アトリエの庭先に、メジロたちが集まってきている。
一年ぶりに眺めるそのフォルムは、コロリとしてなんとも愛らしい。
ほんと、ため息が出るくらいに。
作業の合間、山茶花の生垣を素早く行き来する様子を窓際から眺めると、すぐにその気配に気がついて飛び去ってしまう。
しばらく作業に没頭し、「そろそろかな」という頃、またそっと窓の向こうを覗いてみる。
いつもの冬のリズムである。
お二人と屋久島のアトリエでお会いしたのは、6時を過ぎてもまだまだ明るさが残る、夏の新月の日でした。
あれから時が過ぎ、いよいよ結婚指輪作りが始まったのですが、気がつけば、日没がすっかり早くなっています。
山茶花にツワブキ、そして北西の風。
大好きな冬の屋久島を慈しみながら、お二人の結婚指輪を作っています。
島もずいぶんと寒くなってきたけれど、そういえば、熱いコーヒーがひときわ美味しく感じられるようになった気もする。
分厚いフリースを着込んで、えいっ!と思い切りよく散歩に出かけると、美しく澄み切った景色に出会えたりもする季節だ。
そんな何気ない日常で出会う、さまざまな事象が持つ側面のようなものを、リングにも表現することができれば素敵だろうなと、思いを巡らせながら。
さて、今日も作っている。
お二人が選んでくれたピンクゴールドを、リングの形へと少しずつ作り進めていく。
ピンクゴールドは、反発する力が大きい素材なので、バーナーの火を回しながら、ピタリと両端が組み合わさるようにテンションをかけていく。
しかも、より高温での作業が必要になるので、溶けてしまわないよう最大限の注意を払わなければならない。
ピンクゴールドは意外と扱いの難しい素材で、指輪作りはいきなりのクライマックスを迎えたところだ。
表面をざっと薄く削り落としたところで、ほっと一息。
作業を始めてからずっと黒い幕に覆われていたピンクゴールドに、ここで再び輝きが宿った。
シックであり、雅やかである。
ピンクゴールドが持つ、生の色彩だ。
それにしても、結婚指輪を作っていると、ついついこうやって重ね合わせたくなるんですよね。
彼のリングの上に彼女のリングを乗せると、ぴたりと合わさって、なんだかほっこりしたワンシーンでした。
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