長く続いた暴風雨が去ると、島は澄み渡る空に包まれた。
ときおり、シャワーみたいな細かな雨が降り、一日を通して、どこかで虹を見ることができる。
少し怖くなるほどの、この圧倒的な美しさに出会えるのが、台風あとのひそかな楽しみになっているのかもしれない。
いくつもの再生を繰り返す自然のリズムは、いつもの暮らしとは異なるダイナミックさ持っていて、その果てしなさに、心地よさを感じながら。
大好きな植物を、そっと纏うように。
カリフォルニアに暮らすお二人の結婚指輪は、シダの葉をモチーフにしてお作りしています。
もうひとつ、シダの指輪と重ねて身につけられるように仕立てる、黄色い花の婚約指輪も楽しみ。
ひとつで身につけても素敵だし、重ねてつけると、そこに幸せなハーモニーが生まれるような。
そこに、彼のリングと彼女のリングの響き合いも重なって。
婚約指輪と結婚指輪を一緒にお作りできることは、小さな三重奏を演じるようで、胸が高鳴る。
多様でありながら共存する、その絶妙なバランス。
美しさと造形に対する憧憬は、いつも島の自然の中にあるのかもしれない。
さて、今日も作っている。
くるりと巻いたリングの両端は、茎の部分と葉っぱの部分が、隙間なくぴたりと合わさるように調整した。
そこへ、バーナーの炎を回しかけ、隙間に融点の低いゴールドを流し込んでいく。
このとき、リングを小さな墨の上に置いて作業をすると、熱のめぐりがよくなり、金属に直に火を当てる時間が少なくなるぶん、仕上がりもより美しくなる。
ある一定の温度まで上昇させ、ゴールドが隙間にすっと流れた瞬間に、火を外す。
とてもシンプルなタッチの中に、深い集中を必要とする作業だったけれど、うまくできたように思う。
それにしても、一度その形を留めると、はるか未来まで変わらなくあり続けるのが、金属の素晴らしいところだと思う。
それがゆえに、はるか長い時の流れの中にある、ちょっとした役割のようなものを担っていると感じることもある。
その宇宙的な時間軸を思うと、おふたりと、そしてわたしとは、その金属をジュエリーに変えるスタンスをとって、ほんの一時だけ借りている存在のようにも思えてくる。
ゴールドとプラチナが持つ可能性を最大限に活かすことができるように、大切に作り上げていかなくては。
シダの指輪の造形作業がひと段落し、お花の指輪づくりにバトンをつなぐ。
放射状に開く花のモチーフは、プラチナでかたどった。
これは、わたしも島で一番大好きな、ツワブキという花なのだけど、
その繊細で明るい雰囲気が、彼女にとてもよく似合っている。
少しずつ肌寒さを感じるようになる、屋久島の12月。
庭先や散歩道に、ポコポコと咲き始める黄色い花。
あふれる光のようなその印象に、希望にも似た癒しを感じながら、次の作業へと取り掛かっているところだ。
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