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永遠と今。ふたつのリングが響き合うとき #屋久島でつくる結婚指輪

彼女のリングは、とても繊細なシルエットに仕立てていく。

表面には、彼のリングと同じように、緩やかに波打つラインを削り出した。

 

最初は何もなかったところに、少しずつ、かたちが生まれていく。

その時間が、まるで奇跡のように感じられる。

 

作業もいよいよ終盤を迎え、屋久島に滞在していたおふたりから、はじめてメッセージをいただいた時のことを、しみじみと思い出していた。

 

実は、おふたりの結婚指輪づくりのきっかけとなる、一つの出会いがあって、

長く暮らした大阪で、ゆるやかに育まれていた小さな時間の話を、少しだけしておこうと思う。

 

それは、今からおよそ十五年以上も前のことになるのだけど、

あの時の何気ない出会いが、今に繋がるなんて。

もちろん、その頃は思いもしなかった。

そのカフェレストランは、大阪・心斎橋筋商店街を少し外れた、昔ながらのビルの二階にあった。

 

細い階段を螺旋状に登っていくと、ぱっと明るい雰囲気が広がる。

隠れ家的な場所だった。

 

わたしは近くで個展を開いていた時に、そのお店を偶然見つけたのだけど、

洗練の中に温かみのあるムードが大好きで、大阪に帰る折には、妻と一緒に時々立ち寄らせていただいた。

 

どのお料理も、ナチュラルな製法で仕上げられた品のあるもので、

それを作る彼女には、作り手としての親しさのようなものを感じていたのをよく覚えている。

 

あれから、心斎橋は大きく変わり、

わたしたちもまた、それぞれの場所でそれぞれの時間を歩むようになっていたけれど、

それでもゆるやかにSNSで繋がっていた。

 

そして、彼女の大切なご友人が、お仕事で屋久島に長く滞在することになったのは、今から二年ほど前のことだった。

 

ご友人から初めてご連絡をいただいた時、

細くて透明な糸が、ずっと前から繋がっていたのだと気づき、とても嬉しかった。

 

もちろん、おふたりとは島で初めてお会いしたのだけど、

そこには、形を持たない“確かさ”のようなものがあった。

 

わたしたちが今ここで出会うことを信じながら、結婚指輪を作ることができているように思う。

 

あの時、あのビルの階段を登っていなかったら、

あるいは、また別の時間が流れていたのだろうか。

そう考えると、この瞬間が、いっそう貴重なものに感じられる。

 

こうして、おふたりとともに結婚指輪づくりができる今に、ありがとう。

 

時のリズム。響き合う煌めき。

二本のリングを初めて重ね合わせてみる。

 

ぴたりと寄り添うその佇まいを眺めていると、

おふたりのことを思い出して、

なんだかほっこり癒された。

 

繊細で、そして力強いラインを作り出すことができたように思う。

 

そのリングは、おふたりが出会い、生まれた時間そのもののようでもあり、

同時に、屋久島の風土が育んだ、深く、抑揚に満ちたフォルムのようにも思う。

 

夕暮れ時、作業をひと段落し、空に姿を現したばかりの月を見上げた。

ちょうど、円を半分にした形の月だ。

 

リングの内側には、これから刻印を施し、最後の磨き仕上げを進めていく。

そして、リングが完成するのを合図にするように、また新しい時間が始まることになる。

 

月のように巡り、波のように寄せては引いてゆく、

永遠の時の流れを感じながら。

 

屋久島でつくる結婚指輪

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hp@kei-jewellery.com
tel: 0997-47-3547

 

制作編

島に届く香り、風。シャンパンゴールドの手触りについて #屋久島でつくる結婚指輪

島に届く香り、風。シャンパンゴールドの手触りについて #屋久島でつくる結婚指輪

アトリエの庭先に、金木犀が咲きました。

今年も大好きな花に出会えて、とても嬉しい気持ちです。

朝目を覚ましたときも、作業の合間にも、

その甘くてどこか懐かしい香りに引き寄せられるようにして、

癒されながら、今日もジュエリーを作っています。

 

案外少なく感じるかもしれませんが、

全部で四本のヤスリを使い分けながら、リングの造形作業を進めています。

 

お二人の暮らしの中で、長くご愛用いただく結婚指輪ですので、

着け心地は何よりも大切にしたいところです。

 

リングの内側にも、精密ヤスリをしっかりとあてて、

指にやさしく馴染むよう、丸く丁寧に削り出していきました。

 

左側が彼のリング。大まかな削り出しの作業を終えたところです。

右側が彼女のリング。これから造形作業を行うために、マジックでガイドラインを描いています。

 

考えてみると、すべてはフリーハンド。手の感覚だけを頼りに進める、昔ながらのジュエリー作りです。

 

そこには、細やかなタッチから生まれる微妙な揺らぎが集まり、ひとつの息吹のようなものを形成していく過程があります。

 

計算された完璧なフォルムではないかもしれません。
けれど、そこから生まれるのは、世界にただひとつの形であることは間違いありません。

 

色や輝き、そしてフォルムに宿る、その温度を帯びた揺らぎが、愛おしく思えてならない。

作り手にとっても、受け取ってくださる方にとっても、

そこには、何事にも代えがたい喜びがあるように思うのです。

 

夕暮れ時、山々の方から大きな雲がアトリエへ向かって、すごいスピードで流れていきました。

 

複雑に入り組んだ山のフォルムを抜けて届く風が、

空気の中に繊細な変化を生み出しているように感じられます。

 

山の近くで暮らすことって、本当に素晴らしい。

暮らしの中に、何気なく、深い思考や変化に富んだ感情を運んできてくれるように思うのです。

 

美しかった屋久島に、ありがとう。

明日もまた、ジュエリー作りです。

 

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制作編

島時間の中で、少しずつ。シャンパンゴールドが育まれるとき #屋久島でつくる結婚指輪

島時間の中で、少しずつ。シャンパンゴールドが育まれるとき #屋久島でつくる結婚指輪

夜明けの空が、オレンジ色に染まるようになってきた。

考えてみれば、あと少しで11月になるのだ。

朝の風は、冷たい。

 

それでも、水温がまだそれほど下がらないうちにと海に入り、波に乗ってからアトリエに戻り、作業机に向かう日が続いている。

 

海のリズムに包まれながら、作業机に向かう時間が好きだ。

熱いカフェオレを作って、細やかな作業に没頭していると、まるで朝の涼やかな風が体を通り抜けたような、とても静かで、平らな気持ちに包まれる。

 

デザインが繊細であればあるほど、気持ちが落ち着いていくというのは、なんとなく不思議な話だけど。

島の自然に包まれて暮らすこと自体が、集中を深い部分に整えてくれているのかもしれない。

 

今、作り進めている結婚指輪もまた、とても繊細なタッチを必要とする造形である。

あるいは、ここよりもずっと深い自然に包まれて暮らすおふたりの日々に、思いを巡らせながら。

 

 

2本の細いシャンパンゴールドを、その両端をハンマーで叩いて細くし、ヤスリで表面を整えたところまでを書きました。

虹の名残り。シャンパンゴールドで二つのリングを紡ぐとき #屋久島でつくる結婚指輪

 

さて、

下ごしらえをしっかりと施した、二本の繊細なシャンパンゴールドは、

くるりと巻いて、いよいよリングとなる工程へ。

 

おふたりと一緒に描いたイメージが、

手の中で少しずつリアルな形となる時間を迎えることになる。

両端をぴたりと合わせ、シャンパンゴールドが真っ赤になるまでバーナーで熱しながら、その隙間に、融点の低いゴールドを流し込む。

とてもシンプルな工程だけど、温度のコントロールを意識しながら、慎重に進めてく。

 

こうして両端がつながり、一つのリングとなったシャンパンゴールドは、以前よりもずっと硬く、安定したものになる。

まずは、彼のリングをつなぎ合わせ、続いて彼女のリングにも、同じタッチを、バトンを渡すように重ねていった。

 

そして、このあとの削り出し作業を迎える前に、長い時間をかけて表面を丁寧に整えた。

鉄鋼ヤスリで平らな面を作り、240番の粗い紙やすりをざっと表面にかける。

 

そうして薄く削り落とすと、荒れて黒ずんでいた表面の奥から、やわらかな金色の輝きが現れた。

 

透明な光のようで、樹木を思わせる穏やかなトーンを湛えたシャンパンゴールドの色彩だ。

 

嬉しくなって、庭先まで二本のリングを持ち出し、太陽の光の下で眺めてみる。

シャンパンゴールドには、煌めきや色彩のリズムがあって、室内で見ていたよりも、ずっと生き生きとして感じられた。

 

濃い影と、白っぽく照らされる部分が、同時に小さなリングの中にある。

そのすぐそばでは、島で満開を迎えるサキシマフヨウの花が、海風にゆらめいている。

お隣さんは熱心に庭木の手入れを続けている、なんとも静かな午後だ。

いくつかの方向から、鈴虫の音色が鳴り響いている。

 

このようにして、指輪作りは島時間の中で、ゆっくりと、そして確かに、その歩みを進めていくのであった。

虹の名残り。シャンパンゴールドで二つのリングを紡ぐとき #屋久島でつくる結婚指輪

お二人の結婚指輪を作りはじめたのは、秋の始まりを告げる激しい風雨に島が包まれていた時のことだった。

外の世界から切り離されたような深い静けさの中、作業机に向かっていたその時間が、いまでは少し前の出来事のように思い出される。

 

数日の間続いた嵐は過ぎ去り、今では島をそっとベールで包むように、やさしい雨が降り続いている。

早朝の散歩道では、海の方角に濃い虹がかかっていた。

山々から吹き下ろす風は、いつもよりも少し冷たい。

 

目の前に広がるのは、おふたりも眺めていた山々だ。

この小さな島で、いくつかのささやかな出来事が重なり合い、始まった指輪作りだったように思う。

偶然のようでいて、どこか必然にも感じられるおふたりとの出会いについて、何気なく思いを巡らせていた。

 

金槌で叩き、リングの幅を作る部分に抑揚を与えた、シャンパンゴールドの細い線。

その表面についた凸凹を、鉄鋼ヤスリでざっと削り落として整えておいた。

 

これは、リングを形づくる前の工程で、料理でいうところの下ごしらえのようなものであるが、

案外、こうした細やかな準備が、仕上がりの美しさに大きく関わってくることになる。

 

今の時点では、リングに生まれるべき“リズム”のようなものは、まだ感じられない。

けれど、目には見えないところを、しっかりと頑張っておく。

 

作業机の上に置いたシャンパンゴールドは、とても繊細なのに、硬い。

その金色を眺めていると、なんだか、秋の夜明けに満ちゆく光のようだな、と思う。

 

指輪作りは、いよいよここから本格的な造形作業を迎えることになる。

ヤスリで削り出された面が艶かしく輝いていて、胸のずっと奥のほうに響いてきた。

 

 

虹とジュエリー。クリスマスのオーダーメイドについての小さなお知らせ。#屋久島でつくる結婚指輪

数日続いた嵐の間には、ときおり晴れ間がのぞくこともあり、

アトリエの窓の向こう、山の低いところには濃い虹がかかりました。

どことなく、空気も冷たく感じるこの頃です。

 

虹のかかる場所が季節ごとに変わることは、島に暮らして知りましたが、

山際に虹が現れると、秋が深まり、いよいよ冬へと近づいてゆく合図でもあります。

 

カボチャやキノコ、サツマイモ、りんごや栗が美味しい季節でもありますね。

 

アトリエでは、嵐の間も変わらずジュエリー作りが続いていて、

もうすぐクリスマスだなあと、贈り物の制作に向けて、心を整えているところです。

 

クリスマスプレゼントのジュエリーは、制作スケジュールがだんだんと埋まりつつありますので、
もしご検討されている方がいらっしゃいましたら、お早めにお声がけいただければ安心かと思います。

 

11月が近くなり、なんだか急に、そわそわする気もしますが、

熱いコーヒーでも飲みながら、ゆっくりとまいりましょう。

 

屋久島サウスのアトリエより、

皆さま、どうぞ素敵な週末をお過ごしください。

 

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やわらかなひかり。屋久島からお届けする、小さな月のネックレス #屋久島でつくる結婚指輪

うつろう色彩、やわらかなひかり。

大切な記念のジュエリーをオーダーいただき、ありがとうございました。

この一年が、素敵な時間に包まれますように。

 

海の月ネックレス 18k yellow gold, 夜光貝

 

屋久島の海からいただいた夜光貝は、

その個体や場所によって、映し出す色彩が少しずつ異なっていて、

「どんな輝きに出会えるのだろう」と、作業の途中はいつも胸が高鳴るのですが、

その一度きりの出会いもまた、自然からの贈り物のようで、かけがえのないものに思えます。

 

月の形に削り出した夜光貝には、

透明感のあるブルーやマゼンタ、オレンジの光が浮かび上がり、

まるで本物の月が、手の中で静かに輝いているようでした。

 

貝殻にはイエローゴールドを合わせ、

耐久性を高めながら、上品で洗練された印象にお仕立てしています。

細いイエローゴールドのチェーンを通しているので、

身に纏うと、まるで月が胸元に浮かび上がるようで、とても美しいです。

 

大切な記念のジュエリーにお選びいただき、本当にありがとうございました。

 

そうそう、

制作の途中、ある日には、昼間の月を見ることができたのですよ。

 

オムレツ型だったり、三日月だったり。

朝の月も、真夜中の満月も。

ふとした瞬間に何気なく出会う月に、

わたし自身もいつも癒されながら、いつもジュエリーを作っています。

 

海を越えて遠く離れていても、

同じような喜びを分かち合えて、幸せでした。

 

やがて、太陽が水平線に沈み、夜の気配が漂いはじめるころ。

ネックレスを海にかざすと、月が光の中に浮かんでいるように見えました。

 

あたたかな潮風が、その小さな月を静かに揺らしています。

ときおり、きらきらと煌めきを放ちながら、島の時間と響きあっていました。

 

秋に漂うこの芳醇な風も、一緒にお届けできますように。

 

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潮騒の記憶、時の煌めきとプラチナリング #屋久島でつくる結婚指輪

ここ数日は、嵐が続いているので、アトリエにこもる日々が続いています。

指輪作りが始まった頃に訪れた浜辺の情景を、懐かしむように思い浮かべながら、静かな気持ちで作業机に向かっています。

 

海は本当に不思議で、あれほど大きな潮騒に包まれているのに、どこかとても静かな場所に感じられます。

心がすっと穏やかになっていくのです。

 

小さな島での暮らしですので、海はいつも近くにあって、ふとした瞬間に癒してくれる。

ジュエリー作りに、豊かなインスピレーションを与えてくれているように思います。

 

波打ち際を歩いて、打ち寄せる波や、水面を走るうねりを眺めていると、かたちを持たない力のようなものを感じます。

それは、季節の巡りや、朝と夜、雨が降って虹が現れる――みたいな、移りゆく時間のかたちなのかもしれません。

 

ときにはかたちを宿し、ときには空気を漂うものとなりながら。

おふたりのリングもまた、わたしたちをいつもやさしく包み込んでくれる、“時間”のようなものになればと思うのです。

 

リングの表面には、ぐるりと巡る流線を削り出し、そのエッジを際立たせるように仕立てました。

アウトラインにも、ゆるやかなカーブを施しています。

 

造形作業も佳境に差し掛かると、結局のところ、最後は手の感覚のみを頼りに進めていくような感じになるのですが、

紙やすりを片手に、プラチナリングを包み込むように磨き上げていくと、

やがて手の中に、一つの小さな光のようなものが、ぽつりと灯る瞬間に出会えます。

 

それは、確かな重みを持った温度であり、

まるでここに一輪の花が咲いたような時間が、静かに訪れるのです。

 

思い返してみると、彼から最初にお便りをいただいたのは、あちらこちらで桜の花が咲き始めた春先のことでした。

あれから、菜の花をモチーフにした婚約指輪の制作を経て、半年ほど。

屋久島の南部では、いまコスモスが開花を迎えようとしています。

 

おふたりとこの夏をご一緒した結婚指輪作りも、いよいよ完成間近となり、

なんだか少しだけ、名残惜しいような気もしますが 笑。

この指輪の完成は、実はゴールではなく、スタートの合図でもあるのですね。

 

お互いに、美しいスタートを迎えることができるように、

最後まで、しっかりと、丁寧に仕上げていかなくては。

 

造形作業がひと段落したプラチナリングには、内側に刻印を施して、磨き仕上げの工程を待つばかりとなりましたが、

この続きは、また別のお話で。

 

夕暮れ時のビーチに散りばめられるような、まばゆくやわらかな輝きを纏って仕上がるリングを、どうぞ楽しみにしていてください。

 

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制作編

植物と響き合うかたち。雨の日のプラチナリングづくり #屋久島でつくる結婚指輪

 

菜の花の婚約指輪

ナノハナの指輪 屋久島からお届けする約束の指輪 #屋久島でつくる結婚指輪

植物と響き合うかたち。雨の日のプラチナリングづくり #屋久島でつくる結婚指輪

早朝の散歩道で、オレンジ色に染まる朝焼けを眺めた時を境にして、島は強い風雨に包まれた。

秋雨前線がもたらすこの荒天は、これから数日間続くことになり、その間は流通も途絶えることになる。

屋久島の、この季節ならではのリズムだ。

 

久しぶりにまとまった雨が降り、島が外界から隔たれてしまうと、アトリエでの制作に自ずと集中が深まっていく。

窓の向こうに響く雨音を聞きながら作業机に向かい、

雨足が弱まると庭先に出て、湿度に満ちた世界を楽しんでいた。

 

新しい季節がもたらした鋭敏な感覚のおかげだろうか。

プラチナリングの造形作業も、この二日ほどで大きくその進捗を加速させることになった。

 

植物との親和性、という感覚は、実はジュエリー作りにおいて最も大切にしているところだったりする。

 

硬くて冷たい金属に、どのようにして、やさしさや温度を与えていくのか。

その尽きることのない興味に、庭先で出会う植物たちや雨の雫は、いつもインスピレーションを与えてくれる。

 

おふたりには、婚約指輪としてお花のリングをお作りした。

彼女が重ねて身につけるとき、ふたつのリングがやさしく馴染むように仕立てていきたいところだ。

 

2本のリングの造形が揃ったところで、庭先に持ち出し、そのシルエットを眺めてみる。

ここまでくると、「ずいぶんプラチナを削ぎ落としたな」という感覚だけど、これでようやく6割ほどの削り出しになる。

 

少し足を伸ばして、散歩に出かけようとしたところ、また雨が強くなってきたので、アトリエに戻ることにした。

シダの葉が雫を纏う、その佇まいを胸に留めておく。

 

さて、これからリングに大きく力をかけていく大切なところ。

その工程を控え、酸素トーチの炎でプラチナを焼きなましておく。

 

リングの緊張が解けたところで、鉄の枠にあて、木槌で叩きながら圧をかけていく。

タッチを重ねるたびに、リングは大きくその形状を変え、新しい表情を宿していく。

一度整えたものにダイナミックな変化を加えるのは、なかなか思い切りのいる作業ではあるが、頭の中にしっかりと、少し先の未来を思い描きながら、慎重に、そして思い切りよく手を進めていった。

 

やがて、リング全体に柔らかな曲線が生まれたところで、芯金に通し、コンコンと木槌で叩きながら内側の円形を整えていく。

これまでにも何度も繰り返してきた手作業は、とても素早い。

叩くたび、手の中でプラチナが少しずつ硬さを取り戻していくのがわかる。

 

理想のフォルムが生まれ、サイズがぴたりと合わさる瞬間は、いつまで経っても職人冥利に尽きる喜びだ。

 

おふたりの指輪作りも、いよいよ折り返し地点を過ぎたといったところだ。

 

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制作編

巡りゆく季節。波のリズム。刹那と永遠と。#屋久島でつくる結婚指輪

巡りゆく季節。波のリズム。刹那と永遠と。#屋久島でつくる結婚指輪

漂う空気の中に、ときおり出会う秋の色彩に心を躍らせながら、おふたりの結婚指輪を作っている。

今年は、いつもよりも少し遅い秋のような気がするのだけど、それでも夕暮れ時にはオレンジ色を纏った雲がとても綺麗だ。

 

作業机に向かい、プラチナリングを手にしていると、金属に流れる時間を、ふと感じることがある。

それは、限りなく永遠に近い時間であるように思う。

 

繰り返し巡りゆく季節。波のリズム。刹那と永遠と。

小さなリングの中に宿る果てしない時を思い描きながら。

 

さて、今日も作っている。

 

プラチナリングは、その幅に変化を持たせて仕立ててある。

表面には、何本もの罫書き線を描き、それをガイドラインにして、マジックで波のようにゆるやかなラインを描いた。

作業の間では、案外、0.1mm単位の数字もたくさん登場する。

 

そして、鉄鋼ヤスリを片手に、リングを削り出していく。

マジックで描いたラインを残すようにして、思い切りよくタッチを重ねていった。

フォルムの中に一つの流れが生まれるまで、手を動かし続けなくてはならない。

 

作業に夢中になっていて、気がつけば、プラチナの粉が作業台の上にいっぱいになっていた。

 

リングはずいぶんとすっきり削り落とされ、そこに芽生えた、小さな温度のようなものを感じることができた。

はじめてリングが自然に近づいたように感じられて、なんだかほっこりした。

 

考えてみると、とても腑に落ちるもので、

自然と理とは、いつも同時にあって、世界にやさしさを作り出していく。

 

数字を駆使しながら合理的に進める作業にもまた、金属の時間と手の揺らぎが出会う、奇跡のような喜びがある。

 

今、手の中にあるプラチナリングにも、そのような調和に包まれた、小さな時間が育まれるといいと思う。

おふたりが思い描いたリングは、きっと、おふたりの物語を宿す、かけがえのないものに違いないのだから。

 

 

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制作編

季節とともに紡ぐ。屋久島と長野をつなぐプラチナリング作り #屋久島でつくる結婚指輪

季節とともに紡ぐ。屋久島と長野をつなぐプラチナリング作り #屋久島でつくる結婚指輪

新しい制作を始めることにしたのは、夜のあいだ激しく降っていた雨が止んだばかりの、湿度に満ちた朝のことだった。

庭先では、たくさんのツユクサが集うように咲いている。

久しぶりに大好きな花が咲いたのが嬉しくて、散りばめられたブルーの小花を眺めながら、静かな気持ちに満たされていた。

 

その屋久島の情景の中に、とても澄んだ、力強い輝きが共鳴している。

おふたりの結婚指輪は、お揃いのプラチナで作り進めていくことになる。

 

アトリエに戻り、窓の向こうに目をやると、山際に薄くかかった虹が見えた。

10月も半ばに差しかかっているというのに、屋久島の南部はまだ夏のような暑さに包まれている。

 

おふたりが暮らす長野は、もうすっかり秋の気配に満ちているのだろうか。

キノコや栗、リンゴ、そしてカボチャやサツマイモ。

どれも、きっと今がいちばんおいしい季節だ。

 

屋久島と長野。

自然と寄り添うように暮らす時間が、静かに距離を越え、

おふたりとわたしに、やわらかく、そして豊かなつながりをもたらしてくれている。

 

結婚指輪として永くお使いいただけるよう、特別に硬く配合をしたプラチナなので、

酸素バーナーの炎に包み、柔らかく焼きなましてから、全ての作業を始めることになる。

 

プラチナが少し柔らかくなったところで、鉄の芯金に当てて木槌で叩く。

それでもなかなかに硬いもので、しっかりと力を込めながら、

ゆっくりと、少しずつ、リング状に整えていく。

 

コンコン、とプラチナを叩く音がアトリエに響く。

昔からずっと変わることのない、手作業のリズムがここにある。

 

窓の向こうからは、ときおり激しい雨音が聞こえてきては、またどこかへと去ってゆく。

アトリエのすぐ前では、サキシマフヨウがポコポコと薄ピンク色の花を咲かせ始めている。

 

このようして、おふたりの結婚指輪作りは、南国の心地よい空気の中で、静かにその第一歩を踏み出したのであった。

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プロポーズの日に向けてお届けした、ヒマワリのネックレスの物語 #屋久島でつくる結婚指輪

ヒマワリのネックレス 18k yellow gold, silver, citrine

 

屋久島から、海を越えてお届けするネックレス。

大切なプロポーズの日に向けて、お仕立ていたしました。

 

夏の名残を思わせる眩しい光に包まれて、

咲いたばかりのヒマワリが、そっと輝いているように見えました。

 

海まで出かけ、波打ち際でそっと手に取ってみる。

ペンダントトップの大きさは、約13ミリ。

シルバーの花びらに、イエローゴールドの石枠を合わせてお仕立てしました。

 

軽やかなフォルムでありますが、手のひらには確かな重みが伝わってきます。

 

ひまわりといえば、なんといっても太陽の光のような黄色が印象的なのですよね。

その透明感のある輝きを思い描きながら、花の中央にシトリンをセットいたしました。

 

屋久島サウスのアトリエからすぐ近く、

山際に広がるひまわり畑。

 

海風に揺らめく黄色い光。

2025年の夏も、その情景にたくさん癒されました。

 

この胸踊るような喜びを、おふたりと分かち合えたら、何よりも嬉しく思います。

 

ネックレスは、ケースにお入れし、リボンをかけて丁寧に梱包いたしました。

おふたりにとって大切な記念の日に、ジュエリーをお選びいただき、心よりありがとうございました。

海の向こうからではありますが、おふたりの始まりの日をこうして応援することができ、幸せに思います。

 

いつの日か、ぜひ屋久島にいらしてください。

秋や冬にも、ひまわりが咲く南の島です。

 

祝福の光に包まれた夕暮れ時。

驚くほどに海水があたたかかった、いつものビーチにて。

 

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ピンクゴールドとプラチナが響き合う。希望あふれる結婚指輪づくり #屋久島でつくる結婚指輪

南国のまぶしい光がブラインド越しに差し込み、アトリエをあたたかな空気で満たしている。

日中の汗ばむほどの暑さが続いているけれど、この場所にいると、どこまでも静かで、心は涼やかに落ち着いていく。

木槌を片手に、コンコンと響く音に包まれながら、いよいよ迎えた大切な造形作業に夢中になっていた。

 

ひとつのピンクゴールドとひとつのプラチナに、これまで少しずつタッチを加えてきた。

一度進むと戻ることのできない、金属を扱う繊細な手作業である。

ときには微妙な調整を加えながら、ここまで歩んできた。

 

そのようにして生まれる、ごくささやかな“揺らぎ”のようなものが、ひとつだけの息吹をリングに宿すことになる。

まるで、野原に咲いたばかりの一輪の花のように、

 

2本のリングのアウトラインには、お揃いのカーブを施した。

水面を漂う波のようにやわらかで、どこまでもスムーズな曲線だ。

 

これまで少しずつ異なっていた意匠を、はじめて一つの場所に繋ぎ合わせることができた。

視覚的にも、つけ心地にも優しいフォルムを作り出すことができたように思う。

 

鉄の台の上で、リングをそっと重ね合わせる。

ふと、夏のアトリエでお会いしたおふたりのことを思い出す。

 

新しい暮らしを始めたばかりのおふたりは、きっと今頃、それぞれの道を歩みながら、大忙しの日々を過ごしているのだろう。

なんだか、このふたつのリングが、おふたりの響きと重なるように思えて、微笑ましくなる。

 

うん、きっとよくなるだろう。

 

残すところは、内側の彫刻作業、石のセッティング、そして磨き上げ作業だ。

 

少し先の未来への希望を抱きながら、最後の仕上げ作業へと向けて準備を進めていくことにした。

 

今日も、ひとつひとつ。

 

 

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制作編

夏の余韻。やさしい気持ち。ピンクゴールドの呼吸。#屋久島でつくる結婚指輪

出会い編

島が紡ぐ物語、真夏の結婚指輪相談会 #屋久島でつくる結婚指輪