
いよいよあと少しとなった2025年を、愛おしむようにして、日々作業机に向かっている。
おふたりは鹿児島から海を渡り、アトリエまで会いに来てくれた。
真っ白なキャンバスに絵の具を自由に重ねてゆくように進める結婚指輪のオーダーメイドだから、ひとつひとつの出会いだったり、一緒に過ごした時間までもが、デザインの大切なエッセンスになっていくように思う。
あの日の屋久島でお会いしていなかったら、このリングもまた、違ったものになっていたのかもしれない。
そう思うと、今という瞬間が、いっそう大切なものに思えてくる。

作業台の上にはピンクゴールドのリングが置かれ、作業によって生まれた金属片が、きらきらと散りばめられている。
リングは鉄工ヤスリを使い、表面の二箇所に三日月の形を削り出した。
最初は粗い目のヤスリで、大きく、思い切りよく。
そして次に細かい目のものに持ち替え、表面を丁寧に整えていく。
一度手を進め、削り出してしまえば、もう戻ることはできない。
そして内側にも、丸くて柔らかな造形を加えていく。
大まかな造形が取れたところで、全体に精密ヤスリをかけ、なめらかな表情に仕立てたところだ。
いくつかのラインが、小さなリングの中に重なり合い、ひとつの流れのようなものを生み出すように。
ここまでは手を止めることなく、一気に進めていかなくてはならない。
リングに刻み込んで切るのは、今という時のイメージなのかもしれない。

彼のリングはシンプルなスクエアシェイプ。
彼女のリングはいくつかの曲線が重なり合い、軽やかなリズムを描いている。
そのふたつのあいだに感じる、確かなつながりとは、どのような表現なのだろう。
そのようなチャレンジが、新しい世界へと踏み出す勇気を与えてくれる。
素材は同じピンクゴールドを選び、リング幅も2.3mmで、ぴたりと揃えた。
こうして並べてみると、寄り添う感じが生まれてきたような気がする。
おふたりとともにイメージしてきたリングが、今、手の中で、少しずつリアルな形になりつつある。
その喜びを、画面越しに、手を繋ぐようにして分かち合っている。

今日の屋久島は、一日雨降りだった。
しとしと雨音に耳を傾けながら作業を進める時間は、いつも心地よい。
ありがとう。
明日もまた、ジュエリー作りだ。
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