
夜明けの空が澄み渡り、島にもようやく新しい季節の気配が漂い始めている。
少し冷え込んだ夜の間に植物たちが朝露を纏い、昇り始めた太陽の光を受けて静かに輝いている。
その清々しい朝の空気に癒されながら、イエローゴールドのリングを眺めていた。

緑にぽつりぽつりと宿る雫。
それはまさに、これから始める作業のテーマとなる情景に違いなかった。
指輪が完成してからが始まりではあるけれど、
こうして同じ季節を分かち合える日々もまた、かけがえないものに感じられます。
大切な結婚指輪作りをお任せいただき、ありがとうございます。
ジュエリーの造形。細やかな装飾。リズムやバランス。
その憧れのはじまりは、いつも庭先にあるように思う。
朝に眺めた雫の印象を思い描きながら作業机に向かい、その日の工程を進めていく。

プラチナの小さな破片を酸素トーチで溶かし、いくつかの丸い粒を作った。
大きなもの、小さなもの。
少し多めに作っておき、その中からリングに添える三粒を選んだ。
イエローゴールドのリングにプラチナの粒を添えながら心地よい収まりを探していく作業は、どこか子供の頃のような胸の高鳴りがあって、楽しい。

綺麗に磨き上げたリングにもう一度手を加えていくには、少しばかり思い切りが要る。
イエローゴールドの表面にプラチナの粒がストンと収まるよう、小さな穴を三箇所あけ、一粒ずつリングにつないでいく。
リングを朴炭に乗せ、できるだけ直接火を当てないよう、炭を真っ赤に熱しながら温度を上げていく。
粒とリングの隙間に置いた融点の低いゴールドがやがて溶け、すっと流れ込む。
その瞬間をしっかりと見極め、火を離さなければならない。
粒がしっかりとつながったかどうかをルーペで確かめながら、細やかな調整を加えていく。
少しずつ、ゆっくりと。
この指輪作りの時間を愛おしむように手を進めていった。
不思議と今ここに、朝露を纏った緑の瑞々しい香りが漂っているように感じられた。

