空には小さな星が浮かんでいました。
一日の始まりにありがとう。
空には小さな星が浮かんでいました。
一日の始まりにありがとう。
夢中になってタッチを積み重ねていた作業から、ふと我に返って一息をつくとプラチナリングはこんなにも丸くシェイプされていた。
全体をなめらかなカーブで覆う造形作業では途中で手を止めるわけにはいかない。
そのような集中状態にあるとしばしば没頭しすぎてしまうこともあるので、ときおり目の前でパンと手のひらを叩くように自分自身を解いてあげるように気をつけている。
なんと言っても、アトリエでは朝から夕方までずっと一人なのだ。
静かに作業机に向かっているようではあるけれど、内側では実にいろいろな事が起こっていてとても賑やかだったりもする。
一人での作業ではあるけれど、向かう場所がはっきりとわかっているから歩いて行ける。
いつもオーダーメイドに寄り添っていてくれるお二人にありがとう。
新しい何かに出会う事ができるオーダーメイドのジュエリー作りはいつも楽しい。
お二人とのデザイン作りにもまた発見があったように思う。
挑戦できる日々は素晴らしい。
いつもはどこかにシャープな印象を残して仕上げるのだけれど、彼女のリングはどこまでも柔らかに仕上げたい。
リングからはフラットな面を一切取り除いて全てを曲面で構築することにした。
表面と側面と、そして内側を鉄鋼ヤスリで丸く造形した後に、思い切りよく力をかけてアウトラインをカーブさせるとリングに更なる動きが与えられた。
新しくアプローチしたカーブのバランスもいい具合だ。
小さなリングには川から海へと注がれる水のように静かで力強い動きを感じる事ができた。
ここからは紙やすりに持ち替えて細部を整えるように磨き上げていくことにしよう。
つけ心地に響いてくる大切な作業だ。
日々快適にお使いいただけるように、時間をかけてじっくりとタッチを重ねていきたい。
初めて大地を踏んだのがようやく夕暮れ時になってからだったけれど、そんな日もある。
ずっと遠くを眺めて深呼吸。
今日も屋久島にありがとう!
オーダーメイドのお問い合わせはこちらまで
hp@kei-jewellery.com
tel: 0997-47-3547
くるりと巻いたプラチナを酸素トーチの炎に包んで繋ぎ合わせたのは、作業が始まって三日目の朝だった。
いよいよこれからだな、というイメージが形になっていく喜びを伴う実感と。
今を大切にしなくっちゃ、という一度だけの指輪作りを想う愛おしさと。
お二人にとってはこれが始まりの合図でもある結婚指輪作り。
プラチナの作業温度は約1400度ほど。耐久性はとても高い。古くはビクトリア様式のジュエリーが今もその頃の形をそのままに保管されていたりもする。
かといって固すぎるわけではなくて、どちらかというとしなやかで柔軟な強さが特徴的でもある。個人的にはその適度な重たさも確かさを感じることができて好きだ。
体や暮らしに寄り添うように馴染んでくれるプラチナはダイヤモンドやゴールドと共に、広く愛されている素材なのである。
そしてもちろん、それらは私たちよりもずっと長い時間をあり続けることになる。
今日も自然が奏でるハーモニーの中で。
夕方前にはリングのフォルムを綺麗に整えることができた。
時計を見るとまだ4時前だったので、「今から車を走らせれば間に合うのでは」と思って島の東側にあるカフェまでケーキを買いに行くことにした。
作業でキューっとなった頭を甘いものを食べてふわりと解きたかったからだ。
あと、そのカフェ、雪苔屋さんは冬季休業に入る前の最後の営業日ということだったので、お店の二人にも会っておきたかったのもある。
その日、島ではちょうどマラソン大会が行われていて、車を走らせると道路の流れはかなりスロー。
ケーキのことが気になってそわそわなオレ。
それでもなんとかカフェにたどり着いて、扉を開いてすぐ左側にあるショーウィンドウに目をやると、最後に残っていてくれた二つのパウンドケーキ。
ケーキが待っていてくれたみたいだね、と思わず声に出して笑う。
ほんの細やかではあるけれど、何気ないラッキーが嬉しかった。
せっかくだからとお願いしたコーヒーを持ってきてくれた彼女の手にはもう何年も前にお作りしたゴールドの結婚指輪。
そんな身近なお付き合いも島暮らしならではのあたたかさである。
彼女の腕の中では赤ちゃんが幸せな笑みで一杯になっている。
あの頃と今とが繋がった瞬間。
きっと作業机に向かっている今日もまだ見ない未来と繋がっているに違いない。
かたちだけだけではなくて、時間の美しさのようなものを創造するジュエリー作りであれば最高だと思う。
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屋久島サウスのアトリエです。
そういえば、お二人は幼馴染だというお話をしてくれたな。
作業机に向かっていると、去年の秋に屋久島でお会いすることができたお二人や、その時交わした会話が鮮明な印象として蘇ってくる。
あれからクリスマスも、お正月を越えて、季節は冬に。
冷たく張り詰めた空気のところどころに始まりの気配を感じながら、お二人の結婚指輪を作り始めている。
何気ない会話の中に、デザインのヒントのようなもに出会うことがしばしばある。
それがオーダーメイドならではの楽しさでもあるのだと思うけれど、お二人との相談会もとても貴重な時間だった。
それぞれに人を支える大切なお仕事をされているというお二人。
ふわりと春の陽気に包まれたような、優しい雰囲気の奥の方に強い芯のようなものを感じることができたのも、なるほど。
お二人の指輪作りのイメージをしっかりとキャッチできた瞬間があったように思う。
それは冷たく張り詰めた空気の冬からポカポカ陽光に包まれる春へと向かう、ちょうど今島で過ごしている季節のようなフィーリングではないだろうか。
強さと柔らかさと。
菜の花が咲いていることに気がついたのは、実は去年のクリスマス頃のことだった。
県道沿いにゆらゆら、北風に揺られている黄色い花に心和む。
空をかける犬みたいな。
冬の澄み渡る空気が好きだ。
さて、今日も作っている。
手前が彼女のリングで、金槌とヤスリを使ってプラチナの太さに抑揚をつけてある。
くるりとリング状になると、いよいよ始まったのだな、と緊張感に包まれる。
数種類のハンマーと数種類のペンチ、そのほかにも実にたくさんの工具を使い、小さなリングをキューッと圧縮させていくと、フラットに整えておいた面をぴたりと合わさった。
細やかな作業ではあるけれど、綺麗にできるとやっぱり嬉しい。
この喜びを積み重ねていくように、一つ一つじっくりとタッチを重ねていこう。
明日もまたジュエリー作りだ。
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アトリエから西へ車を5分ほど走らせて大きな川を渡ったすぐのところ、県道沿いの山側にこの辺りで一番早く花を咲かせる緋寒桜の木があります。
新しい指輪作りを始める日の朝にお二人が選んでくれたプラチナを眺めたり。
冷たい北風の中に始まりの季節がすぐ近くまでやっていている気配を感じたり。
お二人とは屋久島のアトリエお会いすることができました。
数ヶ月越しの想いが叶った日。
海を越えて会いにきてくれてありがとう!
秋から冬へ、長くお付き合いをいただきながらのオーダーメイドになるけれど、
お二人と分かち合う指輪作りの日々もわたしにとっては大切な時間となっています。
そして、リングが出来上がる頃にはもう春の予感に包まれているのだろうなあ。
お二人の新しい暮らしが始まるのだなあ。
そんな思いを巡らせるのも楽しい。
気がつくと時間を区切ることに一生懸命になりがちなこの頃ではあるけれど、どこかにふわりと安らぐスペースのようなものがあればいいと思うのです。
指輪作りの日々もそうですし、もちろん、そうして出来上がる結婚指輪もお二人にとっての癒しであると素敵だなと思います。
そう、それは熱いハーブティーをひと口飲んで体や心の芯の方にじわじわと響いてくるような感じかもしれません。
時間の美しさを感じられるような結婚指輪になればいいと思っています。
さてさて、アトリエでは作業のファーストタッチです。
硬いプラチナを酸素トーチの炎に包んで柔らかくしてから金槌でコンコンと叩く。
すとんと均一だったフォルムに細いところ、太いところの抑揚を与えていきます。
考えてみると遥か昔からずっと変わらな手作業であります。
道具の精度が上がりとてもやりやすくはなっているけれど、このコツコツとしたリズムがとても好きだなあと思うのです。
なんだか時をしっかりとキャッチできているような気がしてホッとします。
ともあれ、わたしたちはいよいよ指輪作りの第一歩を踏み出しました。
これまで一緒に抱いてきたイメージがリアルな形を持ってここに生まれようとしています。
出来上がりまでのまだまだ長い道のりが、もうかけがえなく感じられるのが不思議ではありますが 笑
喜びを分かち合いましょう。
海の向こうで新しい暮らしを始めたばかりのお二人とご一緒する結婚指輪作りの日々を、皆さまどうぞあたたかく見守っていてください。