リング状になったプラチナリングを作業台の上に置き、鉄鋼ヤスリを左手に持ち、その表面を大きく削り始める。
二つの三日月型の切り込み模様を施す。
削り取られた部分には、艶かしい質感が露わになる。
プラチナ特有の輝きである。
12月の鮮やかな色彩に包まれて、お二人の結婚指輪を作っている。今年もあと少し!
どうしてこんなにもプラチナに惹かれるのか、わからない。
数百年も前から注目を浴び、今では世界中で愛されている。
プラチナには、しなやかな強さがある。
程よい柔らかさを保ちながら、長い年月を寄り添ってくれる。
作業机に向かっていると、手触りがとても心地よい。
クールな印象があるかもしれないけれど、なかなかフレンドリーな金属なのである。
その冷たい金属に、温もりを与えるように。ゆっくりと造形を進めていく。
憧れているのは、島の暮らしで出会う、植物や水、光が織りなす静かな鼓動である。
久しぶりの朝露。
とても寒い朝だった。
作業の合間に山茶花を眺めておく。
今年の咲き方は特に見事で、こんなに明媚な年は、なかなか無いように思うのだけど。
彼女のプラチナリングのフォルムは、完成まで約75%のところまで育まれた。
それは、島の自然やお二人の時間に育まれたものだ。
そして、わたしはまるで生まれたばかりのウォンバットを抱えて見守る人のように、その小さなリングを温かな気持ちで眺めている。
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