シャンパンゴールドを炎に包み、柔らかくしてから、また叩く。
昔ながらのリズムがアトリエに響いている。
金属が持つ時間はとても長く、その中に身を置いていると、今こうしてジュエリーを作っていることが奇跡のように感じられる。
今日も、できることを。
完成が近づいてワクワクしつつ、なんだか少し名残惜しくもある。
以前のしずくギャラリーに来てくれていた彼女とは、もう長いお付き合いになりました。
もちろん、最高の技術を目指しているけれど、それだけではなくて、“温度感のあるジュエリー作り”というものがあるように思う。
そこに宿るものは、大切な想いや、お二人が出会い共に過ごす時間、あるいは、私との出会いもそうなのかもしれない。
形を持たない大切な何かをキャッチボールをするように、お二人の結婚指輪を作っている。
山茶花は咲き始めると、その勢いがすごい。
ゆっくりとした歩みだけど、弛まず力強く。
そのような日々の姿にインスパイアされながら。
炎に包み、金属の緊張を解くように柔らかくした後、リングに緩やかなカーブを与えた。
木槌でコンコンと叩きながら、圧力を加え、少しずつ造形を変化させていく。
その過程で、シャンパンゴールドは組成をキュッと引き締めるように硬くなる。
これからずっと長くお使いいただくリングだ。最後の工程までじっくりと丁寧に進めていく。
カーブを生み出すように叩き、次には別のアプローチで叩き、中心の円を整える。
理想のフォルムに達するまで、シンプルなタッチを慎重に繰り返した。
大まかな造形が取れたところで、紙やすりを手にし、研磨作業に取り掛かった。いよいよ最後の磨き仕上げである。
240番から始め、400番、そして600番と紙やすりの目を細かくしながら、リングの表面と内側を丁寧に磨き上げていく。
タッチを重ねるたびに、雅やかな輝きを強くするシャンパンゴールドに、思わず魅入ってしまう。
表面は有機的でマットな表情に、内側はさらに磨きをかけ、付け心地の良いつるりとした質感に整えた。
このあと、いよいよ刻印を施すのみとなる。
気がつくと、作業机の上にはヤスリや金属片がたくさん散らばっていて、それを少し愛おしく思いながら、ざっと片付けて、リングをそっと重ね合わせてみる。
ぴたりと寄り添ったお揃いのリングを眺めながら、ここまでお二人とご一緒した数ヶ月のことを、何気なく思い返していた。
あと少しで、お二人に手渡す日がやってくる。
窓の向こうを眺めると、この季節特有の濃い虹がかかっている。
今日から12月である。
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