
屋久島のはるか南海上を、勢力の強い台風が通り過ぎた。
かなり遠く離れていたものの、屋久島サウスには激しい雨が降り、東から猛烈な風が数日間吹き続けていた。
ゆっくりと進む台風がようやく遠ざかると、あれだけ重たかった体が、すっと軽くなった。
植物たちは潮風にさらされたが、庭もずいぶんと風通しが良くなったように思う。
少しずつ時間を見つけて庭木の手入れをしていると、どこか清々しささえ覚えてくるのだから、不思議なものだ。
足元に目をやれば、新しい緑がところどころに芽吹き始めている。
植物たちも、わたしも、
何度も生まれ変わっていく。
そして、その一つひとつの今が、
永遠へと繋がっていく。
それは、島に暮らして初めて出会った感覚かもしれない。
ときおり激しく降る雨のおかげで、暑さも少し和らいだ。
今は、ジュエリー作りを始めた頃のようなワクワク感がある。
真っ白なページを開いたような気持ちで、作業机に向かっている。

窓際でプラチナを眺めると、島の緑と響き合っているようだった。
ときには凪のように静かであったり、ときには軽やかなリズムを奏でたり。
移ろいゆく時間を鏡のように映し出すところが、プラチナの素敵なところだと思う。
新しく始まるおふたりの暮らしの中で、
これからどのような色彩を映していくのだろう。
そんな未来を思うと、心が明るくなる。
いよいよ、おふたりの結婚指輪作りが始まった。

酸素トーチに火を灯し、プラチナを焼き鈍していく。
こうしておくと、これから迎える数々の工程を、よりスムーズに行うことができる。
プラチナは加工を重ねるたびに硬くなっていき、
ときおり火を入れながら、工程を進めていくのだが、
金属と対峙していると、まるで生き物のように呼吸を繰り返していると感じることがある。
この大地の響きを纏うような指輪になれば、どれほど素敵なことだろうと思う。
プラチナの温度が上昇し、オレンジ色に染まった。
そのタイミングを見計らい、ピンセットで挟み、火から離す。
そしてグラスに注いだ水の中にプラチナを沈めると、ジュッと歯切れの良い音を立てた。
まずは、最初の第一歩だ。

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