
アトリエのハイビスカスが満開を迎えている。
晴天がもう一ヶ月近くも続いていて、日中は外に出るのをためらうほどに暑い。
それでも、次々と花を咲かせ続けるのは、きっとこの高い気温が心地よいのだろう。
庭先では、プルメリアやモンステラも、生き生きとした表情を毎日見せてくれている。
屋久島は、深い森のイメージが強いところなので、少し意外かもしれないけれど、
どこかハワイやバリ島を思わせる、おおらかでカラフルな植物たちが、わたしは結構好きだ。
春には黄色い菜の花が咲き、梅雨にはブルーの紫陽花が、そして、夏には赤いハイビスカスが咲く。
わたしたちは、自然が織りなす色彩に癒されながら、日々を暮らしていくのだろう。
空や水が見せる、移ろいゆく透明な色彩も美しい。
そして、永遠を思わせる金属の力強い輝きは、大地の色彩といったところだろうか。

ハイビスカスの深い緑と赤、そしてイエローゴールド。
リングの土台を作るために、K18イエローゴールドの線を一本用意した。
直径0.95mmの、とても細い丸線だ。
この後、実に複雑な作業が始まることになるのだが、
その前に花を眺め、心を穏やかにしておく。

朝から夕方まで夢中だった。
手の感覚を頼りに進める、直感的な作業だった。
イエローゴールドの細い線を、曲げたり叩いたりしながら、
植物的な造形となるよう、タッチを重ねていった。
二本の茎が連なり、花を包むようなフォルムが、心の中にあって、
遠い記憶を辿るように、その印象を形に変えていくと、
やがて、繊細な曲線に包まれたリングが出来上がった。
作業台の上に置き、これまでの長い、複雑な工程を振り返ると、
もう、同じものは二度と作ることができないのだと、すぐにわかる。
これは、間違いなく世界に一つしかないリングだろう。
それにしても、我ながら、昔気質の手作業であると思う。
あるいは、このように心が主体となるものづくりは、どんどん古くなっていくのかもしれないけれど、それもいいではないか。
ときに、手作業の揺らぎのようなものが、作品に直に投影されることになるのだが、
その揺らぎに、わたしたちがどうしようもなく惹きつけられるのも、たしかだ。
それは、同じようでいて一つひとつが新しい花々を眺め、心が癒される感覚に、どこか似ているのかもしれない。
この小さなリングも、庭先の花たちも、夕方のビーチに漂う潮風も、
すべてがこの自然から生まれてきたものだと思うと、今この瞬間が奇跡のように感じられた。
