山の裾野を越えて海の向こう側、水平線からオレンジ色の光が広がっている。温もりを帯びたその光は徐々に世界を明るくし、一日の始まりを告げる。
車のバックミラー越しにその情景を眺めていたのだけれど、思わず車を路肩に停めてドアを開き屋久島サウスの空を見上げた。
夜明けの空気が冷たい。けれどもその中には温度を持った息吹のようなものが徐々に広がりつつあるのを感じられる。
また同じように一日が始まろうとしている。
いつものビーチでは仲間と一緒に波に乗った。
そしてアトリエに戻って熱いカフェオレを二人分作ってフレッシュな気持ちで作業机に向かう。
ただそのシンプルな出来事に感謝の身持ちでいっぱいになった。
お二人の結婚指輪づくりはこれから第二幕へ。
彼女のリングと彼のリングはお揃いのプラチナでお作りするのだけれど、実のところ細部のデザインは少しずつ違っている。
サイズはもちろんだけれど、その他にもリング幅や表面のラウンド具合などをそれぞれのお好みに合わせてデザインをした。
やっぱり毎日身につけるものだから、日々を快適に感じられることが一番かな、と思う。
一緒に何十年もお使いいただけますように。
お二人の結婚指輪をお作りできることは私にとっての宝物だと思う。
さて、今日も作っている。
大きな鉄鋼ヤスリが2本と精密ヤスリが2本、小さいものはいつもどこにあるかわからなくなってしまうので、ルーペは同じものがいくつかある。あと、リングにはラインをけがいて寸法に沿ってプラチナを削り落としていく。
作業の途中に庭先でリングのアウトラインを確認しておく。
ときどき立ち止まってクールダウンをしておく。
彼のリングは表面を丸くカーブさせておきながら、側面にはしっかりと平面を残して仕上げるイメージだ。
彼女のリングと同じように柔らかさを感じられるし、すっきりとシャープな印象もある。しっかりとボリュームを取るともできるので、タフにお使いいただけると思う。
それにしても、オーダーメイドでデザインが生まれるプロセスはとても興味深い。
相談会でお二人とご一緒した時に、彼も彼女が何気なく手にしたサンプルリングがとても近しいデザインだったのをよく覚えている。
リングを形作るものは、あるいはお二人が共に過ごした時間や分かち合った想いなのかもしれない。
リングを眺めていたら、西陽が差し込んできて、プラチナリングとポツリと咲いていてたランタナを強く輝かせた。
もう少しで夜がやってくる、そしてまた新しい始まりを繰り返していく。そのようなシンプルな日々を、大切な人と一緒に迎えることができればいいと思う。
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