
ゆうこさんと一緒に、秋の森を歩いてきました。
澄み渡る風、緑の香りに包まれて、また新しい気持ちで制作に集中できそうです。
やさしさ満ちる、屋久島にありがとう。
みなさま、どうぞ素敵な連休をお過ごしください。

ゆうこさんと一緒に、秋の森を歩いてきました。
澄み渡る風、緑の香りに包まれて、また新しい気持ちで制作に集中できそうです。
やさしさ満ちる、屋久島にありがとう。
みなさま、どうぞ素敵な連休をお過ごしください。

アトリエの庭に、山茶花が咲き始めました。
今年最初の一輪です。
山茶花は庭の生垣になっているのですが、
一面の緑に、ぽつりぽつりと星のように赤い花が浮かび上がるのを見ると、
ああ、冬がそこまで来ているのだなあ、としみじみ思います。
日に日に開花の勢いを増していくのが、山茶花のすごいところで、
ゆっくりとだけど、休むことのないそのリズムに、いつも励まされているように思います。
おふたりの指輪が完成する頃には、きっと満開に近づいていることでしょう。
わたしもしっかりと歩みを進めていかなくては。

タンザナイトを囲む石枠をプラチナで作ったあと、シャンパンゴールドでころりと丸い石枠をひとつ仕立てました。
ローズカットのダイヤモンドを包み込むための石枠です。
その丸い石枠に、透明のダイヤモンドをそっと添えてみると、まるで一滴の雫が宿ったように見えました。
ローズカットに仕立てた石は、どちらも光をそっと受け止め、どこまでも静かに輝いています。
こうして、初めてふたつを揃えて眺めてみると、目の前に小さな小さな花が咲き始めたように感じられて、ぽっとあたたかな喜びに包まれるのです。

さて。
シャンパンゴールドの丸い石枠には、同じくシャンパンゴールドのリングを合わせてお仕立ていたします。
まずはボリュームのあるリングを造形し、金槌で叩きながら、サイズを整えていくところです。
こうして叩きながら仕上げていくことで、ゴールドは組成が引き締まり、きゅっと硬くなっていきます。
コンコンと、シャンパンゴールドの音色がアトリエに響き渡ります。
繊細で、そして丈夫なリングとなるように、
今日も一歩ずつ。
小さなタッチを積み重ねていくのでありました。

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tel: 0997-47-3547
制作編

屋久島から、海の向こうへと旅立つネックレス。
コスモスの咲く季節に、お作りすることができました。
海沿いに広がるコスモス畑で、そっとケースを開くと、
一輪の花がふわりと開いたように見えて、心躍りました。
潮風にゆらめく色彩。
湿度を帯びた草の香り。
爽やかな秋を迎えた屋久島サウスより、
大切な贈りものにお選びいただき、ありがとうございました。

コスモスのネックレス silver, pink sapphire
シルバーでかたどったお花の大きさは、約1cm。
花びらの上に収まるほどの、繊細で軽やかなペンダントトップです。
中央にはピンクサファイアを添えて、色鮮やかな印象にお仕立ていたしました。
花のそばで眺めてみると、ピンクサファイアの色が響き合っていて、
自然の彩りが織りなす、その一瞬の美しさに見入ってしまいました。

思えば、子供の頃からずっと眺めてきたコスモスですが、
季節が深まり、空に広がる星のようにキラキラと散りばめられた花々に出会うと、
やわらかな気持ちに包まれます。
「ああ、秋がやってきたのだなあ」と。
このやさしくてカラフルな癒しをお届けできれば、何より嬉しく思います。
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夜明けの空に、オレンジ色に染まる鱗雲が広がっていた。
山から吹き下ろす風は、ひんやりと冷たい。
もう7時前だというのに、山々の稜線はまだ深い闇の中にあった。
一年ぶりに眺める、窓際の風景が爽やかに感じられて、そのまま少し遠出をして、朝の散歩に出かけることにした。

コスモス畑は、海を望む段々畑の一角にあった。
朝のやわらかな陽光を受けて、マゼンタや白、ピンクの花々が、気持ち良さそうにゆらめいている。
畑の畔には、人が一人通れるほどの細い道が伸びていて、その小径を辿りながら奥の方へ分け入ってゆく。
湿度を帯びた草の香りが、ふわりと立ち込めている。
腰を下ろして、目線を低い位置に移すと、カラフルな世界に包まれて心が躍った。
なんだか、子供の頃の記憶にも、同じような色彩があったよな、と思う。
あの頃からずっと変わらないけれど、ほんのりと冷たくて、ほんのりとあたたかな秋のひとときに、今日も癒された。
タンザナイトとダイヤモンド。
夜の空と、雫の煌めき。
想いの詰まった大切な時間をそっと掬い取るようにして、おふたりの結婚指輪をお作りしています。
「タンザナイトをセットする彼のリングとネックレスは、夜をイメージして、できるだけ黒いイメージで仕上げてほしいのです。」
指輪作りの始まりに、おふたりがそうリクエストをしてくれた。
すぐに、ホワイトゴールドが思い浮かぶ。
きっと、これが夜の印象にもっとも近いだろう。
それでも、できる限りそのイメージに近づけたいと思い、地金の配合を見直すことにしたのだけど、
その過程で、“黒”という存在について、これほど深く考察を重ねることになるとは、もちろんその時は考えもしなかった。

ホワイトゴールドの黄色みを限りなく抜き、
ピュアな色彩へと整える。
鏡面の光沢を磨き上げ、反射の純度を極めることで、
光と影はより強く際立つ。
昼があるから夜が生まれるように、
白が澄むほど、影は深く、静かに育っていく。
小さなリングの中には、
同時に存在するたくさんの時間が流れている。

スタイリッシュな印象に整えたリングの内側は、丸くやさしいラインに削り出した。
指に触れる部分を、なによりも大切にする。
側面はシャープに保ちながら、表面には、気づくか気づかないほどのごく緩やかなカーブを施しているのは、ここだけの話だ。
そして、角をしっかりと落とし、さらに手触りをソフトにする。
おふたりとともに思い描いてきたリングの姿が、いま、ここに生まれつつある。
おふたりの大切な想いも、あるいは、これまで費やしてきた数ヶ月の日々そのものも、いっそう輝いて感じられて、喜びがどんどん広がってくる。
目指すフォルムは、やわらかなスクエアシェイプだ。
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夜空のように澄み渡る濃紺の石が、屋久島の緑の中で静かに輝いている。
ローズカットに研磨されたその石の表情は、とてもやわらかい。
角度を変えるたびに姿を変える小さな煌めきを眺めながら、いよいよ制作が始まるのだという胸の高鳴りを感じていた。
おふたりとの結婚指輪作りでは、それぞれのために選んだ天然石がデザインを支える大切な柱になっている。
彼のタンザナイトは濃く深い色合いのものを選び、ローズカットに研磨するところから始めた。
彼女には、同じローズカットで、同じサイズのダイヤモンドを用意した。
その二粒の石に寄り添うように、二本のリングと一本のネックレスのデザインを組み立ててきた。
タンザナイトの深く思慮深い静けさと、シックで品のよいダイヤモンドの煌めきそのものを纏うような、シンプルで印象的なフォルムだ。

彼女から初めてメッセージが届いたのは、島にもまだ少し寒さの残る春先のことだった。
天然石の選定や、それに合わせる金属選びに相談を重ねているうちに、気がつけば夏が過ぎてしまった。
彼女には、何通りものデザイン画を描いてもらったり、電話で長い打ち合わせにお付き合いいただいたりもした。
慣れない作業だったと思うけど、これまで本当にありがとう。
こうして準備に十分な時間をかけたおかげで、造形の向こう側にある大切な想いまで、しっかりと分かち合えたように思う。
おふたりと手を繋いでいるような、あたたかな安心感に包まれながら。

作業机に向かい、タンザナイトを包み込む石枠の制作に取り掛かる。
待ちに待ったファーストタッチに、心が静かに高鳴る。
タンザナイトに合わせるホワイトゴールドは、すっきりと深いダークトーンを表現するために、できるだけ黄色味を抑えた配合のものを選んだ。
今回初めて挑戦することもたくさんある。
最初に、4.0mmの石がぴたりと収まるよう、ホワイトゴールドの板を巻いて円筒形の小さなパーツを作った。
次に、その内側にちょうどはまる大きさで、もう一つの円筒形のパーツをつくる。
この内側のホワイトゴールドが石を支える土台となる。
とてもシンプルな仕組みだけに、仕事の美しさや造形の心地よさが、そのまま表に現れやすくなる。
タンザナイトの色彩を最大限に響かせられるよう、丁寧に、ゆっくりとタッチを進めていく。
一度しかない、この指輪作りの時間をしっかりと味わっていく。

季節が深まるにつれ、島では空が澄み、空気が冷たく感じられる日が多くなってきた。
庭先では、シロツメクサや、赤や白のハイビスカスが、生き生きとした表情で迎えてくれる。
朝露に包まれた緑の中を歩くのは、心が躍る。
南の方角から潮風に乗って波の音が聞こえてくる。
いつもの島の時間に励まされ、また作業机に戻る。
このようにして、おふたりの指輪作りは、穏やかに、その歩みを進めていくのであった。
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tel: 0997-47-3547

material: 18k champagne gold
size: 1.3mm-2.0mm and 1.0mm-1.6mm
Delivery time is within 3 months.
Made by custom, One-of-a-kind.
こちらの作品はサイズを合わせて、デザインをお好みにアレンジして、オーダーメイドにてお仕立ていたします。
ご注文からお届けまで約3ヶ月。
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シャンパンゴールドの音色。
魅せられるほどに深い緑。
屋久島で生まれた、おふたりの結婚指輪。
色づく季節に紡がれた素敵な出会いに、ありがとう。
島時間の中で、少しずつ。シャンパンゴールドが育まれるとき
不思議なもので、デザイン作りから始まり、お届けまでの数ヶ月をご一緒するオーダーメイドでは、
交わした会話や細やかな出来事、日々の作業のひとつひとつを、
まるでフィルムに収めて大切にしまっておいたように、
ずっと先まで鮮明に覚えていることが、よくあります。
そこに育まれる時間そのものが、指輪という形を作り出してゆく。
それは、一輪の花が咲くような、かけがいのない経験なのかもしれません。
すごく楽しみでもあるはずなのに、
どこか、もっと続いてほしいと思えてしまうことがある。
完成を見極めるのに、小さな勇気がいる。
おふたりとの指輪作りもまた、そのような印象的な時間であったように思うのです。

しずくを纏ったシダの葉のそばで、ふたつのリングをそっと並べてみる。
シャンパンゴールドが、森に差し込む光のような静謐な輝きを湛えています。
その、ほのかな温度を帯びた力強い色彩が、島の情景と響き合っているように感じられました。

角度を変えるたびに、見るたびに、
リングの表情や手触りがいつも新しくなって、
つい、くるくると遊んでしまいます。
リングの表面に波打つライン。
たゆたうように仕立てたシルエット。
リングの幅に抑揚をつけたこと。
細やかな手仕事が重なり合い、躍動のリズムを奏でています。
ふたつのリングは、同時に、ひとつのものとして、ここに佇んでいます。

しとしと、秋の冷たい雨が降り続いています。
指輪作りの間は、サキシマフヨウの花が咲いていて、その薄ピンク色にいつも癒されていました。
同じ屋久島サウスの、すぐ近くで、おふたりも同じ季節を過ごしている。
ひとりきりで向かい合う作業ではあるけれど、ひとりではない。
そう思えることに、どこか心励まされていたように思います。
とりわけ、建築のお仕事に深く関わっているおふたりとは、
何気ない会話の中で、造形に関わる話をするのが楽しかった。
わたくしごとですが、父が建築士だったこともあり、建築からは、ジュエリーづくりに確かに大きな影響を受けてきました。
自然と暮らし、そして、理(ことわり)と気配の出会うところ。
近い場所を目指して歩いている仲間に出会えたような、
やわらかなつながりのようなものに包まれていた指輪作りでした。
屋久島が紡いでくれたこの出会いに、心から感謝します。

お仕事で長く島に滞在しているあいだに、
サンプルリングをお作りしたり、刻印の文字を一緒に相談したりしながら、ともに過ごした日々も、
今となっては、とても貴重な時間だったように思えてきます。
お仕事終わりのミーティングも、懐かしいですね。
最初は全く何もなかったところから、
このふたつのシャンパンゴールドのリングが生まれるなんて!
紡がれゆく時間の、なんて美しいことでしょう。
そして、これからおふたりが育んでゆく時間のことを思うと、
どこまでも広がるような、果てしない気持ちに満たされるのでした。
ご結婚おめでとうございます。
またいつの日かお会いして、お互いの旅の続きのお話ができれば、これほど嬉しいことはありません。
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material: platinum, diamond
size: 2.0mm and 2.6mm
Delivery time is within 3 months.
Made by custom, One-of-a-kind.
こちらの作品はサイズを合わせて、デザインをお好みにアレンジして、オーダーメイドにてお作りいたします。
ご注文からお届けまで約3ヶ月。
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屋久島の森に咲く小さな白い花をモチーフにした指輪作りも、いよいよ終盤へと差し掛かりました。
細いプラチナの線や薄い板を組み合わせて、ひとつひとつのパーツを仕立てているのですが、
花びらと石枠を組み合わせたお花の部分が完成し、
茎を模して造形した細いリングと組み合わせていくところです。

お花の中心に通したプラチナの線をリングに通すと、
かちりと、小さな合図のような音を立てて、一つになりました。
角度やバランスを、ここでしっかりと整えておきます。
一度火を入れて溶接を行うと、もう戻ることはできないので、細やかな調整を納得いくまで繰り返しました。
プラチナで仕立てた、シンプルで凛としたフォルム。
この中心に、一粒のダイヤモンドをセットします。
今はまだ長く伸びた石枠も、最終的には低い位置までカットされるので、すっきりとコンパクトな佇まいに仕上がるだろう。
少し先の未来を思い描きながら、ワクワクした気持ちで細やかなタッチを重ねています。

指輪作りの日々のあいだには、何度か夜明けの海へ出かけました。
気がつけば、太陽が昇る時刻もずいぶん遅くなったように感じます。
それでもまだ水温は高く、秋の東風に運ばれてきた波に乗って、アトリエに戻り、作業机に向かっていた、その清々しい余韻は、今も体の中に満ちています。

いかにも南国らしいブーゲンビリアが、この時期に咲くのは少し意外かもしれませんが、
屋久島サウスでは、春先と秋に花を咲かせる植物でもあります。
ハッとするような鮮やかな色彩に出会うと、思わず足を止めて、日向ぼっこをしてしまうのですよね。
今年もいよいよ、あと1ヶ月と少しになりました。
これからの季節は、プレゼントとしてのジュエリーをお届けする機会が増えてきますが、
このリングも、お二人に素敵な時間をお過ごしいただけるよう、
最後の仕上げを大切に進めていきたいと思っています。
そして、リングが出来上がる頃には、冬の花が咲き始めているかもしれません。
南国のあたたかな色彩に包まれる、大好きな季節を思いながら。
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制作編

巡りゆく季節。波のリズム。刹那と永遠と。
彼女のお名前の響きに重ねるように、菜の花をモチーフに婚約指輪をお作りしました。
思えば、菜の花が咲く季節から始まったオーダーメイドでしたが、
島ではコスモスが咲き始め、豊かな時の移ろいを感じています。
婚約指輪作りから、結婚指輪が出来上がるまで、
本当にありがとうございました。
三人で手を繋いでいるような安心感が、作業の日々をあたたかく包み込んでくれました。
気がつけば、夏はどこかへと遠ざかり、
朝夕は涼やかな風が通り抜けるようになりました。
ところどころに秋の色彩が散りばめられています。
アトリエには金木犀の香りが漂い、空に浮かぶうろこ雲を眺めては、心躍らせています。
これまでご一緒したかけがえない日々を、
もう懐かしく思い出しながら。
海の向こうにお届けする指輪を、静かに眺めていました。

コスモスの花びらの上に、そっとリングをのせてみる。
指先には、確かなプラチナの重さが伝わるのに、
手触りはどこまでも優しい。
全体にゆるやかなカーブを帯びた、
波のような輪郭の中に、
リズムの異なるもうひとつの曲線が巡っています。
そのラインを境に、光沢仕上げの部分が鏡のように世界を写し出す。
ちょうど半分がマット仕上げで、
その柔らかな質感が、島の時間に響き合い、
溶けていきそうに感じられました。

彼女の2.0mm幅と彼の2.6mm幅
内側には、おふたりの大切な言葉を、日付とともに刻みました。
刻印の文字は、外側からは見えないけれど、
おふたりの心の中に、ずっとある。
どんな時も、スタート地点を指し示してくれる針のように、
これからの長い時間を寄り添っていく。

激しく降り注いだ雨が上がり、
秋の爽やかな晴れ間が広がりました。
アトリエの窓の向こう、山際の低いところに虹が掛かると、
それは、冬の訪れが近いことを知らせる合図でもあります。
おふたりの暮らす長野では、
そろそろ、山々に雪が積もるころでしょうか。
そして、もうしばらくすると、
島ではツワブキの花や山茶花、そして菜の花が咲き始め、
寒い季節にやさしい彩りと小さな励ましを与えてくれます。
そのようにしてわたしたちは、
少しずつ季節と足並みをそろえるようにして、
月日を巡りゆくのですね。
これから何度、同じ花を一緒に見ることができるのだろう。
そう考えると、今という時間が、とても貴重なものに感じられます。
ご結婚おめでとうございます。
このリングがおふたりの暮らしに、永く寄り添ってくれますように。
楽しい指輪作りを、ありがとうございました。

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久しぶりに、長く雨が降り続いた。
秋の深まりを感じさせる、冷たくて静かな雨だ。
この日は朝からずっとアトリエにこもり、雨音に包まれているような深まりの中、花をモチーフにしたプラチナリング作りをこつこつと進めていた。
雨足が弱くなってきたところで、作業の手を止め、庭先に出てみると、金木犀の花が、たくさんの雫を抱いていた。
その黄色くて楽しげな佇まいを眺めているだけで、励まされる。
甘くて爽やかな香りが、遠くで眠っていた感覚を呼び覚ましてくれる。
花は、小指の先端に収まるほどに小さい。
小さいものに、これほど愛おしさを感じてしまうのは、どうしてなのだろう。
まだ背丈よりも低い金木犀の木の下に座り込み、夢中になって眺めていると、また雨が強くなってくる。
そして、急いでアトリエへと戻る。
今年の金木犀も、いよいよ満開に近づいた。

さて、アトリエです。
作業台の上に並んだ、五つの小さな造形。
花弁の制作をひと段落させたあと、プラチナの板を4mmほどの葉の形に切り取り、タガネで表面を叩いて丸くて柔らかな表情を与えた。
同じ工程を並行して五回ずつ丁寧に繰り返し、最後に全体を磨き上げる。
仕上がった小さな葉は、どれもわずかに不揃いで、その揺らぎが有機的な個性を生み出している。
その個性を、うまくまとめ上げるようにして、一つ一つのタッチを積み重ねていく。
もし、右側に偏りが生まれると、左側にほんの少しの調整を加えながら、最高の仕上がりを目指していく。
手作業から生まれる、かけがえのない造形は、時間に似ているように思う。
5枚の花びらを一つにつなぎ合わせ、花弁と組み合わせた。
酸素トーチの細く高温の炎を使いながら、溶接作業を何度も繰り返す、細やかで緊張感の続く工程だったけれど、
端正なフォルムに仕上がり、ほっと一息といったところだ。
プラチナと、ダイヤモンド。細い線と薄いプレート。
限りなくシンプルな要素が集まり、一つのリングへと紡がれてゆく。
その時間はまるで、本当の花が咲こうとしている瞬間のようで、
そこに宿る、奇跡のような美しさを感じずにはいられない。
夕暮れ時、気がつけばもう雨は上がっている。
窓を大きく開き、フレッシュな空気の中で、その小さなプラチナの造形を眺めていた。

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制作編
屋久島の森に咲く白い花をモチーフに、プラチナリングを作っている。
小さな花と同じくらいのサイズに仕立てていくパーツは、ひとつひとつが驚くほど繊細だ。
まずは、プラチナの細い線を組み合わせ、石枠を形づくっていく。
まるで本物の花を手にとるように、そっと造形を重ねていた。
そこにセットするのは、ひと粒のダイヤモンドだ。
清らかな透明を纏うその輝きは、あのとき、あの森で出会った花のイメージそのものである。
実のところ、この白い花に出会ったのは、ほんの数度きりしかないのだが、
こうして作業机に向かっているだけで、登山道に漂っていた甘く、瑞々しい香りの記憶がふわりと蘇ってくる。
ときには胸を高鳴らせ、
ときには心を柔らかに包んでくれる。
花にはいつも、新しい風のようなものを運んでくれる不思議があるように思う。

屋久島サウスではコスモスが咲き始め、南の島に遅い秋の訪れを告げている。

なぜかいつも、ひまわりも一緒に咲いているのが、屋久島流かもしれない。
道路沿いに広がるパステルのドットにしばらく身を包み、ふわりと癒されておく。

8本の細い線が放射状に伸びる小さなプラチナは、花弁を模した石枠となる。
こうして、花をモチーフにジュエリーを作っていると、植物たちの精巧でしなやかな作りに、いつも驚くばかりだ。
まるで空気の中から生まれてきたような、スムーズで美しい造形に憧れ、ずっと追いかけてきたように思う。
花は、同じ種類のものでも、よく眺めてみると、一つ一つに個性が宿っているところも好きだ。
小さなリングにも、これから少しずつ呼吸が吹き込まれていくのだと思うと、なんだか楽しくなる。
手の中でゆっくりと、大切に育んでいきたい。
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