
朝から眩しいほどの晴天が広がった。
いったい何日ぶりだったのだろう。
ただただ、空を見ているだけで嬉しくなる。
まだ海荒れは続いているけれど、台風の後片付けを少しずつ始めながら、ようやくほっと肩を撫で下ろしていた。
雨の間にコツコツと進めていた作業も、ずいぶんと捗ったように思う。
彼のプラチナリングも、無事に造形作業を終えることができた。
それはまるで、台風が遠ざかり、山々を長く覆っていた雲が晴れていくのと呼吸を合わせるように、わたしの気持ちを明るく晴れやかにした。
せっかくの青空なので、久しぶりに太陽の光の下でリングを眺めてみようと思い立った。
準備をしていて、ふと気がついた。
三本のリングが揃うのは、実はこれが初めてなのだ、と。

彼のラウンドシェイプのリング。彼女の若葉の指輪。
二本のプラチナリングがおふたりの結婚指輪になる。
シルエットはそれぞれのお好みに合わせてお作りしたものだけれど、隣り合わせにすると、不思議なくらいよく馴染んでいた。
異なる形を、プラチナの静かで上品な風合いがそっとつないでいるようだった。
こうして遠目に眺めていても、細やかな手触りの心地よさまで想像できる。
ここにお揃いのブルーダイヤモンドを添えると、親密なつながりが生まれるだろう。
島の緑の中に佇むリングを前にして、完成を思い描いている自分に気がついた。
おふたりに早く手に取ってもらいたい。

三本のリングをそっと重ね合わせてみる。どきどき。
シャンパンゴールドの花とプラチナの若葉がぴたりと重なり、そこに黄金色から白金色へと、心地よいグラデーションが生まれた。
ありがとう。
シンプルな言葉が溢れてくる。
朝の庭先で小さなリングたちが手を繋ぐように寄り添い、一日が始まる喜びを分かち合っている。
そうだ。リングが完成を迎えることは、おふたりにとっては始まりの合図でもあるのだ。
私たちはいま、その始まりに向けて、ゆっくりと歩みを進めている。
そのかけがえのない日々に、こうして指輪作りでご一緒できることが、わたしにとっては何よりの贈り物のように思える。
アトリエに戻り、プラチナリングの内側に施す刻印の位置を決めて、目印をつけた。
クリアカラーのダイヤモンドとブルーダイヤモンドの大きさを選び、必要な数と予備を取り分けておいた。
窓の向こうからは、生まれたばかりのような瑞々しい光が差し込んでくる。
台風は遠ざかりつつあり、島にはまた、新しい季節の気配が漂い始めている。
雨上がりの陽光を浴びて、白いハイビスカスが一番に花を咲かせた。
何度でも、何度でも、新しい始まりを繰り返していく。
プラチナとゴールドで仕立てられた指輪もまた、おふたりの日々に寄り添いながら、少しずつ味わいを増し、そのたびに新しい表情を見せていくのだろう。
金属の時間に想いを巡らせていたからだろうか。
アトリエには、いつもより少しゆっくりとした空気が流れているような気がした。

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