待っていたよ。庭先に咲いた白い百合。
気品の漂う佇まい、大好きな香りはいつも大切な記憶と共にある。
ああ、この季節に作業机に向かっていたなあ、と
お二人の指輪作りを懐かしく思い出す日がいつかやってくるのだろうか。
屋久島の季節と、お二人と、そしてわたしがいて。
巡り合いが生み出す造形であるようにも思う。
波のリズム、季節の巡り、あるいは時の流れのように。
お二人の結婚指輪は自然の中に漂う神秘のようなものがデザインのインスピレーションになっている。
形はないかもしれないけれど、耳を澄ますと確かにここにある、
万物に恩恵や愛情を感じることができるのは、わたしたちを繋げてくれている柔らかな心地であるように思う。
さて、今日も作っている。
彼のプラチナリングはうまく調和をとることができた。
丸くて柔らかなアウトラインだ。
リング幅には細いところと太いところの抑揚がある。
こうして切削作業を行う前のピンクゴールドと重ね合わせてみると、かなりの道のりを進んできたことがよくわかる。
彼のリングの印象が鮮明なうちに、ここで彼女のリング作りにバトンをタッチする。
最初は目の荒い鉄鋼ヤスリを使い、リングの表面を何周か大きく削り出す。
そして目の細かいものに持ち替えてまた何周か、同じタッチを繰り返していく。
繊細さを感じられるように、そして強くなるように気を付ける。
リングの表面にはやがてピンクゴールドの無垢の質感が現れる、
そのヴィヴィッドな色彩が胸のずっと奥の方に響いてグッときた。
少し雨が降ったのだろうか、
作業をひと段落して庭先に出てみると世界がキラキラと輝いていてむっちゃ綺麗だった。
単調な繰り返しのような日々かもしれないけれど、
そこには小さな喜びがたくさん潜んでいて、癒される。
そしてまた作業机に向かうのもいつものリズムである。
作業は半ばに差し掛かった、というところだ。
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