プラチナの作業温度は約1300度にも達し、非常に高温な環境で工程が進められます。
リングが真っ赤に輝くまで温度を上昇させたところで、融点の低いプラチナを流し込み、両端をしっかりとつなぎ合わせていきます。
元々硬く配合したプラチナなのですが、一つのリングとなると、その強度が驚くほど高くなる。
その揺るぎない確かさのようなものが、これから新しく始まるおふたりの暮らしに寄り添うものとして、心に安心をもたらせてくれるのかもしれません。
長くお使いいただく結婚指輪なので、しっかりと丈夫に仕立て上げていきます。
一度だけの夏、一度だけの結婚指輪づくり。
作業は始まったばかりなのですが、おふたりには四月の初めにご連絡をいただいて、これまで数ヶ月をかけて、デザイン作りをご一緒してきました。
なので、ここからの数日間は、わたしたちが育んできた時間の集大成のようなもので、今までイメージしてきたひとつひとつが実際の形になっていく、かけがえのない瞬間であるように思います。
いつもありがとう。
日々をともに愛おしみましょう。
昼過ぎから、雨が降り始めました。
激しく降ったかと思えば、緩やかになったりを繰り返す、南国の夏ならではの雨です。
雨足が少し穏やかになったタイミングを見計らって、傘を片手に庭先に出てみると、植物たちは生き生きとしたムードで、その中にいるだけで、なんだか心が躍りました。
ここは夜になるとお店も閉まってしまうし、静かすぎるくらいの場所ではあるけれど、
島の自然に包まれた暮らしは本当に刺激的で、そこからたくさんのものを受け取っているような気がします。
その癒しをジュエリーに変えて、みなさまと分かち合うことができれば、素敵だなと思うのです。
彼女のイエローゴールドと彼のプラチナリング。
手のひらに乗せてみると、ぴたりと重なり合って、なんだか嬉しくなりました。
島の色彩とふたつのリングが、静かに響き合っています。
気がつけば、雨は上がり、また強い日差しが降り注ぎ始めました。
空には、神話の世界に登場するような大きな雲が、ゆっくりと漂っています。
蝉たちは合唱を再開し、チョウたちも飛び交い始めました。
それを合図にするかのように、わたしもアトリエに戻ることに。
キッチンで冷たい麦茶をマグカップに注ぎ、新しくなった心持ちで、また作業机に向かう。
このようにして、夏のジュエリー作りは続いていくのでありました。