今年もまた、夏の始まりが忘れがたい時間となった。
庭の生垣にはハイビスカスが満開で、10羽をこえるチョウたちが集まってきていて、それをときおり窓外に眺めながら、夢中で作業机に向かっている。
ここのところは、雨が降ったり止んだりの天気が続いているので、日差しもそれほど強くはなく、アトリエの中は心地よく涼しく、制作にも深く集中することができた。
ほとんど一日中アトリエにこもり、来月の初旬にお届けする結婚指輪作りに取り組み、コンコンという手作業の音と、蝉の音だけが鳴り響いていた。
オーダーメイドというのは、本当に奇跡のようなジュエリー作りだなと思った。
お二人と相談を重ね、プラチナとイエローゴールドが、手の中で少しずつ、リングのかたちになっていく。
お二人の大切な想いや、この夏と出会っていなければ、この指輪もまた、別のものになっていたのだろうか。
手を動かしながら、ふとそんなことを考えていた。
これはきっと、一度だけの指輪作りになるのだろう。
そう、強く思えた。
厚みのある板状のプラチナとK18イエローゴールドを、炎に包んで焼きなまし、柔らかくなったところで鉄の芯金に当て、くるりとリング状に巻いた。
作業がひと段落したところで、ざっと表面を洗浄し、ふたつのリングを隣り合わせに並べてみると、色彩のコントラストがクリアに浮かび上がる。
まだまだ工程は始まったばかりだったけれど、少し先の完成を思い描いて、嬉しくなる。
それほど、素敵な佇まいだった。
作業を終えて、夕暮れ時に訪れたビーチは、汗ばむほどの暑さで、夏の色彩に包まれていた。
日が暮れる前に急いでトランクスに着替え、サーフボードを抱えて浜辺を駆ける。
オレンジ色に染まりゆく水面へと、思いきり飛び込んだ。
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