
一日を通して、長い雨が降り続いていた。
アトリエは湿度のベールに包まれたように静まり、窓の向こうでは緑がひときわ深くなる。
雨はときおり激しさを増してざあざあと降り、やがてまた穏やかになる。
そのようなリズムを、ゆっくりと繰り返していく。
なんとも屋久島らしい時間を心地よく感じながら、作業に夢中になっていた。
熱帯の季節へ。
いつも結婚指輪作りに寄り添ってくれる屋久島に、ありがとう。
気がつけば一年の1/4が過ぎていた。
やがて雨はさらに深まり、屋久島サウスには百合や紫陽花が咲き始めるだろう。
ゆっくりと、けれどもどこまでも力強く、
島を包み込む自然のリズムに励まされながら。
さて、今日も作っている。

プラチナリングの表面に施す彫刻模様は、今回の結婚指輪作りの核となる部分なので、
油絵の具をのせる前の白いキャンバスのように、余白ができるだけ大きくなるよう、丁寧に作り上げていく。
あるいは、そうして余白を立ち上げていくこの感覚は、むしろ日本画的なアプローチに近いのかもしれない。
海と森、そして光のイメージへ。
ほのかに丸く整えた表面に、一周するように三つの象徴的なかたちを、ラインで描き入れていく。

最初は目の粗い鉄工ヤスリで大きく削り出し、徐々にヤスリの目を細かくしながら、均一な曲面へと整えていく。
無数の平面を幾重にも重ねるようにして、ひとつの滑らかなカーブを作り上げていく。
削り出すたびにプラチナの生の質感があらわになり、その無垢な輝きに心を奪われる。
意外かもしれないけれど、プラチナの手触りはとてもやわらかい。
その有機的な質感が、より自然に手に馴染むよう、内側にも緩いカーブを与えていく。
造形作業がひと段落するまでに、4本の鉄工ヤスリと数種類のサンドペーパーを使った。
表面と内側はなだらかなカーブに包まれ、側面にすっきりとした平面を残したフォルムが出来上がった。
よりスムーズなラインを生み出すため、ここまでは手を止めることはなかった。
その小さなリングの中には、止まることのない静かな流れのようなものが宿っていることを、確かに感じ取ることができた。
作業机の上には細かなプラチナの粉が散らばり、デスクライトの光を受けて、きらきらと輝いていた。

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