夜の間に雨が降った。
しとしと静かな雨が上がり、庭先に届き始めた太陽の光が、新しい一日の始まりを告げている。
モワッと湿度の多い、久しぶりに南国の香りを感じる朝だった。
まるで季節が緩やかに移ろうように、少しずつ制作の歩みを進めていくのは楽しい。
リングの表面に光が漂うような。水が流れるような。
お二人が選んでくれたデザインは、止まることのない動きを感じるフォルムである。
金属に動きや温度感を与えるのは、ずっと追い続けているエッセンスでもあるが、憧れはいつも庭先で眺める情景にあるように思う。
いよいよこれから本格的な造形作業を始めることになったプラチナリング。
作業机に向かう前に、緑の中で癒されておく。
暑い一日になりそうだった。
朝から一本の鉄鋼ヤスリを片手にプラチナを削り出し始め、やがて次の朝を迎え、その日の夕方である。
作業に夢中になり、丸一日以上が過ぎてしまった。
プラチナリングは大胆に削り落とされ、その周辺にはキラキラと小さな金属片が散らばっている。
表面には周囲をくるりと巡る何本かのラインが生まれ、そこに柔らかな流れのようなものを感じることができた。
それにしても、思いの外、力を使う作業だ。
ヤスリを握る左手の握力が弱くなってるのに驚いた。
作業机の上には、いくぶん目の細やかな鉄鋼ヤスリがもう一本用意されている。
それに持ち替え、さらにフォルムに洗練を与えていかなくてはならない。
工程は、ここでおよそ半分を過ぎた、といったところだ。
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