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虹の名残り。シャンパンゴールドで二つのリングを紡ぐとき #屋久島でつくる結婚指輪

お二人の結婚指輪を作りはじめたのは、秋の始まりを告げる激しい風雨に島が包まれていた時のことだった。

外の世界から切り離されたような深い静けさの中、作業机に向かっていたその時間が、いまでは少し前の出来事のように思い出される。

 

数日の間続いた嵐は過ぎ去り、今では島をそっとベールで包むように、やさしい雨が降り続いている。

早朝の散歩道では、海の方角に濃い虹がかかっていた。

山々から吹き下ろす風は、いつもよりも少し冷たい。

 

目の前に広がるのは、おふたりも眺めていた山々だ。

この小さな島で、いくつかのささやかな出来事が重なり合い、始まった指輪作りだったように思う。

偶然のようでいて、どこか必然にも感じられるおふたりとの出会いについて、何気なく思いを巡らせていた。

 

金槌で叩き、リングの幅を作る部分に抑揚を与えた、シャンパンゴールドの細い線。

その表面についた凸凹を、鉄鋼ヤスリでざっと削り落として整えておいた。

 

これは、リングを形づくる前の工程で、料理でいうところの下ごしらえのようなものであるが、

案外、こうした細やかな準備が、仕上がりの美しさに大きく関わってくることになる。

 

今の時点では、リングに生まれるべき“リズム”のようなものは、まだ感じられない。

けれど、目には見えないところを、しっかりと頑張っておく。

 

作業机の上に置いたシャンパンゴールドは、とても繊細なのに、硬い。

その金色を眺めていると、なんだか、秋の夜明けに満ちゆく光のようだな、と思う。

 

指輪作りは、いよいよここから本格的な造形作業を迎えることになる。

ヤスリで削り出された面が艶かしく輝いていて、胸のずっと奥のほうに響いてきた。

 

 

虹とジュエリー。クリスマスのオーダーメイドについての小さなお知らせ。#屋久島でつくる結婚指輪

数日続いた嵐の間には、ときおり晴れ間がのぞくこともあり、

アトリエの窓の向こう、山の低いところには濃い虹がかかりました。

どことなく、空気も冷たく感じるこの頃です。

 

虹のかかる場所が季節ごとに変わることは、島に暮らして知りましたが、

山際に虹が現れると、秋が深まり、いよいよ冬へと近づいてゆく合図でもあります。

 

カボチャやキノコ、サツマイモ、りんごや栗が美味しい季節でもありますね。

 

アトリエでは、嵐の間も変わらずジュエリー作りが続いていて、

もうすぐクリスマスだなあと、贈り物の制作に向けて、心を整えているところです。

 

クリスマスプレゼントのジュエリーは、制作スケジュールがだんだんと埋まりつつありますので、
もしご検討されている方がいらっしゃいましたら、お早めにお声がけいただければ安心かと思います。

 

11月が近くなり、なんだか急に、そわそわする気もしますが、

熱いコーヒーでも飲みながら、ゆっくりとまいりましょう。

 

屋久島サウスのアトリエより、

皆さま、どうぞ素敵な週末をお過ごしください。

 

屋久島でつくる結婚指輪

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tel: 0997-47-3547

やわらかなひかり。屋久島からお届けする、小さな月のネックレス #屋久島でつくる結婚指輪

うつろう色彩、やわらかなひかり。

大切な記念のジュエリーをオーダーいただき、ありがとうございました。

この一年が、素敵な時間に包まれますように。

 

海の月ネックレス 18k yellow gold, 夜光貝

 

屋久島の海からいただいた夜光貝は、

その個体や場所によって、映し出す色彩が少しずつ異なっていて、

「どんな輝きに出会えるのだろう」と、作業の途中はいつも胸が高鳴るのですが、

その一度きりの出会いもまた、自然からの贈り物のようで、かけがえのないものに思えます。

 

月の形に削り出した夜光貝には、

透明感のあるブルーやマゼンタ、オレンジの光が浮かび上がり、

まるで本物の月が、手の中で静かに輝いているようでした。

 

貝殻にはイエローゴールドを合わせ、

耐久性を高めながら、上品で洗練された印象にお仕立てしています。

細いイエローゴールドのチェーンを通しているので、

身に纏うと、まるで月が胸元に浮かび上がるようで、とても美しいです。

 

大切な記念のジュエリーにお選びいただき、本当にありがとうございました。

 

そうそう、

制作の途中、ある日には、昼間の月を見ることができたのですよ。

 

オムレツ型だったり、三日月だったり。

朝の月も、真夜中の満月も。

ふとした瞬間に何気なく出会う月に、

わたし自身もいつも癒されながら、いつもジュエリーを作っています。

 

海を越えて遠く離れていても、

同じような喜びを分かち合えて、幸せでした。

 

やがて、太陽が水平線に沈み、夜の気配が漂いはじめるころ。

ネックレスを海にかざすと、月が光の中に浮かんでいるように見えました。

 

あたたかな潮風が、その小さな月を静かに揺らしています。

ときおり、きらきらと煌めきを放ちながら、島の時間と響きあっていました。

 

秋に漂うこの芳醇な風も、一緒にお届けできますように。

 

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潮騒の記憶、時の煌めきとプラチナリング #屋久島でつくる結婚指輪

ここ数日は、嵐が続いているので、アトリエにこもる日々が続いています。

指輪作りが始まった頃に訪れた浜辺の情景を、懐かしむように思い浮かべながら、静かな気持ちで作業机に向かっています。

 

海は本当に不思議で、あれほど大きな潮騒に包まれているのに、どこかとても静かな場所に感じられます。

心がすっと穏やかになっていくのです。

 

小さな島での暮らしですので、海はいつも近くにあって、ふとした瞬間に癒してくれる。

ジュエリー作りに、豊かなインスピレーションを与えてくれているように思います。

 

波打ち際を歩いて、打ち寄せる波や、水面を走るうねりを眺めていると、かたちを持たない力のようなものを感じます。

それは、季節の巡りや、朝と夜、雨が降って虹が現れる――みたいな、移りゆく時間のかたちなのかもしれません。

 

ときにはかたちを宿し、ときには空気を漂うものとなりながら。

おふたりのリングもまた、わたしたちをいつもやさしく包み込んでくれる、“時間”のようなものになればと思うのです。

 

リングの表面には、ぐるりと巡る流線を削り出し、そのエッジを際立たせるように仕立てました。

アウトラインにも、ゆるやかなカーブを施しています。

 

造形作業も佳境に差し掛かると、結局のところ、最後は手の感覚のみを頼りに進めていくような感じになるのですが、

紙やすりを片手に、プラチナリングを包み込むように磨き上げていくと、

やがて手の中に、一つの小さな光のようなものが、ぽつりと灯る瞬間に出会えます。

 

それは、確かな重みを持った温度であり、

まるでここに一輪の花が咲いたような時間が、静かに訪れるのです。

 

思い返してみると、彼から最初にお便りをいただいたのは、あちらこちらで桜の花が咲き始めた春先のことでした。

あれから、菜の花をモチーフにした婚約指輪の制作を経て、半年ほど。

屋久島の南部では、いまコスモスが開花を迎えようとしています。

 

おふたりとこの夏をご一緒した結婚指輪作りも、いよいよ完成間近となり、

なんだか少しだけ、名残惜しいような気もしますが 笑。

この指輪の完成は、実はゴールではなく、スタートの合図でもあるのですね。

 

お互いに、美しいスタートを迎えることができるように、

最後まで、しっかりと、丁寧に仕上げていかなくては。

 

造形作業がひと段落したプラチナリングには、内側に刻印を施して、磨き仕上げの工程を待つばかりとなりましたが、

この続きは、また別のお話で。

 

夕暮れ時のビーチに散りばめられるような、まばゆくやわらかな輝きを纏って仕上がるリングを、どうぞ楽しみにしていてください。

 

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制作編

植物と響き合うかたち。雨の日のプラチナリングづくり #屋久島でつくる結婚指輪

 

菜の花の婚約指輪

ナノハナの指輪 屋久島からお届けする約束の指輪 #屋久島でつくる結婚指輪

植物と響き合うかたち。雨の日のプラチナリングづくり #屋久島でつくる結婚指輪

早朝の散歩道で、オレンジ色に染まる朝焼けを眺めた時を境にして、島は強い風雨に包まれた。

秋雨前線がもたらすこの荒天は、これから数日間続くことになり、その間は流通も途絶えることになる。

屋久島の、この季節ならではのリズムだ。

 

久しぶりにまとまった雨が降り、島が外界から隔たれてしまうと、アトリエでの制作に自ずと集中が深まっていく。

窓の向こうに響く雨音を聞きながら作業机に向かい、

雨足が弱まると庭先に出て、湿度に満ちた世界を楽しんでいた。

 

新しい季節がもたらした鋭敏な感覚のおかげだろうか。

プラチナリングの造形作業も、この二日ほどで大きくその進捗を加速させることになった。

 

植物との親和性、という感覚は、実はジュエリー作りにおいて最も大切にしているところだったりする。

 

硬くて冷たい金属に、どのようにして、やさしさや温度を与えていくのか。

その尽きることのない興味に、庭先で出会う植物たちや雨の雫は、いつもインスピレーションを与えてくれる。

 

おふたりには、婚約指輪としてお花のリングをお作りした。

彼女が重ねて身につけるとき、ふたつのリングがやさしく馴染むように仕立てていきたいところだ。

 

2本のリングの造形が揃ったところで、庭先に持ち出し、そのシルエットを眺めてみる。

ここまでくると、「ずいぶんプラチナを削ぎ落としたな」という感覚だけど、これでようやく6割ほどの削り出しになる。

 

少し足を伸ばして、散歩に出かけようとしたところ、また雨が強くなってきたので、アトリエに戻ることにした。

シダの葉が雫を纏う、その佇まいを胸に留めておく。

 

さて、これからリングに大きく力をかけていく大切なところ。

その工程を控え、酸素トーチの炎でプラチナを焼きなましておく。

 

リングの緊張が解けたところで、鉄の枠にあて、木槌で叩きながら圧をかけていく。

タッチを重ねるたびに、リングは大きくその形状を変え、新しい表情を宿していく。

一度整えたものにダイナミックな変化を加えるのは、なかなか思い切りのいる作業ではあるが、頭の中にしっかりと、少し先の未来を思い描きながら、慎重に、そして思い切りよく手を進めていった。

 

やがて、リング全体に柔らかな曲線が生まれたところで、芯金に通し、コンコンと木槌で叩きながら内側の円形を整えていく。

これまでにも何度も繰り返してきた手作業は、とても素早い。

叩くたび、手の中でプラチナが少しずつ硬さを取り戻していくのがわかる。

 

理想のフォルムが生まれ、サイズがぴたりと合わさる瞬間は、いつまで経っても職人冥利に尽きる喜びだ。

 

おふたりの指輪作りも、いよいよ折り返し地点を過ぎたといったところだ。

 

屋久島でつくる結婚指輪

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制作編

巡りゆく季節。波のリズム。刹那と永遠と。#屋久島でつくる結婚指輪