例年よりもずっと早い梅雨入りを迎え、屋久島サウスでは、雨降りの日が多くなってきている。
冷たくて、重たい雨だ。
ザアザアと、ときおり激しく降り、不意に、つかの間の静寂が訪れる。
窓の向こうを眺めると、緑はどこまでも色濃く、まるで水の中にいるような感覚に包まれて、癒される。
大好きな屋久島のリズムに身委ねるようにして、作業机に向かっていた。
アトリエの照明を仄暗く調整し、酸素トーチに炎を灯す。
作業のために用意してあったプラチナを、炎で包み、素早く焼き鈍していく。
静かな島の時間の中で、これから生まれるリングの姿を鮮明に思い描きながら。
すぐご近所に暮らしているお二人がアトリエを訪れてくれたのは、島にうららかな光が降り注ぎ始めた、春の始まりの頃だった。
「近くに住んでいるのに、初めてお会いできましたね」と、お互いに笑い合った。
サンプルリングを囲んだ和やかな相談会のひと時を、今でもよく覚えている。
暮らしてきた場所や年齢も異なるお二人と、大好きな屋久島で繋がることができて、とても嬉しかった。
この島が紡いでくれた、小さな恵みのような結婚指輪作りだと思う。
雨足が弱くなったタイミングを見計らい、庭先に出てみる。
湿度を含んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。
ほんの少し海の香りを感じて耳を澄ませてみると、
ずっと遠くのほうからは、潮騒が聞こえてきた。
足元を眺めると、ポコポコと紫陽花が風に揺らめいている。
花々の嬉しそうな佇まいを見つめ、幸せな気持ちに包まる。
いよいよ、これからお二人の結婚指輪づくりが、本格的に始まることになる。
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