1年間はほぼ土の中にいて、そこで少しずつ命を育んで、五月の爽やかな光をいっぱい浴びて咲いた白い百合。
柔らかで、力強く、香りも品が良くて、
今年もむっちゃ癒された。
考えてみると、百合が咲き始めたのを合図にして始まったお二人の結婚指輪作りだったなあ。
開花とともにその工程もピークを迎えているところである。
爽やかな屋久島の五月、楽しいオーダーメイドの時間 #屋久島でつくる結婚指輪
お二人が出会うまでにはもちろんそれぞれの暮らしがあって、
それはもしかすると、百合が土の中にいるようにその期間はとても長くて、
ご結婚を前にした今はまさに花が開いた瞬間に似ているのかもしれない。
ペアで揃える結婚指輪選びは陽光の中で行う共同作業のようなものかもしれない。
彼のリングと彼女が選んでくれたのは同じ2.0mm幅のプラチナリング。
表面に島に漂い打ち寄せる柔らかな波のような切り込み模様を施したデザインである。
彼はシンプルにまっすぐに、シャープなアウトラインが好みだったけれど、
彼女はもう少し柔らかな印象を気に入ってくれていた。
この微妙な違いもまた素敵なところで、わたしは気に入っている。
彼女のリングは全体にゆったりとしたカーブを与える。
角をとって柔らかな印象にする。
ここで彼のリングとお揃いになるように仕上げるのはわたしの仕事だ。
彼女のリング表面の切り込み模様は、そのパターンを少しだけ変えて施した。
曲線的な印象にフィットするようにしたかったからだ。
それでも二つのリングの奥底には、二つが元々は同じものであることを感じることができるように、最初に彼と同じシャープな造形に作り上げてから、その後に手の中で柔らかにしていくことにした。
ここまで数々のタッチを加えて硬くなったプラチナリングには炎の中で温度を上げて緊張を解いておく。
木槌や金床などかなり硬い工具を駆使してプラチナリングに柔らかな表情を与える、というのもなんだか不思議に思えるのだけれど、なかなか動きのある曲線になってきた。
あとは全て手の中で育てるように磨き上げてゆく。
柔らかに、そして力強く。
夕暮れ時、作業をひと段落して庭先に出てみると、クリアな空に新しい感じの雲が浮かんでいた。五月晴れとはなるほど。
絶景も時にはいいけれど、ふとした瞬間に綺麗だなと感じられるような何気ない風景が好きだなと思う。
ご飯とナスと小松菜の味噌汁にシャケの切り身を焼いたもの、そして納豆と卵の朝ご飯的な。
ささやかな日常に喜びを感じられるようになると、人生は鮮やかに彩られるのかもしれない。
そんな幸せな場面にそっと寄り添っていてくれるような結婚指輪を作りたいと思う。
大きく深呼吸をして、また明日もジュリーづくりです。
屋久島でつくる結婚指輪
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