
指輪作りでは、金槌や木槌を手にする時間が多い。
大小さまざまな種類を使い分けながら、ゴールドを叩き、かたちを整えていく。
こんこんと、はるか昔から変わらない手仕事のリズムが、アトリエに響く。
少しずつではあるが、おふたりとともに思い描いたリングの姿が、手の中で確かなかたちを帯びていく。

鉄の芯金にあてて丸く仕立てたリングを、再びバーナーの炎に包み、両端をぴたりと繋ぎ合わせた。
ゴールドは、輪になることで、驚くほどに強度を高くする。
繋ぎ目を残さないよう、細心の注意を払いながら進める工程だが、うまく仕上げることができたように思う。
作業を終えると、手の力ではほとんど変化を与えられない硬さが、小さなリングに宿っていた。
屋久島と仙台。
シャンパンゴールドとイエローゴールドで紡ぐ結婚指輪。
おふたりとの素敵な出会いに、ありがとう。
まだ冬の寒い時期にお便りをいただき、始まったオーダーメイドだったけど、
島は新緑の季節を迎え、庭先や散歩道には、色とりどりの花がひらき始めている。
ゆっくりとした歩みではあるけれど、
こうして島の時間の中で育まれてゆくおふたりの指輪もまた、美しい一輪の花のように思いながら。

萌える新緑というのも、なるほど。
今にも動き出しそうな山々が、複雑で繊細な風を運んできてくれる。

花はどれだけ小さくても、目に優しいのはなぜだろう。
作業の合間に、その精緻な造形を眺め、癒されておく。

2本のリングを重ねてみると、その色彩の違いがとても心地よく感じられた。
細やかな配合がなされ、精製された金属ではあるが、それらが大地から生まれたもの、あるいは大地そのものなのだと思うと、勇気づけられる。
わたしたちもまた、その美しい自然の一部なのかもしれない、と。
この大地の響きのようなものを、いつも近くに感じられるように、これからリングの造形を進めていきたいと思う。
