寒さの中にほのかに漂い始めた春の香りを感じながら、お二人の結婚指輪を作っている。
日中は太陽の光が心地よく、作業の合間に庭先へ出て一休みできるようになったのも嬉しい。
造形作業をひと段落したリングを眺めていると、木漏れ日の中でシャンパンゴールドとプラチナも喜んでいるように見えた。
とりわけ、土に近い場所では季節の移ろいが一足早く感じられる。
裏庭では、緑が色濃くなり始めたシダの葉のあちこちから、くるくると巻いた若芽が顔を覗かせている。
腰を下ろすと、新しい緑のみずみずしい香りがして、なんだか嬉しくなる。
風にゆらめくその佇まいを眺めながら、どこか自由で、希望に満ちた気配に包まれていた。
作業机に戻り、爽やかな緑の余韻を抱きながら、タッチを進めていく。
彼女のシャンパンゴールドの表面を、鉄鋼ヤスリで削り出していく。
最初は目の荒いヤスリを使い、角を一周ざっくりと落とす。
そして少し細かい目のヤスリに持ち替えて、もう一度。
側面にはしっかりと平面を残しつつ、表面に緩やかなカーブを与えていく。
リング幅には、太い部分と細い部分があるデザインなので、その繋がりをスムーズに整えていかなくてはならない。
お二人とイメージしたシルエットが、少しずつ形になってきている。
削りだされたゴールドの破片が作業台の上に散らばり、キラキラと輝いている。
そのなんともいえない美しさに癒され、静かに呼吸を整えて、また手を動かし始めた。
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