作業が始まる前に、朝のやわらかな光の中でリングを眺めるひととき。
熱帯の雰囲気に包まれる屋久島サウスでは、ハイビスカスはもっとも親しみ深い花のひとつのように思う。
アトリエでは、生垣がぐるりとハイビスカスの木でできていて、
暮らし始めると、この赤と緑がいつも守っていてくれているような、
とても親密な想いを感じるようになった。
花には、全てを受容するような、癒しの魔法があるように思う。
菜の花をかたどるピンクゴールドのリングに続き、
彼のシルバーリングを作り始めたところまでを書きました。
花をモチーフにジュエリーを作っていると、なんだか元気になれる。
作業机に向かっているとき、豊かな色彩と香りに包まれているような気がして、心が安らかになる。
本当の意味で、花のようなジュエリーを作ってお届けできれば嬉しいし、
花のような人にもなりたい w
日々の暮らしの中で、何気なく、わたしたちが互いに癒し合うことができれば、それはとても素敵なことかもしれない。
さて、今日も作っている。
彼のシルバーリングは、シンプルなスクエアシェイプのフォルムに仕上げていくのだけど、
表面はもちろん、側面も、内側にもヤスリを入れ、しっかりと削り出していく。
シャープですっきりとしたフォルムの中に、手の中にある温度のようなものを響かせていく。
指に触れる内側部分は、大きくラウンドをさせ、やわらかな質感に仕立てた。
しっかりと厚みを持たせて強度を保つことを意識しながら、少しずつ、全体のバランスを整えていく。
内側の角と表面の角には、精密ヤスリをすっと当てて、尖ったエッジを丁寧に落としていく。
一見、シンプルに感じられるデザインだからこそ、作り手の考え方が、より明瞭に浮かび上がってくるように思う。
あるいは、お二人の大切な想いや、制作を取り囲む島の季節だってそうかもしれない。
そうした自然の中に漂う息づかいのようなものが、細部に宿っていくようなものづくりが、とても面白い。
紙やすりで磨き上げる前に、リングを電気炉に入れ、200度の温度の中で1時間、ゆっくりと熱を巡らせておいた。
こうしておくと、シルバーはより堅く、安定した手触りに仕上がるからだ。
作業をひと段落する頃には、空はオレンジ色に染まり始めていた。
その美しい色彩に魅せられて、急いで庭先へ。
ずいぶん暗くなってきたのに、まだ暑さの余韻が残っている。
南の島ならではの、重たい湿度も、どこか心地よく感じられた。
季節が静かに移り変わっていく気配を感じられたのも、
おふたりの指輪作りがひと段落したタイミングと重なって、
自然の流れのようにも思えた。
彼女のリングにはダイヤモンドをセットし、
彼のリングには、彼女と同じモチーフの模様を彫刻すると、
いよいよ完成を迎えることになる。
深まる夏の色彩の中で、
少し先の未来を思い描きながら、
ゆっくりと深呼吸をした。
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