ずっと晴れの日が続いて、「7月ってこんなにも暑かったかな」と思っていたけれど、
雨が続くと、やっぱり実際は涼しくて、とても快適なものだった。
雨と言っても、夏の雨は気まぐれで、いっとき激しく降り続いたかと思えば、ぴたりと止み、そのあとには太陽が顔を出して、強い日差しが差し込んでくる。
長く乾いた日が続いたせいか、植物たちは、久しぶりの水に、ほっと一息ついているようでもあった。
雨が止むタイミングを待って、アトリエを出る。
坂道をずっと歩いて上がっていくと、花が大好きなご近所さんの生垣の合間から、ハマユウが、ぽこっと顔を出していた。
手のひらよりも大きな、白い花だ。
ハマユウの甘い香りに癒されて、アトリエに戻ると、
これから始まる結婚指輪作りの材料を、庭先でそっと手に取った。
眺めていて、またうっとりとしてしまう。
シャンパンゴールドとプラチナが、雨上がりのきらめきの中で、響き合っていた。
繊細なのに、とても力強い。
緑の中で、生き生きとした輝きを宿している。
夏の光に負けてしまうのでは、と思っていたけれど、それらの色彩は、むしろいっそう際立って見えた。
作業机に向かい、まずは最初の第一歩を。
「海に囲まれた暮らしをしているので、指輪にも、どこかに海を感じることができれば嬉しいです」
春先にアトリエでお会いしたおふたりの言葉が、ふと心に響いてきた。
ライターをかちりと鳴らして、ガスバーナーに火を灯した。
イエローゴールドは、低めの温度で扱っていく。
プラチナは、酸素トーチを使い、1300度以上の中で作業を進めていく。
硬さも手触りも、全く異なるふたつの金属を使う指輪作りだ。
手の中で、微妙な加減を調整しながら、これからぴたりと同じデザインに仕立てていく。
激しい雨を降らせたスコールが、また通り過ぎていく。
太陽の光が差し込み、虫の音が、力強く響き渡る。
夏のリズムの中で、思い切りよくタッチを繰り返していく。
少しずつ、少しずつ。
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