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ピンクゴールドで綴る光とリズム お二人の結婚指輪作りの始まり #屋久島でつくる結婚指輪 

 

お二人の結婚指輪作りを始める前、いつものビーチでピンクゴールドを眺めていた。

その二本の細い金属は、夕暮れ時の光を受け柔らかな輝きを放ち、包まれる波の音に溶けていきそうだった。

冬の北風が運ぶ波が浜辺に打ち寄せて砕け、小さな砂粒一つ一つがオレンジ色に輝いている。水面に映る光はゆらめきながら、太陽へと続く一本のラインを描いていた。

 

「さあ、いよいよお二人の結婚指輪作りが始まるのだ。」

静かに胸を高鳴らせながら、わたしは思った。

 

翌朝になると、早い時間から作業机に向かい、炎に包み焼きなましたピンクゴールドを鉄のプレートの上に乗せ、金槌で叩き始めた。

コンコン、コン、とアトリエに響くのは、はるか昔からずっと変わらない、手作業の音だった。

その温もりのある音の一つ一つが、とても心地よく感じられた。

 

1本のピンクゴールドには、太い部分と細い部分が生まれるように、強さと回数に変化をつけながら、何度も同じタッチを繰り返していた。

こうして、小さなタッチが幾重にも積み重なり、一つだけの形が育くまれていく。その時間のすべてが、なんとも愛おしく感じられる。

 

浜辺で感じていた、キラキラと輝く光、そして水の一粒一粒。

世界を包み込んでいた大きなリズム。

光とリズムのイメージが、今この手の中にある。

 

夏の終わりのアトリエで、夕方暗くなるまでお二人と夢中になって語り合っていた日のことを、懐かしく思い出していた。

 

屋久島でつくる結婚指輪

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ルチルクオーツの指輪作り。オーダーメイドの贈り物 #屋久島でつくる結婚指輪

いとこのパートナーである彼女に、ルチルクオーツの指輪をお作りするのは、夏の終わり頃からの約束だった。

デザインがすでに形になっていたので、始めようと思えば取り掛かることができたのだが、なんとなく作りそびれてしまっていた。

もっと踏み込んだアプローチができるだろうとか、新しいデザインに仕上げたいとか、表現的挑戦が先に立って、つい手が出にくくなっていたのだ。

 

わたしは、天然石というものが、もともと大好きである。

水晶とか、蛍石とか、ルビーとか、ダイヤモンドとか。インディアンジュエリーのターコイズとか、石の中にできる紫水晶の結晶とか。

石を眺めたり手に取ったりしているだけで、心が安らぎ、不思議とワクワクするのだ。

石そのものを、石だけで収集するのも好きだったし、それが高じてジュエリー作りを始めるようになったと言っても過言ではない。

 

そんなわけで、彼女からルチルクオーツのリングをリクエストいただいた時点で、作ってみたいジュエリーのイメージが広がり過ぎてしまって、「ああ、どのスタイルで仕上げていこうか!」と右往左往してしまったのだ。

 

それから、彼女と話をしていて、思い描くジュエリーの様式が私の好みとかなり近しいものだったのも、この制作を大切に温めておきたい気持ちを強くさせた。

 

お互いにお気に入りだったのは、インディアンジュエリーのように心に響く力強さがありつつも、上品な技巧を凝らして作られた、洗練されたジュエリーだった。

 

これはこれで結構凝った趣味だと思っていたけれど、こんなに近しいところに、同じイメージを共有できる人がいるとは思ってもいなかった。

 

 

 

今回のジュエリー作りは、まず、シルバーとゴールドを溶かし、材料となる地金を作るところから始めた。

シトリンを囲むゴールドと、リングとなるシルバーに十分足りる量を用意してから、一気に作り進めていくといった感じだった。

 

でも、ゴールドでシトリンを包み込む石枠を作っている時点で、もうかなり入り込み過ぎてしまっていて、結局、作業の途中に写真を何枚か撮影しただけで、あとはずっと作業に没頭し、机に向かいっぱなしだった。

 

シルバーリングの中央に、ゴールドの粒々の装飾をあしらった、クラシックなデザインである。

元来、この粒々はもっと小さくて繊細に表現をするものであるけれど、「もう少しコロリと可愛い感じにならないかな」と、長い間ずっと思っていた。

それが、いとことパートナーの彼女とのジュエリー作りで、初めて形になったわけである。

 

パッションにしてもインスピレーションにしても、オーダーメイドのジュエリー作りでは、想像を超える何かに出会うことができるという、贈り物のような時間である。

 

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屋久島-ニュージランド 結婚指輪のサンプルリングをお送りする日 #屋久島でつくる結婚指輪

ニュージーランドに結婚指輪のサンプルリングをお送りする。

もし、海や森が大好きなら、ニュージーランドは屋久島と同じように、一度は訪れてみたい場所だろう。

 

少しだけご紹介すると、お二人は今、ニュージーランドで暮らしており、海の向こうから結婚指輪づくりのお声がけをいただいた。

ジュエリーやその周辺の暮らしについては、いつもインスタグラムで見てくれていたと言ってくれて、とても嬉しかった。

 

わたしが、ツワブキの花が咲きましたよ!と投稿すると、その感動を一緒に分かち合うことができる。

これは今の世界が持つ、とても素晴らしい側面のひとつであるように思う。

 

お送りするサンプルリングは、リクエストいただいたデザインを、お二人のサイズに合わせて作ったものである。

今回の指輪づくりでは、屋久島の暮らしでも馴染み深く、ニュージーランドでは象徴として愛されているシダの葉模様がテーマとなっているのだけど、そのシダの葉の彫刻模様をお試しいただけるよう、2本のリングを追加して揃えた。

 

サイズはご指定いただいているものの、せっかくの機会なので、もう一度しっかりとサイズを確かめていただけるよう、サイズゲージも同封し、いよいよニュージランドに発送をすることになる。

 

さて、お二人とご一緒する結婚指輪作りは、およそ9000キロの距離を繋ぐように始まったのだけど、このようにして荷物をお送りしたり、メールでメッセージや動画を送り合いながら、少しずつ歩みを進めていくことになる。

 

出来上がったリングは大切に梱包をし、国際郵便でお届けすることになるかもしれないし、

もしかすると、日本にお帰りのタイミングに合わせて、どこかでお会いして直接お渡しできるかもしれない。

 

地図で眺めると、とても遠い場所のように感じられるけれど、ここには、お互いの心音というか、大切な想いのようなものが、すぐ隣り合わせになっている。

 

お二人と一緒に育んでいるデザインは、イメージとして確かにここにあるが、形になっているものは、まだ何もない。

これからプラチナやゴールドを使い、コンコンと手作業で、わたしが実際に作り上げていくことになる。

 

庭先には黄色い花がポコポコと咲き始めている。

シダの葉の緑は力強く、屋久島サウスの暖かな風にふわふわと揺られている。

これから訪れる冬の深まりと共に、お二人の結婚指輪を作り進めていくことになる。

 

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アトリエに響くリズム、12月の虹 #屋久島でつくる結婚指輪

シャンパンゴールドを炎に包み、柔らかくしてから、また叩く。

昔ながらのリズムがアトリエに響いている。

金属が持つ時間はとても長く、その中に身を置いていると、今こうしてジュエリーを作っていることが奇跡のように感じられる。

 

今日も、できることを。

 

 

完成が近づいてワクワクしつつ、なんだか少し名残惜しくもある。

以前のしずくギャラリーに来てくれていた彼女とは、もう長いお付き合いになりました。

柔らかで繊細なシルエット、シャンパンゴールド結婚指輪 制作記 #屋久島でつくる結婚指輪

 

もちろん、最高の技術を目指しているけれど、それだけではなくて、“温度感のあるジュエリー作り”というものがあるように思う。

そこに宿るものは、大切な想いや、お二人が出会い共に過ごす時間、あるいは、私との出会いもそうなのかもしれない。

形を持たない大切な何かをキャッチボールをするように、お二人の結婚指輪を作っている。

 

山茶花は咲き始めると、その勢いがすごい。

ゆっくりとした歩みだけど、弛まず力強く。

そのような日々の姿にインスパイアされながら。

 

炎に包み、金属の緊張を解くように柔らかくした後、リングに緩やかなカーブを与えた。

木槌でコンコンと叩きながら、圧力を加え、少しずつ造形を変化させていく。

その過程で、シャンパンゴールドは組成をキュッと引き締めるように硬くなる。

これからずっと長くお使いいただくリングだ。最後の工程までじっくりと丁寧に進めていく。

カーブを生み出すように叩き、次には別のアプローチで叩き、中心の円を整える。

理想のフォルムに達するまで、シンプルなタッチを慎重に繰り返した。

 

大まかな造形が取れたところで、紙やすりを手にし、研磨作業に取り掛かった。いよいよ最後の磨き仕上げである。

240番から始め、400番、そして600番と紙やすりの目を細かくしながら、リングの表面と内側を丁寧に磨き上げていく。

タッチを重ねるたびに、雅やかな輝きを強くするシャンパンゴールドに、思わず魅入ってしまう。

表面は有機的でマットな表情に、内側はさらに磨きをかけ、付け心地の良いつるりとした質感に整えた。

このあと、いよいよ刻印を施すのみとなる。

 

気がつくと、作業机の上にはヤスリや金属片がたくさん散らばっていて、それを少し愛おしく思いながら、ざっと片付けて、リングをそっと重ね合わせてみる。

ぴたりと寄り添ったお揃いのリングを眺めながら、ここまでお二人とご一緒した数ヶ月のことを、何気なく思い返していた。

あと少しで、お二人に手渡す日がやってくる。

 

窓の向こうを眺めると、この季節特有の濃い虹がかかっている。

今日から12月である。

 

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