉が作業台の上にいっぱいになっていた。
リングはずいぶんとすっきり削り落とされ、そこに芽生えた、小さな温度のようなものを感じることができた。
はじめてリングが自然に近づいたように感じられて、なんだかほっこりした。
考えてみると、とても腑に落ちるもので、
自然と理とは、いつも同時にあって、世界にやさしさを作り出していく。
数字を駆使しながら合理的に進める作業にもまた、金属の時間と手の揺らぎが出会う、奇跡のような喜びがある。
今、手の中にあるプラチナリングにも、そのような調和に包まれた、小さな時間が育まれるといいと思う。
おふたりが思い描いたリングは、きっと、おふたりの物語を宿す、かけがえのないものに違いないのだから。
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