
とても意外なことかもしれないけれど、屋久島南部の冬はとてもカラフルで、太陽の眩しい光に包まれる日が続く。
庭先では、大好きなツワブキの花が咲き始めた。
先日、京都へ旅した時にもツワブキに出会ったが、島のツワブキは、少しワイルドでわんぱくな佇まいかもしれない。
ある日突然、にょきっと蕾を抱いた茎を伸ばし、その蕾を膨らませながら、少しずつ黄色い花びらを開かせてゆく。
ひとつ目の花が咲くのを合図にするように、周りの花も次々とそれに続く。
最初のうちは、まだかまだかと花が開くのを待っていたのだけど、いつの間にか開花の勢いに追い越され、歩調を合わせるようにテンポを上げていく。
植物たちの生きていく姿に、いつもインスパイアされる。
わたしも、前に向かって、しっかりと進んでいかなくては。
ピンクゴールドを手にすると、朝に咲いた花の香りのような、やさしくて鮮やかな気持ちに包まれる。
左手の薬指は、一番弱いところでもあって、それをお互いが補いあうために結婚指輪をつける、という話があるけれど、
安心感を与えてくれる丈夫さや、美しい色彩をあわせ持つゴールドが、広く選ばれてきたのは、なるほど。
おふたりの暮らしに長く寄り添うリングとなるよう、作業のクオリティーを高いところで保ち続けていたい。
さて、指輪作りも、いよいよ本格的な作業に。
今日も作っている。

焼きなましたピンクゴールドを、くるりと巻き、その両端をぴたりと合わせる。
リング全体をガスバーナーの炎で包み、900度近くまで温度を上げたところで、繋ぎ目に融点の低いゴールドを、すっと流し込んだ。
最初に、彼女のリング。
そして彼のリング。
バトンをタッチするように、動作を、同じ呼吸で繰り返していく。
火の勢いで接合面がわずかにでも動いてしまわないよう、意識を一点に集め、注意深く手を進めていく。

彼のリングは、シンプルなスクエアシェイプで作り進めていくのだけれど、
鉄鋼やすりを使い、しっかりと全体を削り出していく。
側面は完全な平面に整え、表面には、わかるかわからないほどの緩やかなカーブを与えた。
こうしておくと、光の巡りが良くなるし、つけ心地もぐっと柔らかになるからだ。
内側は、指に沿うようなしっかりとしたカーブを削り出す。
何度も自分の指に通し、形を確認しながら、やわらかな手触りを作り出していく。
表には見えないけれど、体に触れる部分の造形作業を、しっかりと頑張っていく。

大まかな作業を終えたところで、窓の向こうを眺めて、ほっと一息。
生垣を明るく彩る山茶花は、まだたくさんの小さな蕾を抱え、これからの時間を待っている。
長く集中していた目が、深い緑に癒されるのは、とても助かる。
作業の続きに取り掛かる前に、熱いカフェオレを作ることにした。
遠くからは波の音が聞こえてくる。
いつも変わらない島の12月を、はじめてここを訪れたときと同じような、新鮮な気持ちで眺めながら、おふたりの結婚指輪を作っている。
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