とても細やかな作業が続いているので、アトリエからすぐ近くに海があるのは、助かる。
ここのところは、冬の名残の北風が長く吹き、いつものビーチではサイズのある波にも乗ることができた。
雪解け水を含んだ海水は、まだまだ冷たい。
波に乗るうちに、風が体を通り抜けていくような感覚が宿る。
自然と視野は遠くを捉え、ふわりと力が抜けていく。
早朝の運動を終え、すっきりとした気持ちでアトリエに戻る。
少し遅めの朝食をとり、熱いカフェオレを大きなマグカップいっぱいに作って、作業机に向かう。
窓の向こうからは、春の柔らかな光が差し込んでいる。
いつもの島の時間が、今日も静かに流れてゆく。
鉄鋼ヤスリを片手に、細やかな造形をかたどっている。
紫陽花を模した、5mmほどの小さなプラチナだ。
大きさと形に変化を持たせつつ、全部で12個。
それと予備のためにいくつか。
この小さな花たちが、リングをぐるりと囲むことになる。
とてもスローなペースではあるけれど、少しずつリングが形作られてゆくこの時間も、また愛おしい。
エタニティーリングは、リングをぐるりとダイヤモンドが囲むデザインで、そのエレガントで洗練されたスタイルは、世界中の人たちに広く愛されている。
中でも、お花をモチーフにしたエタニティーリングは、どこか花冠を思わせる雰囲気があって、わたしは特別に好きだ。
あるいは、ハワイのレイのように、島に降り注ぐ祝福にも似ているのかもしれない。
私自身もその喜びを享受するような気持ちで、作業机に向かっている。
削り出したプラチナの花は、紙やすりを丁寧に使い、段階的に細やかに磨き上げておいた。
こうしておくと、仕上げ作業を、より美しく、スムーズに行うことができる。
そして、木槌で叩き、花びらに柔らかなカーブを施して、花の印象に近づけておく。
その造形の手本になっているのは、もちろん、いつも眺めている島の紫陽花たちである。
雨の季節が、少しずつ深くなってきている。
制作編
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