
ふたつのプラチナリングに小さな息吹が宿り始めている。
数日間に及ぶ造形作業に使う道具は、なかなか多い。
削り出しの作業を終えたのち、指輪よりもずっと大きな工具を使い分けながら、アウトラインに緩やかなカーブを施していった。
鉄の枠にリングを納め、コンコンとハンマーで叩いていく。
するとプラチナは枠のカーブに沿って形を変えていく。
その度に円の中心を整え、サイズを測り、同じ工程を繰り返しながら湾曲を深めていく。
目指すシルエットが現れるまで、少しずつ、コツコツと。
それは地味ではあるが、完成へ向けて確かなイメージと粘り強さが求められる、とても大切な工程となった。
おふたりのリングは、手の中で眺めるたびに新しい表情を見せてくれるように、巡りゆく流れやリズムを大切に作り進めている。
それは、打ち寄せる波や月の満ち欠け、あるいは山々を通り抜ける風のようなものかもしれない。
ふとした瞬間に思わずリングをくるくると遊んでしまうような、わたし自身もどこか懐かしい気持ちに包まれて作業机に向かっている。

ずいぶんと冷え込んだ朝だった。
そういえば、プラチナにはその輝きと同じくらい、静かに影を落とす部分にも魅力があるように思う。

作業がひと段落したところで、庭先に出てリングを緑の中で眺めてみた。
午後の日差しを受け、プラチナリングの表面にやわらかな光が巡っている。
まだまだ荒削りではあるが、ふたつのシルエットはそれぞれの個性を持ちながら、同じ時の流れの中にあるように見えた。
なかなか上手くできている。
確かな手応えを感じながら、次はつけ心地を左右する内側の加工へと手を進めることにした。
これから長くお使いいただく結婚指輪だ。
表には見えないけれど、体と心に響く部分の造形を大切に作り上げていきたい。

もう10月も半ばに差し掛かったというのに、ハイビスカスが驚くほど元気だ。
ありがとう、屋久島。
いよいよ指輪作りも折り返し地点を過ぎたところだ。
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制作編