広い海に生まれた夜光貝を削り出したそのかけらには、他にはない一つだけの輝きが宿っている。
貝殻そのものにも色彩の傾向があるし、
同じ貝殻でも、切り取る場所や角度によって、見え方はずいぶんと変わってくる。
もちろん、屋久島の北部と南部では、個体の大きさや分厚さも微妙に異なってくる。
わたし自身は、海に潜ることはないのだけれど、
友人が素潜りをして手に入れた貝を分けてもらい、こうしてジュエリーの材料として使わせていただいている。
しっかりとした肉厚の貝は、手のひらよりもずっと大きい。
形状は、例えるならサザエのような巻き貝といったところだろうか。
ずっしりと重みのある貝殻から、色がきれいに出そうな部分を予測して、5cm四方ほどに切り取りる。
そして、表面の凸凹を大きく削り落とし、いよいよ作業へと取り掛かるわけである。
この貝殻の、このあたりが綺麗に違いない。
そのような漠然とした予感を頼りにして進める作業なので、
いざ、ジュエリーの材料として磨き上げていき、その色彩に出会った瞬間には、
思わず、ちょっとした感動を覚えてしまう。
はるか遠い海の中に生まれ、今こうして巡り会えた色彩に、どこか磁力のような縁を感じるのだ。
お二人の夜光貝は、マゼンタからグリーンへのグラデーションが印象的だった。
とても色鮮やかで、輝きも力強い。
夕暮れ時に磨き作業を終え、柔らかな陽光の下でふたつの貝殻を眺めていると、
角度を変えるたびに、新しい色が現れ、何だかとても嬉しくなる。
どうやら、素敵な輝きに巡り会えたのかもしれない。
まちがいなく、素晴らしい色彩と輝きであるように思う。
イエローゴールドで作った丸いプレートに、かちりと嵌め込んでみる。
彼女のペンダントトップは、三日月型の夜光貝+イエローゴールドの月明かり
彼のペンダントトップは、三日月型のイエローゴールド+夜光貝の月明かり
素材を互い違い組み合わせた、お揃いのデザインであるけれど、
それぞれに大きさを少し変えて仕立ててある。
ここからチェーンを通し、貝殻をしっかりと固定するために、
細やかな細工を重ねていくことになる。
夜光貝の美しさを最大限に際立たせるために、その細工は限りなくシンプルで、実用的なものでなくてはならない。
これまでになかったデザインが生まれる瞬間を前にして、
はやる気持ちはあるけれど、今日はここまでとしよう。
生垣のブーゲンビリアは少し赤っぽい。
こんなにも元気に咲いたのは、今年初めてかも。
今日も屋久島にありがとう!
制作編