お二人が選んでくれたのは、ラウンドシェイプのデザインである。
その丸みのあるフォルムには、シンプルながらも奥深い魅力が宿っている。
ラウンドシェイプのリング作りは、その簡潔さゆえに、作り手の感覚や思いがダイレクトに映し出される。
普遍的で、特別な存在であるという意味合いで、白いシャツであったり、いちごのショートケーキに通じるものがあるのかもしれない。
リングの表面を丸く、柔らかな手触りに仕上げていく。
甘くなり過ぎないように、すっきりとシャープな印象を、余韻のようにほんのりと残しておく。
鉄鋼ヤスリで少し削り、ルーペで細部を確認をしながら、また少し削りだす。
作業もとてもシンプルだ。
そのようなシンプルでチャレンジングな作業が、今年最後の指輪作りにふさわしく感じられる。
はるか小笠原諸島からお越しいただいたお二人と。
アトリエでお話ししてみると、ハイビスカスだったり、シダの葉だったり、(あと、船の流通事情も!)南国での暮らしが似ていて、むっちゃ興味深かった!
あれからハイビスカスの季節が過ぎ、庭先に山茶花やツワブキの花を眺めながら作業机に向かう、冬のリズム。
昔からシンプルなものが好きだった。
シンプルに向かっていくと、その中にある複雑性というか、エッセンスのようなものが浮かび上がってくるような気がする。
お二人の大切な想いや、島での暮らし、こうしてわたしと出会ったことも。
実に色鮮やかな時間が、この小さなリングの中に広がってゆく。
さて、今日の造形作業はいかに。
3本の鉄鋼ヤスリとルーペを使い、ここまで一気にタッチを重ねた。
庭先でリングを手に眺めながら、ほっと一息をついているところ。
小さなリング作りは、ついキューっと集中し過ぎてしまいがちなので、島の緑に囲まれた暮らしがふわりと気持ちを和らげてくれるのは、本当にありがたい。
削り出されたリングは、生まれたばかりのような新鮮な表情を見せ、艶めく輝きを放っている。
繊細なフォルムではあるけれど、シャンパンゴールドの確かな重みが手の中に伝わってくる。
ここまで上手く造形を進めることができたように思う。
あまりに楽しくて、つい夢中になり過ぎてしまうところがあるけれど、
ポンカンでも食べて、ゆっくりと作業を進めていこう。
指輪作りは、今日も島の時間の中にある。
ふと見上げた12月の空は、眩しく、どこまでも澄み渡っていた。
オーダーメイドのお問い合わせはこちらまで
hp@kei-jewellery.com
tel: 0997-47-3547