
例年よりもずいぶん早く訪れた台風は、予報されていた通り、島を直撃することになったのだけど、その勢いは思っていたよりもずっと穏やかに感じられた。
今回は、台風の目に入っていた時間がけっこう長かったように思う。
それまで吹きつけていた南東の風がぴたりと止み、まるでバスケットボールの試合のハーフタイムみたいに、束の間の休息の時間が訪れる。
その時、庭先に出て眺めた空に虹がかかっていたことが、とても印象に残っている。
そして、1時間ほどが過ぎると、今度は北西の方角から強い風が吹き始めた。
いつもは長く続く停電が起こらなかったのも、幸いだった。
自然が織りなすダイナミックなリズムの中に身を置きながら、新しいジュエリー作りに取り掛かることができたのは、島に背中を押されるような、とても力強い幕開けだったように思う。
この島に暮らしていると、圧倒されるほど美しい自然に惹かれた人たちとの出会いに恵まれる。
屋久島が紡いでくれた結婚指輪作り。素敵な出会いに、ありがとう。
あるがままの自然を感じながら暮らし、作りたい。
そう思ったことが、わたしがこの島に暮らし始めたきっかけだったのだけど、島でのお仕事を選んだおふたりにも、きっと近しい感覚があったのかもしれない。
森や海、空に月。
大きな時間がわたしたちに与えてくれるインスピレーションは、とても多いように思う。
今は島を離れているおふたりだけど、大切な部分でつながっていることのできる、親しみに似た安堵のようなものを感じながら。

まずはファーストタッチとして、今回の指輪作りのために配合したピンクゴールドを炎で包み、やわらかく作業を進めやすい状態に整えた。
そして、金槌でコンコンと、細いゴールドの線の両端を叩いていく。
彼女のリングとなる地金に、太い部分と細い部分が生まれるように、同じタッチを何度も繰り返していく。
本格的な造形作業に入る前の、下拵えのような控えめな作業ではあるけれど、
この積み重ねが、やがてリングの表情に美しい抑揚を与えてくれる。

金槌で叩くことで生まれた厚みのむらを削り整えた後、再びガスバーナーの炎に包み、ピンクゴールドをやわらかくした。
そして、鉄の芯金に沿わせ、くるりとリング状に巻いていく。
彼女のリングには、軽やかなリズムのようなものが感じられ、
均一な幅で作り進める彼のリングには、落ち着いた安定感がある。
おふたりと共に育んできたイメージが形になっていく。
同じピンクゴールドから生まれるふたつのリングは、これからそれぞれの表情を深めながら、やわらかなつながりを築いていく。
ほんの少しずつではあるけれど、その時間を前にしていることが、とても嬉しかった。
台風が去り、これからまた雨の日々が続くかもしれない。
島の重たい湿度も、雨音も、色とりどりに咲く紫陽花も。
おふたりと分かち合う、一度だけの季節なのだと思うと、
今この瞬間が、いっそう大切なものに感じられた。

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