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重なり合う時間。潤いと緑の中で眺めるプラチナリング #屋久島でつくる結婚指輪

考えてみると、指輪作りのあいだは、雨がよく降った。

プラチナリングが少しずつかたちになっていくのと響き合うように、島の緑もまた、日に日にその濃さを深めていったように思う。

 

おふたりの結婚指輪の造形作業がひと段落したのも、そのような雨降りのタイミングだった。

 

リングの表面に目の細かい紙やすりをざっとかけると、ふたつの丸いフォルムが現れた。

それらはまるで、ずっと昔からここで寄り添っていたような、対のシルエットを持つリングだった。

 

まだ雨は降っていたけれど、庭先でふたつのプラチナリングを眺めることにした。

 

自然の光の下で、細部の造形を確かめたかったのもあるし、

おふたりのリングには、これから緑色の石をセットすることになっているからでもあった。

 

エメラルドは、その深い色調も、どきりとするような透明感も、水に包まれた屋久島の緑にとてもよく似ていると思う。

 

 

大きさの違う2本のリングは、それぞれの質量を確かに携えながら、

ぽつりぽつりと降り続く雨の中で、ふたつでひとつにも見えた。

 

形を成したプラチナリングは、おふたりと数えきれないシーンを分かち合いながら、これから長い時を寄り添っていく。

 

リングの内側には、繋がる模様を彫刻することになっている。

 

アトリエに戻り、2本のリングを重ね合わせ、

日付と名前、繋がる模様、そしてエメラルドのレイアウトを慎重に整えていく。

 

そうしているうちに、小さい方のリングがすっと大きい方の中に収まり、なんだか嬉しくなる。

出会うことって、とても素敵なことだなあと思う。

 

長く続く雨音に耳を澄ましながら、

最後の仕上げに向けて、静かに、ほのかな希望のなかで手を進めていた。

 

 

 

雨が降り始める前に #屋久島でつくる結婚指輪

次の雨が降り始める前に。

削り出し作業のひと段落したプラチナリングのシルエットを、春の陽光の中で眺めました。

 

ふと、足元に目をやると、

タイミングを合わせたかのように、猫も日向ぼっこです。

 

若葉をつけ始めた木の下でリングを手に取ると、プラチナは鏡のように島の緑を映んでいて、思わずうっとり。

洗練された、心地の良いフォルムになってきています。

 

実は、直に肌に触れる部分はリングの内側が大きく占めていて、

ここは見えないところではあるけれど、日々のつけ心地に大きく響く部分を大切にしていきたいと思うのです。

 

表面の造形がうまくできていることを確かめてからアトリエに戻り、さっそく内側の削り出し作業へと取り掛かかりました。

内側も表面と同じように鉄工ヤスリを入れ、丸く滑らかなカーブに仕立ててまいります。

 

削り進めるごとに、作業台にはプラチナの粉がたくさん散らばり、その集積を眺めていると、もうこんなところまでやってきたのだなあと、なんだか少し、この指輪作りが名残惜しく感じられたりもしました。

 

手を動かすうちに、アトリエが急に静かになってような気がして、窓を開けて海の方を眺めると、厚い雲が水平線の方角にかかり、また雨の気配が漂い始めていました。

波音とともに、あたたかく湿った風が部屋の中に流れ込んできました。

 

雨に潤されて、緑はいよいよ深まり、山を歩く時間も、これからまた心地よくなっていくのでしょうか。

 

アウトドアでの活動が多いおふたりなので、

シンプルでプレーンなかたちは、扱いやすさという点でも心強いものだと思います。

 

小さな傷や曇りも、ときどき手をかけながら整えていく。
そうして過ごす時間の中で、この指輪は少しずつ、おふたりのものになっていくのだと思います。

 

島のアトリエで作っているふたつのリングが、未来へと繋がっていく。

そう思うと、いまこの瞬間が、かけがえのないものに感じられました。

 

 

 

屋久島でつくる結婚指輪

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hp@kei-jewellery.com
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制作編

やわらかな力強さ。島のリズムに育まれるプラチナリング #屋久島でつくる結婚指輪

やわらかな力強さ。島のリズムに育まれるプラチナリング #屋久島でつくる結婚指輪

タッチを加えるごとに、その手触りを変化させていく。

金属を扱う手作業は、どこか生きものと向き合っているようで、面白い。

 

プラチナをリング状に整えたあと、表面を金槌でコンコンと打ち付けていった。

ぐるりと一周、また一周。

表面と側面に凹凸が現れるまで、均一な力をしっかりと加えていく。

 

こうして圧力を加えると、プラチナはきゅっと身を引き締めるようにして硬化する。

その変化の中で、リングには温度を帯びた“動き”のようなものが宿っていくのがわかる。

 

これから長くお使いいただく結婚指輪なので、しっかりと丈夫に仕上げていきたい。

 

 

屋久島で出会ったおふたりと、屋久島でお会いして始まった結婚指輪作り。

屋久島に咲いた花。おふたりとの結婚指輪作りのはじまり。#屋久島でつくる結婚指輪

 

小さなリングではあるけれど、プラチナには確かな重さがある。

同時に存在する硬さとやわらかさは、大地から生まれた金属ならではの、深く有機的な質感なのだと思う。

その手触りがやさしく響くように、リングを丸いフォルムに削り出していく。

 

視覚的な美しさと、日々のつけ心地。

その両方を丁寧に重ねていくと、ラウンドシェイプというかたちが、いつの時代にも選ばれてきた理由が、ふと腑に落ちてくる。

 

削り出し作業の前に、庭先の花々に癒されておく。

やわらかな力強さが、いつもここにある。

 

鉄工ヤスリを、目の粗いものと細かいもの2本。

それぞれを使い分けながら、ここまで一気に削り出した。

滑らかで途切れのないラインを生むためには、途中で手を止めないことが大切になる。

 

ラウンドシェイプのリングを造形していると、いつも白いシャツやイチゴのショートケーキのことを考える。

シンプルで普遍的なフォルムだからこそ、そこには作り手のスタイルやアイデンティティが強く反映される。

 

わたしの場合、それは、緑に囲まれた島での暮らしそのものであるのかもしれない。

その日々を快適にしていくように、リングのデザインもより良いものに磨き上げていきたい。

 

このあと、ヤスリを精密なものに持ち替え、細やかにバランスを整えていく。

目立たない工程ではあるが、多くの時間と集中力を要する作業だ。

 

なんともゆっくりとしたペースのものづくりだけど、

島のリズムに合わせて、少しずつ、ふたつのリングが育まれていく。

今はそのような時間とともにあることが、楽しい。

 

夕暮れ時には、オレンジ色に染まる雲を空に見上げた。

日も長くなってきたなあと思いながら、

ずっと遠くを眺めて、目をゆっくりと休ませていた。

 

 

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屋久島に咲いた花。おふたりとの結婚指輪作りのはじまり。#屋久島でつくる結婚指輪

しとしとと、やわらかな雨が降り続いている。

島を足早に通り過ぎるたび、植物たちを目覚めさせ、その緑を深めていく春の雨だ。

海から強く吹きつける風は、湿度を帯びて重たい。

気がつけば、ずいぶんとあたたかくなったものだ。

 

 

そういえば、おふたりとアトリエでお会いした日も、雨が降っていた。

屋久島で出会われたお二人と、今年最初の結婚指輪の相談会でした #屋久島でつくる結婚指輪

 

山茶花やツワブキの咲く頃から始まった結婚指輪作りだったけど、

あれから冬を越え、庭先の芝生も、柔らかな青さを帯びてきた。

 

気がつけば、半袖のシャツ一枚で過ごせるほどの気候になり、

指輪作りを始める朝には、生垣のハイビスカスが今年最初の花をつけていた。

 

これから島は、熱帯の気配に包まれていくことだろう。

南国ならではの鮮やかな色彩が、日々に寄り添っていてくれる。

 

窓の向こうを眺め、どこか心を弾ませながら、作業机に向かうことにした。

いよいよ、おふたりの指輪作りが始まる。

 

作業のために用意したプラチナを、リング状に整えるところから始める。

酸素トーチの炎に包み、1000度以上まで温度を上げ、その両端をつなぎ合わせていく。

 

すぐにプラチナは強い光を帯び、仄暗いアトリエにオレンジ色の光を放ちはじめる。

その光から目を守るためにサングラスをかけ、プラチナが溶け合う瞬間を見定める。

 

細い炎の先端を接続部分に当てては外す、そのタッチを何度も繰り返しながら、来るべきタイミングを注意深く待ち続ける。

 

やがて、つなぎ目が溶け合い、ひとつのリングが生まれる。

 

その刹那、溶解が周囲にも広がっていくのがわかる。

 

金属に生じた微細な変化に、短距離走のスタートのように体を素早く反応させ、リングから火を外した。

 

つなぎ合わせたプラチナを円形に整えると、二本のリングがぴたりと重なり合い、嬉しくなった。

不意に、アトリエでお会いしたおふたりのことを、懐かしく思い出す。

 

思えば、透明な糸のようなつながりに導かれるようにして、ここまでやってきた。

その出会いは、偶然なのかもしれない。

けれど、だからこそ、確かにここにあると信じられる何かがある。

 

屋久島には、不思議な磁力のようなものが漂っているように思う。

この指輪作りも、あるいは、島に咲いた一輪の花のようなものかもしれない

 

雨音に包まれたアトリエの中で、心がどんどん平らになっていく。

まるでそのリズムに励まされているように、プラチナリングに向かい、長い時間手を動かし続けていた。

 

 

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Water and sunlight. Time woven together. Flowers. #YakushimaWeddingRingsStories

The rings are gradually taking shape in my hands.

I feel that being able to share the time in which jewelry comes to life is an irreplaceable joy.

 

The platinum and pink gold were joined in the intense heat of the flame.

Each metal forms exactly half of the ring.

It was a rather demanding process to align them perfectly, but I think I managed to bring it together nicely.

 

As I worked, before I knew it, lantana was in full bloom in a corner of my garden.

In the shade of the tree, surrounded by dappled light, I looked at the finished ring.

Water and sunlight. Time woven together. Flowers.

Our meeting—yours and mine—has taken shape as two rings, now here.

 

Grateful to Yakushima for this beautiful encounter.

 

When I looked up, the evening clouds were tinted orange.

A faint sound of waves drifted in from the sea.

I let the image of the floral engraving spread quietly in my mind.

A cat noticed me and ran past.

And just like that, a day on the island passed gently.

◻︎

work in progress

Where Two Metals Are Shared #YakushimaWeddingRingsStories

ツワブキの指輪。大切な日に花を贈るように。#屋久島でつくる結婚指輪

大切な想いを込めて、花を手渡すように。

イエローゴールドとダイヤモンドでお仕立てした、ツワブキの指輪。

春の陽だまりの中に満ちる輝きを、どこかほほえましく思いながら眺めました。

 

ツワブキの指輪 18k yellow gold, diamond

 

新しい始まりを迎えるおふたりを祝福するように、春のあたたかな光がリングを包み込んでいます。

 

ゴールドでかたどった花は、7mmほどの繊細なフォルム。

リング部分はすっきりと細く、

指に纏うと、手の中に花が開いたように映って、ふと心が弾みます。

 

ツワブキは、屋久島の冬をやわらかく彩る黄色い花です。

南の島を包み込む冷たい風気の中、

庭先や散歩道に寄り添うように集まり、ぽこぽこと咲くその愛らしい佇まいを眺めながら、

ひかりそのもののような眩さに、いつも励まされています。

 

島に暮らすようになって大好きになったツワブキの花ですが、

ジュエリー作りへの憧れは、いつもこの島で過ごす時間の中にあるのかもしれません。

 

何気ない日々の喜びも、ふたりで分かち合うことができれば、素敵ですね。

 

緑の香りと、満ちていく光とともに、この指輪をお届けできたなら嬉しく思います。

 

 

彼が訪れ、その自然に魅了された屋久島に咲く花が、ひとつのジュエリーになりました。

 

新緑の季節を迎えた屋久島より。

大切なジュエリー作りをお任せいただき、本当にありがとうございました。

 

 

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Where Two Metals Are Shared #YakushimaWeddingRingsStories

I successfully finished hammering the platinum ring, and shaped the pink gold into the same round-square form.

 

I was watching the brilliance of the rings against the green, feeling a deep sense of relief.

 

Each had its own character, yet I could feel something that resonated between them.

They were already one in my hands.

 

After the rain, my beloved wisteria came into bloom.

Moisture gradually filled the air, and the work was already entering its latter half.

As I cherished this irreplaceable moment, with droplets resting gently.

 

It felt like the most natural thing to create the ring, allowing the two metals to be shared within it.

 

I divided the platinum ring into two halves, and did the same with the pink gold.

There were two platinum halves and two pink gold halves on the workbench.

 

Each of them will wear the other half of the same ring — their destined other half.

Life is filled with joy when someone who shares the moments of everyday life is by your side.

Still, each custom-made piece, born from the couple’s cherished thoughts, is filled with new discoveries.

Surrounded by their happiness, I find myself quietly excited to explore a new design.

 

work in progress

In the Rhythm of the Island #YakushimaWeddingRingsStories

In the Rhythm of the Island #YakushimaWeddingRingsStories

I am making wedding bands for a couple who will come to Yakushima Island next month.

They live in Switzerland. Because of the distance between us, I feel this is a truly precious work, where we can sense a genuine connection.

 

We always love flowers and hold dear the feeling of a natural mystic blowing through the air.

Thank you so much for asking me to create your rings to celebrate such an important moment.

 

After forming the two rings into a circle, I began shaping the surface of the platinum ring with a steel file.

Time seemed to stretch a little longer than usual, perhaps because of their larger size.

I need to proceed patiently and with care.

 

Maybe it had rained during the night, and dayflowers were blooming in the garden.

The long rainy season is approaching this island.

 

Well, this is one of the most important processes.

I work the surface of the ring with a hammer, applying firm, controlled strikes.

 

When I strike one side, the ring deforms, so I work the opposite side to bring it back into balance.

I repeat this again and again until a deep, even texture emerges, like the soft rippling of water.

 

Little by little, the rings begin to take shape in my hands.

I felt a quiet breath of life emerging within the small ring, akin to what I encounter in the rhythm of the island.

 

work in progress

Platinum, Pink Gold, and Flowers #YakushimaWeddingRingsStories

Platinum, Pink Gold, and Flowers #YakushimaWeddingRingsStories

Spring flowers are blooming every day in Yakushima South.

The beginning of the tropical season is full of life.

Strong winds and rain gradually bring warmer, calmer days.

 

I visited Shakunage Park to see the rhododendrons in bloom.

It had been nearly two years.

They brought me a clear and focused mind before I began the new work.

 

Listening to the gentle flow of the river in the spring light,

I was thinking about the couple I’ll be meeting next month in Yakushima.

 

This is a story of making wedding rings, woven from their time together and flowers.

I feel that the seasons on Yakushima are always with us.

 

I began with 4.0mm wide platinum and 18K pink gold.

As the first step, I put them into the flame of a gas torch.

This process softens the platinum and pink gold, making them easier to work with.

 

Still, they feel quite heavy and have a strong presence.

There is a sense of something like the resonance of metal born from the earth, quietly coming through.

 

After heating, I shaped them into rounds with a hammer.

I had to apply a strong force to work that hard, solid metal.

Again and again, I worked it until it forms into a circle.

 

After soldering the two ends, the platinum and pink gold had unmistakably become rings.

They had taken on an unwavering strength.

 

This marks the beginning of a long process, leading to the day we meet in Yakushima.

And it already feels like a meaningful step forward.

 

I hope to take my time making the two rings.

 

I was thinking of a morning, filled with spring light and the fragrance of blossoms.

 

 

ひとつの音色。雨上がりの光の中で、プラチナリングを眺める #屋久島でつくる結婚指輪

屋久島サウスに長く降り続いた雨が止んだことに気がついたのは、プラチナリングの造形作業が終わりに差し掛かった頃だった。

 

ハンドモーターで内側をなめらかに磨き仕上げていると、不意に、窓の向こうからどこか懐かしい光が差し込んできた。

 

数日ぶりに包まれる陽光に、自然と感謝の気持ちを抱くのは、雨の多いこの島ならではの感覚なのかもしれない。

 

思い切りよく窓を開け放つと、湿った大地の香りが勢いよくアトリエへと満ちてきた。

 

春の香りに導かれ、庭先に出てみると、光の中で大きなハイビスカスが煌めいていた。

 

花の周りにはいくつもの蕾がふくらみ、芽生えたばかりの若葉が、透き通る緑を帯びている。

 

弾むような春のリズムに寄り添いながら進めてきた指輪作りだったように思う。

いよいよ折り返し地点を過ぎ、ここまでの時間をどこか懐かしく振り返りながら。

 

プラチナリングのアウトラインを、雨上がりの光の中で眺める。

緑を通り抜けて届く光は、次第に強さを増し、小さなリングの中に深い陰影を生み出していた。

 

リングの角度を細かく変えながら、光の巡りを確かめる。

そのたびに、プラチナの表面が鏡のように光を返す。

楽しくなって、くるくる。

 

寄り添うふたつは、緑の中でやわらかに響き合い、ひとつの音色を帯びているように感じられた。

 

リングには、デザインの核となる彫刻模様を施していくわけだけど、

この続きは、また別のお話にしよう。

 

おふたりだけの装飾がかたちを結ぶよう、これから細やかな調整を重ねていく。

それは、おふたりと抱いてきたイメージが、島の季節の中で育まれ、どこまでも広がっていくような時間にも感じられる。

 

想像していたよりもずっと素晴らしい未来が待っている。

完成は、もう少し先のお楽しみに。

 

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制作編

海と森、そして光のイメージへ #屋久島でつくる結婚指輪

 

海と森、そして光のイメージへ #屋久島でつくる結婚指輪

一日を通して、長い雨が降り続いていた。

アトリエは湿度のベールに包まれたように静まり、窓の向こうでは緑がひときわ深くなる。

雨はときおり激しさを増してざあざあと降り、やがてまた穏やかになる。

そのようなリズムを、ゆっくりと繰り返していく。

なんとも屋久島らしい時間を心地よく感じながら、作業に夢中になっていた。

 

 

熱帯の季節へ。

いつも結婚指輪作りに寄り添ってくれる屋久島に、ありがとう。

時の中に咲く、プラチナリングのかたち #屋久島でつくる結婚指輪

 

 

気がつけば一年の1/4が過ぎていた。

やがて雨はさらに深まり、屋久島サウスには百合や紫陽花が咲き始めるだろう。

 

ゆっくりと、けれどもどこまでも力強く、

島を包み込む自然のリズムに励まされながら。

 

さて、今日も作っている。

プラチナリングの表面に施す彫刻模様は、今回の結婚指輪作りの核となる部分なので、

油絵の具をのせる前の白いキャンバスのように、余白ができるだけ大きくなるよう、丁寧に作り上げていく。

 

あるいは、そうして余白を立ち上げていくこの感覚は、むしろ日本画的なアプローチに近いのかもしれない。

 

海と森、そして光のイメージへ。

 

ほのかに丸く整えた表面に、一周するように三つの象徴的なかたちを、ラインで描き入れていく。

 

最初は目の粗い鉄工ヤスリで大きく削り出し、徐々にヤスリの目を細かくしながら、均一な曲面へと整えていく。

無数の平面を幾重にも重ねるようにして、ひとつの滑らかなカーブを作り上げていく。

削り出すたびにプラチナの生の質感があらわになり、その無垢な輝きに心を奪われる。

 

意外かもしれないけれど、プラチナの手触りはとてもやわらかい。

その有機的な質感が、より自然に手に馴染むよう、内側にも緩いカーブを与えていく。

 

造形作業がひと段落するまでに、4本の鉄工ヤスリと数種類のサンドペーパーを使った。

表面と内側はなだらかなカーブに包まれ、側面にすっきりとした平面を残したフォルムが出来上がった。

 

よりスムーズなラインを生み出すため、ここまでは手を止めることはなかった。

その小さなリングの中には、止まることのない静かな流れのようなものが宿っていることを、確かに感じ取ることができた。

 

作業机の上には細かなプラチナの粉が散らばり、デスクライトの光を受けて、きらきらと輝いていた。

 

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時の中に咲く、プラチナリングのかたち #屋久島でつくる結婚指輪

タッチを重ねるたびに、造形のリアリティが立ち上がってゆく。

 

両端をつなぎ、ひとつの円となったとき、プラチナは揺るがない強さを帯びるのだけど、その手触りはどこまでもやわらかい。

金属が纏う永遠と、わたしたちが触れる一瞬の安らぎが、ひとつの場所で響き合う。

 

今という瞬間が幾重にも重なり、やがて永遠が形作られてゆく。

 

 

沖縄と神奈川、そして屋久島。

広い海を越え、手を繋ぐようにして、おふたりの結婚指輪を作っている。

あたたかな想いとプラチナリング。熱帯へと移ろう時間 #屋久島でつくる結婚指輪

 

金属の悠久の時間に身を委ねて作業を進めていると、

自分と金属のどちらが導いているのか、わからなくなることがある。

リングを作っているのではあるけれど、

わたしたちはこの宇宙の中でプラチナに出会い、ほんのひととき、そこに身を寄せているだけなのかもしれない。

そう思うと、どこまでも果てしない感覚に包まれる。

 

それは、海を泳ぎ、森を歩くときに訪れる、

畏れと安らぎが静かに広がっていく感覚に似ている気がする。

 

その世界に対する親しみのようなものを、大切な人と分かち合えると、日々は喜びに満たされる。

おふたりとは、空気の中に漂う悠久の時間を大切に思う気持ちで、繋がっているのかもしれない。

 

一日の始まりに、いつものビーチに向かった。

その途中に車を止めて眺めた朝焼け。

太陽は、リングのモチーフのひとつになっている。

 

重なり合い、ひとつになり、そしてまた重なり合う造形が好きだ。

 

プラチナをリング状に整えたあと、その表面と側面を金槌で叩いた。

真金に通し、鉄のプレートの上で、目当てのサイズに達するまで何度も打ち重ねていく。

 

均一に刻まれた槌目模様は、このあと削り落とすことになるのだけれど、

削り出し作業の前に、こうしてしっかりと圧力を与えておくと、プラチナは組成を引き締めるように、さらに強さを帯びていく。

 

この工程は、料理で言うところの下拵えにあたる、大切な部分だ。

これから長く寄り添う指輪になるよう、見えないところをしっかりと頑張っておく。

 

ゆっくりとした島のリズムで、いつも遠回りのような道のりだけれど、じっくりと進めていこう。

 

今この瞬間が、確かなかたちへと繋がっていく。

リングが完成に近づくにつれ、始まりのときもまた近づいてくる。

そう思うと、ひとつひとつのタッチが、いっそう愛しく、大切なものに感じられた。

 

 

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