午前5時過ぎ。
アトリエを出る頃にはまだ当たりは暗く、月を眺めることができた。
夜明けのグラデーションとともに1時間ほど車を走らせて
ノースに到着すると、ちょうど太陽が登り始めたところだった。
しかも、もう四人も仲間が集まっている!
ノースでは東の海に日の出を眺めることができるのが嬉しい。
サウスとはまた山々の見え方も違っていると思うし、冬になるとここは驚くほどに寒くなる。
同じ島の中でもまた違った風情のあるノースを訪れるのは小旅行のようでいつも楽しい。
今結婚指輪をお作りしているお二人は同じ屋久島のノースに暮らしているので、
奥岳を望む美しい情景に囲まれて暮らしているはず。
ノースには新月堂さんもあるし、パノラマさんもある。
宮之浦で早朝の波に乗ってアトリエに帰ると時計の針は8時を指していた。
しっかり目に朝食を食べてコーヒーを入れて、作業机に向かう。
それでようやく9時になるところだった。
体の中にはまだ海の感覚が残っている。
なかなか素敵な指輪作りの始まりだった。
考えてみると、リングを横から眺めると太陽や月と同じように丸くて、
確かにそこに惹かれるところもある。
リングをどの場所を切り取っても均一な曲面となるように鉄鋼ヤスリで表面を削り取っていく。
一周回るとほんの少しだけ角度を変えてまた一周、そして角度を変えて一周。
できるだけ同じ力で何度もタッチを積み重ねていく。
リングの表面がつるりと丸くなったところで、そっと当ててみる。
ラウンドシェイプならではのアウトラインから柔らかさと繊細さが伝わってくる。
そしてそこには確かなプラチナの重みを確かめることができた。
それはまるでこれまで長い年月を連れ添ってきたような、とても親密なフィーリングだった。
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