5月になって、庭先にぽつぽつと咲き始めた花の名前は、昼咲き月見草という。
やわらかな陽ざしの下、風にそよぐ淡いピンクの花だ。
そのささやかな群生は、空を見上げるように、まるで微笑むように花を開かせる。
見つめていると、どこか懐かしく、あたたかな気持ちが胸にひろがっていく。
月見草という言葉どおり、夜にも咲いてくれるのも嬉しいところで、
月明かりを浴びながら、静かに輝くその佇まいを、何気なく眺めては癒されている。
そういえば、「月」という言葉に特別な響きを感じるようになったのは、島に暮らし始めてからかもしれない。
静かに繰り返す日々をたしかめるように、ほのかなあかりを灯す月。
その永遠のリズムに、私たちもどこかで響き合っているのだろうか。
そう思うと、心癒される。
お二人のご結婚10周年のジュエリーのデザインに、月のモチーフを思いついたのは、とても自然なことだった。
スケッチブックを開いてすぐに、二つの月を抱く、ペアのネックレスを描いたことを、よく覚えている。
お二人の呼応するリズムのようなものを、月の満ち欠けで表現できれば素敵だろうと思った。
素材には月明かりをイメージしたイエローゴールドと、
お二人にとって大切な場所である、この屋久島で生まれた夜光貝を使うことにした。
作業机に向かうと、まずは夜光貝の月とイエローゴールドの月を、糸鋸を使って丁寧に切り出していく。
大きさの異なる二つの月だ。
この月たちが、これからの制作の支柱となっていくことになる。
時間や場所によって、月が見え方を変えるのと同じように、
少しずつ、細部のデザインに変化を持たせながら、ペアのネックレスをこれから仕立てていく。
細やかなデザインの打ち合わせだったり、屋久島でお会いする日のことは、ずっとメールでやり取りを重ねているのだけれど、
祝福の言葉に包まれる日々は、いつも喜びに満ちている。
ご結婚10周年おめでとう。
屋久島が紡いでくれた、素敵なご縁にありがとう。
タッチを重ねながら、ふと、いつか見上げた月を思い出す。
ガリガリと、糸鋸の音が部屋に響いている。
日は落ちて、窓の向こうからは虫の音がかすかに聞こえてきた。
ときおり、夜光貝をデスクライトの光にかざし、その色彩のうつろいを、しばらくのあいだ、うっとりと眺める。
大好きな月にまつわるジュエリーづくりは、このようにして、静かに続いていくのであった。
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