屋久島サウスのアトリエです。
庭先では月見草がポコポコと咲き始めている。
外は相変わらずの雨降りではあるけれど、一年ぶりの薄ピンク色が嬉しくなって軒先に出てファインダーを覗いていた。
モワッとあたたかで重たい湿度を感じるのも久しぶりだったかも!
屋久島が屋久島らしくなりつつある季節がやってきた。
雨の日のジュエリー作りはいつも愉しい。
ポツリポツリ雨音をBGMにしてお二人の結婚指輪を作っている。
手の中にある感覚を頼りにする昔ながらのジュエリー作りではあるけれど、
案外細やかな数値を大切にして進めていく。
たとえば、二人のリングの厚みに0.2mmの違いをつけてみたり、切削と磨き仕上げ作業で目減りする0.1mmのボリュームをあらかじめ計算しておいたり。
0.1mm単位で造形の雰囲気が変わってしまうので、常に今の状況に意識を置いておかないといけない。
一度前に進めると戻ることのできない作業かもしれない。
思い切りの良いタッチが必要ではあるけれど、いつも注意深くなくてはならない。
なんだかシーソーのような制作に夢中になりながら、
今日も作業机に向かっている。
くるりと曲げたプラチナはその両端をぴたりと合わせておいて、繋ぎ目にほんの少しだけ融点の低いプラチナを添えてから酸素トーチの炎に包み込んだ。
リングの温度がある一定の温度まで上昇したところで、繋ぎ目に添えておいたプラチナのみが溶け始め繋ぎ目の間を液体となって通り抜ける。
その瞬間を見定めてわたしは酸素トーチの炎をぴたりと止める。
真っ赤だったリングは徐々にその温度を失い元の銀色に戻っていく。
繋ぎ目に流れ込んだ金属もそれと一緒に温度を下げる。
温度が下がり切るのを少し待ってルーペでその継ぎ目をチェックすると、しっかりとリングの両端をつなぎ合わせてくれているのを見てとることが出来た。
相変わらず背筋が伸びる作業だけど、うまく接続できたように思う。
最初は力をかけてくるりと曲げることができたプラチナだけど、こうして両端をつなぎ合わせてリングにするとグッと硬くなる。
そしてリングの表面と側面を金槌でコンコンと力を入れて叩き、更なる圧力をかけながらリングの形を均一に整えていった。
ここまでやっておくと瞬発的にも、長期的にも、変化に対してプラチナリングは安定した強さを得る。
表面の凸凹は消えてなくなるし、デザインには見えないところかもしれないけれど、つけ心地に響くところをしっかりと頑張っておく。
作業の合間には久しぶりのアラスカドーナツさん!でホッと一息つきました。
雨だったり、ファインダーの中だったり、花も。
あと美味しいおやつもそうなのです。
朝起きてからずっと、自分にとっての救いのようなものを周りに集めているような時間かもしれないけれど、
誰かと分かち合うことができると日々は喜びに包まれます。
いつも隣にいる大切な人と。
ジュエリーを受け取ってくれる皆さまと。
小さな世界を育むことができれば幸せだなと思います。
屋久島サウスのアトリエより、みなさま素敵な日曜日を。
明日もまた、ジュエリー作りです!
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