
リング状に整えたシャンパンゴールドは、
その表面を金槌でコンコンと叩き、作業をひと段落いたしました。
金槌の叩き模様はこのあと削られ、表には見えなくなるのですが、
お料理で言うところの下拵えのようなものでしょうか。
こうしておくと、金属はその組成を引き締めるようにして硬くなるのです。
工程を経るたびに、硬くなったり、やわらかくなったりを繰り返す。
金属を扱っていると、まるで呼吸をしているように感じることがあります。
おふたりとアトリエでお会いした数日後に、大きな台風が島を通り過ぎ、長い雨の季節が始まりました。
神々しささえ感じる季節の移ろいに、歩みを合わせるようにしておふたりの指輪を作っています。
そしていま、また別の台風が島に近づいています。
今年は例年よりも台風が多いように感じますが、
幸いアトリエでは、無事に制作を続けることができています。
「今回の台風が過ぎたら、いよいよ夏が始まりそうですね。」
そんな会話も、島暮らしならではのような気がします。

ときどき大波が海を大きく巡らせることで、海中に広がるサンゴが健やかに育まれてゆく、という話も聞きました。

激しい風雨が過ぎ去ると、いつも新しい花に出会えるのも、楽しみの一つです。
浜辺には、ハマユウも咲き始めています。
そしてわたしたちも、このような大きな巡りの一部分なのだと思うと、なんだかとても勇気づけられるのです。
自然がそっと届けてくれる、小さな知らせのようなものを大切にする気持ちで、もしかするとおふたりとは繋がっているのかもしれません。

そして、いよいよ表面の削り出し作業へ。
鉄工ヤスリを片手に、丸くやわらかなフォルムを形作っていきます。
片側を一周、そして反対側を一周。
角度を変えながら、何度もタッチを重ねていくと、
少しずつ、ゆっくりと、リングが滑らかな手触りを宿していくのがわかります。
シャンパンゴールドは、咲いたばかりの花のような無垢な輝きを放ち、淡く上品な黄金色がリングを静かに巡り始めました。
金属のリズムが手の中に響いてきます。
シンプルなラウンドシェイプのデザインであるからこそ、それがダイレクトに伝わってくるのかもしれません。
この大地から届く、温もりを帯びた癒しを、おふたりと分かち合えることも、また嬉しく思うのです。
かたちの向こう側にある見えない感覚を大切にしながら、
小さなリングの中にひとつの流れが生まれるよう、手を動かし続けていました。
そして、彼のリングの削り出し作業をあらかた終え、少し経ってからだったと思います。
窓の向こうではまた、しとしと雨が降り始めました。
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