秋の雨音に耳を傾けながら、作業机に向かっている。
激しい雨がザアザアと一日中降り続き、窓の向こうに見える緑は、とても深い。
その屋久島らしい時間に包まれていると、不思議と心が静まっていく。鉄鋼ヤスリを手に取り、プラチナリングの表面を削り出していた。
たしかに、お二人にアトリエでお会いした日のことは、わたしも鮮明に覚えています。
指輪が完成するのが待ち遠しいような、でももう少し夢の続きを楽しみたいような気もしますね。
あの時は、あんなにも暑かったのに!
気がつけば、長袖のシャツを着ることも多くなってきた。
わたしたちのジュエリー作りもまた、巡りゆく島の季節のように、力強く推し進めていかなくては。
雨が弱くなるタイミングで、思い切って庭先に出てみる。
雨の音と香り、深まる緑。そして柔らかな手触りと。
風の中に漂う神秘的な気配のようなものがある。
お二人とは、日々の暮らしの中に出会う“響き”のようなものを、大切に思う気持ちで繋がっているように感じる。
1日の終わりに、プラチナリングに滑らかな曲面が生まれた。
窓ガラス越しに差し込む夕暮れ時の微かな光が、その表面を高速に巡る。
繊細に見えるけれど、プラチナは手の中でしっかりと重たい。
柔らかな手触りの中に確かな硬さが伝わってくるのは、大地から生まれた金属ならではの魅力なのだろう。
ここまでやってきたのだ、としみじみ思う。
まだまだ荒削りではあるけれど、リングに宿る小さな息吹のようなものを、たしかに感じ取ることができた。
お二人の結婚指輪作りも、いよいよ折り返し地点を過ぎた、といったところだ。
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