そういえば、お二人には、“月”にまつわる素敵な出会いのエピソードを聞かせてもらった。
短い時間ではあるけれど、お二人の物語に寄り添いながら結婚指輪を作ることができるのは、わたしにとってかけがえのない宝物のように思う。
秋雨の合間、空に浮かぶ昼間の月を眺めながら。
案外、アトリエで交わす何気ない会話が、デザイン作りの大切なエッセンスになったりもする。
シンプルだけど、お二人だけの特別な結婚指輪。
ラウンドシェイプのプラチナリングを作っている。
たしかに、結婚指輪をデザインする際、お二人の大切な想いを形にしようとすると、その色彩豊かなストーリーは小さなリングには収まりきらないことがある。
お二人が出会った日の記憶をそっとしまっておけるようなデザインを目指し、わたしたちは結婚指輪の理想を共に抱き続けてきた。
いつも思うのだけれど、多彩な印象を感じられるようなフォルムを探し求めていくと、最終的には限りなくシンプルなスタイルに辿り着くのかもしれない。
あるいはそれを、“洗練”というのかもしれない。
さて、アトリエです。
今日も少しずつ。
彼の大きなリングと彼女の小さなリング。
まだまだ荒削りな状態だけど、プラチナの内側に、これから形作るべき輪郭をしっかりと見ることができる。
そのフォルムを鉄鋼ヤスリを使い、木の中に仏像を彫刻するように削り出していくのだけど、その前に、ひと仕事。
リングの表面を、そして側面を、金槌でコンコンと叩く。
同じタッチを何度も繰り返す。
この段階でリングに圧力をかけておくと、プラチナは硬くなり、強さを増してくれるのだ。
表には現れない、シックな作業ではあるけれど、ここはとても大切なところ。
これまでデザイン作りの道のりを長く歩んできたのだ。一度だけの制作を、じっくりと進めていきたい。
作業がひと段落をして、近所のパン屋さんまで車を走らせていると、海辺にコスモス畑ができているのに気がついた。
ふわふわと風に揺られているのに、太陽に向かってすくすくと伸びている。植物って本当によくできているなと思う。
しなやかで力強い。ジュエリー作りで目指すところは、いつも島の暮らしの中にあるような気がする。
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