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夏の余韻。やさしい気持ち。ピンクゴールドの呼吸。#屋久島でつくる結婚指輪

プラチナとピンクゴールド。ふたつの素材を用いて、おふたりの結婚指輪を作り進めている。

 

彼女のピンクゴールドは、細い部分が1.3mm幅と、とても繊細だ。

その華奢なシルエットを、息を潜めるようにして、鉄鋼ヤスリで慎重に削り出していく。

 

彼のリングとは、素材もフォルムも異なっている。

けれども、その奥底にはふたつを繋ぎ合わせる確かなインスピレーションが流れているように思う。

時間という、同じひとつの流れを宿すように、タッチを重ねていく。

 

 

おふたりと一緒に思い描いたイメージが、少しずつ形になっていく時間は、心躍る。

喜び満ちる日々に、ありがとうございます。

ひかりを紡ぐ。プラチナリングに巡る時について #屋久島でつくる結婚指輪

 

台風が去ったあとなのに、なぜか夏が戻ってきたように暑いのはなぜだろう。

庭先ではシロツメクサが背丈を伸ばし、ハイビスカスもまた元気に花を咲かせ始めている。

 

いつもは作業机に向かい続ける、静かでシックな時間が流れているのだけれど、

庭先で出会うささやかな変化が、とても新鮮な喜びを与えてくれる。

休むことなく、力強く生き続ける植物たちの姿に癒されながら、今日も作業机に向かっている。

 

さて、指輪作りもいよいよ後半に差し掛かった。

ピンクゴールドのリングをひととおり削り終えたところで、紙やすりでざっと表面を磨き上げ、そのあとにリングを朴炭の上に乗せ、ガスバーナーの炎に包んだ。

いくつかの工程を経て緊張を帯びた金属を、ここで一度、やわらかく解きほぐすためだ。

 

金属というのは不思議なもので、作業机に向かっていると、ときおりその中に、小さな呼吸のようなものを感じることがある。

 

その小さなリングに、一つだけの温度を宿すように、これからさらなる造形を重ねていくところだ。

 

柔らかで、力強い。

植物を手にするときのように、やさしい心地に仕上げることができればいいと思う。

 

夜になると、窓の向こうには星空が広がった。

雲ひとつなく、澄み渡る山際を眺めるのは、ずいぶんと久しぶりのような気がした。

 

そういえば、おふたりは屋久島よりもずっと南の島に暮らしていたと言っていたけど、

そこで眺める星空も、きっと見事なものだろうなあ。

 

明日もまた、暑くなりそうだ。

 

屋久島でつくる結婚指輪

オーダーメイドのお問い合わせはこちらまで
hp@kei-jewellery.com
tel: 0997-47-3547

 

ひかりを紡ぐ。プラチナリングに巡る時について #屋久島でつくる結婚指輪

島に接近していた台風は、幸いにも上陸することなく、静かなうねりだけを残して東の海へと去っていきました。

いつものビーチで眺めた空は、思わずゾクっとするほどに澄み渡り、秋の到来を感じさせる深く鮮やかな色彩が広がっていました。

こうしてひとつの台風が過ぎるたびに、季節が新しくなっていく。

ダイナミックでありながらも繊細に巡る時の流れを、自分自身がその一部として感じられるのは、島暮らしならではの感覚なのかもしれません。

 

 

入道雲からうろこ雲へ。ハイビスカスからサキシマフヨウへ。

刻々と移ろう季節のグラデーションに包まれて、お二人の結婚指輪を作っています。

朝露に煌めく朝に #屋久島でつくる結婚指輪

 

海で出会う流線や、山々のフォルム、月の満ち欠けも、

すべては、巡りゆく時間が形づくるもののように感じられます。

 

あるいは、わたしたちが自然の中に日々眺めているものは、

刹那という形式をとった、時間そのものなのかもしれません。

 

プラチナとピンクゴールドでお仕立てする、おふたりの小さなリングもまた、

巡りゆく時の流れであり、

同時に、今という瞬間でもある。

 

手の中に生み出していくのは、そのようなフォルムであるように思うのです。

 

さて、アトリエです。

プラチナとピンクゴールドがリングになりました。

その色彩のコントラストに、しばし魅入りながらも、

これからいよいよ本格的な造形作業に取りかかるところです。

 

まずはプラチナリングの表面にいくつかの罫書き線を描き、その罫書き線を目印にしながら、向かい合わせになるよう波のような流線をマジックで描きました。

その流線に沿って、地金を削り出していきます。

 

まずは目の粗い鉄鋼ヤスリを片手に、大きく、力強く。

ラインの際にきちんと収まるよう、注意深くタッチを重ねていきます。

 

大まかな造形が取れたところで、ヤスリを細かい目のものに持ち替え、また一周。もう一周。

とても地味な繰り返し作業ではあるけれど、タッチを重ねるたびに、少しずつ、わたしたちが思い描いていたフォルムの、小さな兆しのようなものが見え始めてくる。

 

こうして、冷たくて硬いプラチナに息吹が宿りつつある瞬間を分かち合えるのは、オーダーメイドならではの喜びであるように思います。

 

夕暮れ時に一息をついて、リングのフォルムを太陽の光の下で眺めました。

リング全体は、丸くて柔らかな曲線で包み込みました。

その中に、“流れ”を表現するラインが巡っています。

 

一日の終わりを告げる柔らかな光を受けて、リングの表面には濃い影が生まれていました。

 

この“流れ”を、もっとスムーズに磨き上げていくと、光がより自由に巡りゆくようになるだろう。

 

リングに宿る、移ろう輝きを思い描くと、なんだか心が躍りました。

 

ふと見上げると、木々を通り抜けて届いた光が眩しくて、

サキシマフヨウの花びらは、淡いピンク色の透きとおるベールのように見えました。

 

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月と星、ピンクゴールド。屋久島を訪れ、結婚指輪を作ること #屋久島でつくる結婚指輪

彼女が屋久島を訪れるのは、なんと二十年ぶりとのことでした。

当初は接近が危ぶまれていた台風も進路を変え、穏やかな天候に恵まれた日。

待ちに待った、結婚指輪の相談会でした。

 

「20年前は小学生で、宮之浦で眺めた星空は今でも鮮明に覚えています」

彼女が、時をそっと振り返るように言いました。

たしかに、屋久島の自然には、心を強く惹きつける磁力のようなものがあるように思います。

その数年後にわたしが島に暮らし始めたことを思うと、時の巡りが導いた神秘を感じずにはいられません。

お互いにとって大切な場所が紡いでくれたご縁に、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

おふたりの結婚指輪はお揃いのピンクゴールドで。

細部のデザインを少しずつ変えてお作りすることになりました。

「仕事中はつけないので、特にこだわりはなくて」と、最初のうちはそう話していた彼でしたが、

サンプルリングを手に取るうちに、少しずつイメージが広がっていき、

みんなでデザイン選びに夢中になったのが、とても楽しく、心に残る時間でした。

 

こうしていつも、おふたりの暮らしや大切な想いから、一つだけのデザインが生まれるのだから、面白いです。

出会うことって、本当に素敵だなと思います。

 

大雨の予報も気持ち良いくらいに外れ、西の空には晴れ間も広がり始めていました。

アトリエの庭先ではハイビスカスがいっぱいです。

 

翌日の森歩きも、きっと心地よいものになりそうだし。

20年ぶりに訪れた島からの、小さな恵みかもしれませんね。

 

ほんの数時間だったけど、おふたりとお会いできて、これまでにはなかったデザインが生まれました。

わたし自身も、とても楽しみな指輪作りです。

島の季節の中で、少しずつ育まれゆく時間を、どうぞあたたかく見守っていてください。

 

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朝露に煌めく朝に #屋久島でつくる結婚指輪

秋の花々が咲き始めている。

 

夜のあいだに気温がぐっと下がるせいで、庭先の植物たちは冷たい雫を纏い、

やがて日が昇ると、世界はまるで宝石を散りばめたように、きらきらと輝き始める。

 

早朝の庭先で、一年ぶりに咲いた黄色い花や、いつものツユクサを眺めながら、

新しく始まる指輪作りの工程を思い描いていた。

 

いつの間にか、まだ夏の名残を思わせる明るい陽光がアトリエを包み込んでいる。

どこからか金木犀に似た甘い香りが漂ってくる。

 

朗らかな空気に満たされた、とても素敵な朝だった。

 

プラチナとピンクゴールドでは、作業温度や硬さが大きく異なり、

それぞれに適した工具やタッチを使い分けながら、その工程を進めていかなくてはならない。

 

まずは、彼のプラチナをリング状に巻く。

そして、酸素バーナーの炎に包み、真っ赤になるまで熱し、その両端をつなぎ合わせる。

 

およそ数十秒ほどの、とてもシンプルな作業ではあるが、

プラチナが熱を帯び、溶けながら大きく変化を遂げていく様を目の前にすると、

金属が携える、果てしない“時”のようなものを感じずにはいられない。

 

プラチナがつなぎ合わされ、ひとつのリングとなったところで、

鉄の芯金に通し、木槌で叩きながら、完全な円形を作り出していく。

 

コンコン、と昔ながらの手作業の音がアトリエに響く。

窓の向こうでは、島に接近中の台風が運ぶ風が、少しずつ強く吹き始めてきた。

 

このようにして金属は、形を変えながら、果てしない時間を通り抜けて、いま、わたしの手の中にある。

そしておふたりと出会い、屋久島の季節の中で結婚指輪を作っているのだと考えると、

この瞬間が、開花したばかりの花に宿る、一滴の雫のような奇跡に思えた。

 

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出会い編

島が紡ぐ物語、真夏の結婚指輪相談会 #屋久島でつくる結婚指輪

若葉の指輪。屋久島で紡がれる、ひとつの結婚指輪の物語 #屋久島でつくる結婚指輪

おふたりの結婚指輪は屋久島で出会った緑のイメージで。

イエローゴールドに、一粒のダイヤモンドを添えてお仕立てしました。

小さな森の中で眺めると、そこに芽生えた柔らかな若葉のように見えました。

 

ゴールドの若葉は、実物と同じくらいの大きさです。

植物の柔らかな手触りを金属に映し出すように、表面には細やかな凸凹のテクスチャーをつけて仕上げました。

 

今回は、結婚指輪ということで、リング部分にはしっかりとしたボリュームを持たせてあるのがわかりますでしょうか。

見た目の軽やかさよりもずっと、確かな手触りが伝わってきます。

 

昔ながらの手作業で、じっくりと作り進めてきたリングです。

 

指輪作りの始まりに、彼が送ってくれた写真を見て、驚いたのをよく覚えています。

彼女がシダの若葉を、リングのように指に添えていて、それがわたしのつくるジュエリーによく似ていたのです。

あるいは、そのものと言ってもいいくらいに、そっくりでした。

 

草葉を摘んで身に纏うように。

それは、わたしたちが幼い頃から抱く、永遠の想いなのかもしれません。

その深い部分に漂う純粋さのようなものに触れさせてくれるのも、屋久島の森が与えてくれる神秘のひとつのように思います。

 

これまでは、小さなダイヤモンドを散りばめることが多かったのですが、

特別な記念のジュエリーとなるように、おふたりと相談を重ねて、大粒のダイヤをセットすることにしました。

ワクワクした気持ちで、わたしのコレクションの中から、美しい一粒を選んだのは、今でも心に残る素敵な思い出です。

 

オーダーメイドのジュエリー作りでは、もちろん、形のある指輪をお届けするわけなのですが、

その奥には、形を持たない何かを分かち合うような、かけがえのない時間が流れています。

デザイン作りの途中には、なんと、嬉しいご出産のご報告もいただきました!

 

おめでとうございます!

幸せなジュエリー作りを、本当にありがとう。

 

おふたりには、いつの日かお会いできるかもしれない。

なんだかそんな予感もしています。

屋久島で紡がれたこの素敵なご縁に、感謝の気持ちに満たされながら。

 

 

 

 

屋久島でつくる結婚指輪

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制作編

ありがとう。オーダーメイドの結婚指輪が育まれるとき #屋久島でつくる結婚指輪