4月のいきいきとした色彩が、島を豊かに包み込んでいる。
山々に広がる緑は、なんとも多様で、そして力強い。
毎年のことのはずなのに、新緑の季節が訪れるたび、どうしてこんなにも心が躍るのだろう。
アトリエの窓から差し込む、南国特有のまばゆい光に癒されながら、新しいジュエリー作りに取り掛かっていた。
シルバーを小さな耐熱容器に入れ、ガスバーナーの炎を最大まで強めて、まわし当てる。
赤く輝きながら、金属がゆっくりと液体へと変わっていく。
その瞬間を見計らって、すっと鉄の枠に流し込む。
まずは最初の第一歩だ。
藤の花が咲いていることに気がついたのは、作業が一段落し、休憩を兼ねて庭先に出た時だった。
アトリエの西側、いつもの場所に、房のように集まった紫色の花が風に揺られている。
「そうか、この季節に咲くのだった!」と、嬉しい驚きがあった。
背丈よりも高いところに咲く花を見上げると、その隙間から差し込む西陽が眩しくて、思わず目を細めた。
気持ちを新たにして、アトリエに戻る。
棒状に固めたシルバーを引き伸ばしながら、その形状を整えていく。
ときおり、バーナーの火を当てて金属を柔らかくし、目当ての寸法になるまで、何度も圧縮を繰り返す。
少しずつ、フォルムが端正になってゆく。
作業場はとても静かで、いつもとは違う時間が流れているように感じられる。
深いところで、とてもゆっくりと流れていく。
目当ての寸法に整えたシルバーは、お二人のサイズに合わせて、くるりとリング状に巻いた。
冷たいはずなのに、そこには小さく宿るあたたかさを感じることができる。
これまでお二人と育んできたイメージが、今ここで、かすかな手応えとなって、形を帯びつつある。
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