小さな花が集まって、包み込むように。少しずつ、リングが形になっていく。
菜の花は、集まり咲く感じが、とても好きだ。
作業机に向かい、イエローゴールドの小さな花を手にしていると、こころが癒されていくのがわかる。
寒さがまだ少し残る頃。
海風にゆらめく黄色い光。
雨上がりのしずくを大切そうに抱いて、きらめいている。
小さなミツバチが集まってきて、賑やかな羽の音が聞こえてくる。
島が新しい季節を迎える、祝福のような響きが、胸のずっと奥の方から広がってきた。
細いゴールドリングの上には、3つの花を、気持ちの良いバランスで並べた。
ここはとても感覚的なところである。
花と花の隙間には、小さなゴールドの粒を散りばめてゆく。
集まる花々。雨のしずく。
リングに何度も火をあて、温度を上昇させながらの作業だったので、金属が溶けてしまわないよう、細心の注意を払わなくてはならなかった。
無事にすべての接続作業を終え、一息をついたあと、初めてそのフォルムと対峙することになる。
有機的なバランスを宿した、やわらかな佇まいに仕上げることができたように思う。
そして、これまで重ねてきた足跡を、きれいにならしていくように、ゴールドの表面にヤスリをかけていくところだ。
窓の向こうでは、しとしとと雨が降り注いでいる。
庭先では、ピンク色のハイビスカスが咲き始め、南国の夏が、いよいよ訪れることを告げている。
そういえば、ときおり暑さを感じる日も、少しずつ多くなってきた。
このリングが完成して、海の向こうにお届けする頃には、きっと、この長い雨も、終わりに近づいているのだろう。
お二人との出会いと屋久島が紡いでくれた、一度だけの指輪作りだったと思う。
素敵なご縁に、ありがとう。
まるで水の中で過ごしているように感じられる、潤いの日々を、なんだか少し名残惜しく感じながら。
深まる緑に包まれて、お二人の婚約指輪を作っていた日々を、愛おしく思いながら。
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制作編