
1月とは思えないほど、あたたかな日が続いている。
屋久島サウスに満ちる光は、思わず目を細めてしまうほどに眩しい。
「いつもとは異なる季節ですね」と話題にするのも、毎年のことではあるけれど、
日中はシャツ一枚で過ごせる日々を、かけがえなく、愛おしく感じながら、
その時間を大切に掬い取るようにして、ここ数日は作業机に向かっていたように思う。
海のリズムと春の花。
わたしたちが暮らす島の日々の中で、いつも身近にある情景をモチーフに、3つのリングを作っています。
確かさを届けたい気持ちはあるけれど、ただひとつのかたちを生み出したいという思いもある。
季節がいつも新しい表情をまとって巡るように、生き生きとしたフォルムを表現したい。
そこに生まれるジュエリーは、あるいは、今という時間そのものであるのかもしれない。
さて、今日のアトリエです。
菜の花の開花に歩みを合わせるように進める作業は、とても楽しい。

イエローゴールドの花は、4mmほどの大きさに整え、同じサイズ感で3つ仕上げた。
小さなタガネで丁寧に打ち出し、お椀のようにやわらかくラウンドさせ、表面を綺麗に磨き上げておいた。
指先にすっと収まるほどの小ささなのに、この繊細さが作品の要になるのだから、ジュエリー作りは本当に興味深い。
このあと、十数箇所にわたる細かい接続作業が続くことになるので、その繊細さの中に、強度をしっかりと保ちながら進めていきたい。

リングは、細いゴールドの線を二本合わせ、植物の茎のようにやわらかな表情に仕立てた。
花を包み込む形を思い描きながら、いくつかの工具と指先も使い、自由に作り進めた。
最後は、ゴールドの線の先端をくるりと巻いて、指に引っかからないように整えておく。
デザインと必要が、小さなリングの中に同居するように、細やかなタッチを重ねていく。
そこに、ふと、自然の中に漂う必然性のようなものに出会う瞬間があって、嬉しくなるのだけど、
その感覚は、島の暮らしの中で育まれた恩恵なのかなと、ありがたく思う。

「近所でヒカンザクラが咲き始めています」という友人のインスタグラムを見て、お気に入りの公園まで出掛けてきた。
雨上がりの空気が清々しい。
作業で張り詰めていた気持ちが、ふわりとほどけていく。
もっと冬らしい寒さを味わいたい気持ちと、春を心待ちにする気持ちが、手を取り合うようにして、胸の中に揺れている。
ヒカンザクラは、ちょうど3割ほど花をつけている。
夢中になってファインダーをのぞいていると、通り過ぎる人たちも気になって桜を眺めていく。
そうこうするうちに、また天気雨が降り始めてくる。
しばらくは、強く降り続きそうな気配だ。
急いでアトリエに戻ろう。
熱いカフェオレを作って作業の続きを始めることにした。
