夢中になってタッチを積み重ねていた作業から、ふと我に返って一息をつくとプラチナリングはこんなにも丸くシェイプされていた。
全体をなめらかなカーブで覆う造形作業では途中で手を止めるわけにはいかない。
そのような集中状態にあるとしばしば没頭しすぎてしまうこともあるので、ときおり目の前でパンと手のひらを叩くように自分自身を解いてあげるように気をつけている。
なんと言っても、アトリエでは朝から夕方までずっと一人なのだ。
静かに作業机に向かっているようではあるけれど、内側では実にいろいろな事が起こっていてとても賑やかだったりもする。
一人での作業ではあるけれど、向かう場所がはっきりとわかっているから歩いて行ける。
いつもオーダーメイドに寄り添っていてくれるお二人にありがとう。
新しい何かに出会う事ができるオーダーメイドのジュエリー作りはいつも楽しい。
お二人とのデザイン作りにもまた発見があったように思う。
挑戦できる日々は素晴らしい。
いつもはどこかにシャープな印象を残して仕上げるのだけれど、彼女のリングはどこまでも柔らかに仕上げたい。
リングからはフラットな面を一切取り除いて全てを曲面で構築することにした。
表面と側面と、そして内側を鉄鋼ヤスリで丸く造形した後に、思い切りよく力をかけてアウトラインをカーブさせるとリングに更なる動きが与えられた。
新しくアプローチしたカーブのバランスもいい具合だ。
小さなリングには川から海へと注がれる水のように静かで力強い動きを感じる事ができた。
ここからは紙やすりに持ち替えて細部を整えるように磨き上げていくことにしよう。
つけ心地に響いてくる大切な作業だ。
日々快適にお使いいただけるように、時間をかけてじっくりとタッチを重ねていきたい。
初めて大地を踏んだのがようやく夕暮れ時になってからだったけれど、そんな日もある。
ずっと遠くを眺めて深呼吸。
今日も屋久島にありがとう!
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