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雨の日のアトリエより #屋久島でつくる結婚指輪

朝になると、アトリエは重たい湿度に包まれていました。

久しぶりの、力強い雨です。

 

ザアザアと部屋に響く音は、分厚い幕みたいで、

こうなると、なかなか外に出にくくなるのも、屋久島の暮らしならではかもしれません。

 

それでも、窓越しに眺める山茶花が美しくて、

雨足が弱くなるタイミングを待って、ついつい庭先に出てしまう。

 

無数の雫をまとった花々に心を癒されながら、熱いコーヒーを淹れて作業机に向かう。

 

年末で、少しずつ忙しくなってくる頃ではあったけど、この雨のおかげで、ふっと力が抜けたような気がしました。

 

 

咲き始めたツワブキの花。煌めく海。酸っぱくてキュッとなるポンカン。

屋久島サウスのあたたかなひかりに包まれながら、おふたりの結婚指輪をつくっています。

12月のひかり。おふたりの結婚指輪をつくり始める日 #屋久島でつくる結婚指輪

 

雨の日は、制作日。

というのが、いつの間にか身についていた暮らしのリズムで、

雨が降ると、今日はアトリエにこもって作業に深く集中できる日だな、と

なんだか嬉しくなるようになりました。

 

雨の多い屋久島だから、そんな日ばかりということになるのですが、

やさしく刻まれる島のリズムに励まされるようにして、今日も作業机に向かっています。

 

おふたりが暮らす長野では、きっと雪が降っているのだろうけど、それもまた素敵です。

 

雪と雨と。

空から降り注ぐものを心待ちに過ごす時間は、もしかすると、とてもよく似ているのかもしれません。

ふと、わたしたちの間のある、やわらかなつながりのようなものに気がついて、嬉しくなりました。

 

丸くリング状に整えたプラチナリング。

その表面を、鉄工ヤスリで大きく削り出していきました。

 

雨の音を聞きながら、静かにタッチを積み重ねていくと、夕暮れ時には、リングをぐるりと巡るラインが現れました。

 

窓際でそのシルエットを眺めると、ほんのりとした光が、小さなリングの中に、明るい部分と影になる部分をつくり出していました。

 

嬉しくなって、くるくるとリングを回してみる。

 

そのたびに、表情が新しくなっていく。

 

プラチナリングは、お気に入りの服を着るように、深い緑色を映した光をまとっている。

 

まだまだ、始まったばかりではあるけれど、おふたりと一緒に抱いてきたイメージが、リアルな形になりつつある。

その瞬間を前にして、静かな手応えのようなものが、胸のずっと奥の方に響いてきました。

今日の道具たち。

下の段に、鉄工ヤスリが二本と、上の段の精密ヤスリ。主にこの三本で、指輪作りを進めていきます。

 

案外、定規を使い、けがき線を描きながら、きっちりと寸法を取っていくのですが、

道具はとてもシンプルで、はるか昔から変わらない、精緻なものがいい。

 

手とリングとの距離が近くなればなるほど、わたしたちの中に巡る響きのようなものが、より確かに、リングに伝わるような気がするのです。

 

屋久島でつくる結婚指輪

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