硬くて無機質だった金属のプレートに、少しずつ手触りと温度が宿り始めている。
焼きなまして柔らかくしたゴールドを、金槌で何度も強く叩き、表面に無数の凹凸を刻んだ。
儚さと、永遠と。
植物の柔らかな手触りを、どれだけ金属に映し出せるだろうか、というのが、ジュエリー作りにおける大きな興味であるように思う。
草花を摘んで纏うように。
屋久島と、大好きな植物でつながる、おふたりの婚約指輪作り。
森を歩けば、いきいきとした色彩や造形、多様な生命にふれ、実に大きなインスピレーションを授かる。
足元に佇む葉の繊細で美しいフォルムを眺めていると、ついジュエリーのことを想像してしまう。
そっとその緑に触れてみれば、なんとも優しく、そして力強い手触りが伝わってくる。
すべてにはかたちがあり、同時に幻でもある。
島の森で過ごす、まるで夢のような時間を思い出しながら、今日も作業机に向かっている。
k18イエローゴールドのプレートに小さな穴をあけ、そこへ糸鋸の歯を通し、ガリガリと上下させる。
鋸刃の動きと角度を一定に保ちながら、プレートを動かすようにして、葉っぱの輪郭を切り出しはじめた。
もちろん、植物の繊細でやわらかな表情を表現するためには、テクスチャーだけではなく、そのフォルムによるところがとても大きくなってくる。
植物が持つ無垢な滑らかさを意識しながら、できるだけその動きを止めないように、葉っぱをひとつひとつ、根気よくタッチを重ねていく。
裏側になる部分をたしかめながら、しっかりとした強度が生まれるように金属の余白を残しておく。
切り出すたび、ゴールドの細かい破片がキラキラと散らばっていった。
朝のうちに、ひとしきり雨が降った。
太陽の光に包まれながら降り注ぐ、祝福のような明るい雨。
作業をひと段落させ、夕暮れ時に海の見える丘までドライブをした。
空には夏の雲と秋の色彩が重なり合っている。
波のざわめきや虫たちの声が響いているはずなのに、不思議とどこまでも静かなひとときに、体も心も癒された。
今日も屋久島にありがとう。
きっと明日も良くなる。
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