お二人の結婚指輪作りを始める前、いつものビーチでピンクゴールドを眺めていた。
その二本の細い金属は、夕暮れ時の光を受け柔らかな輝きを放ち、包まれる波の音に溶けていきそうだった。
冬の北風が運ぶ波が浜辺に打ち寄せて砕け、小さな砂粒一つ一つがオレンジ色に輝いている。水面に映る光はゆらめきながら、太陽へと続く一本のラインを描いていた。
「さあ、いよいよお二人の結婚指輪作りが始まるのだ。」
静かに胸を高鳴らせながら、わたしは思った。
翌朝になると、早い時間から作業机に向かい、炎に包み焼きなましたピンクゴールドを鉄のプレートの上に乗せ、金槌で叩き始めた。
コンコン、コン、とアトリエに響くのは、はるか昔からずっと変わらない、手作業の音だった。
その温もりのある音の一つ一つが、とても心地よく感じられた。
1本のピンクゴールドには、太い部分と細い部分が生まれるように、強さと回数に変化をつけながら、何度も同じタッチを繰り返していた。
こうして、小さなタッチが幾重にも積み重なり、一つだけの形が育くまれていく。その時間のすべてが、なんとも愛おしく感じられる。
浜辺で感じていた、キラキラと輝く光、そして水の一粒一粒。
世界を包み込んでいた大きなリズム。
光とリズムのイメージが、今この手の中にある。
夏の終わりのアトリエで、夕方暗くなるまでお二人と夢中になって語り合っていた日のことを、懐かしく思い出していた。
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