秋の花々が咲き始めている。
夜のあいだに気温がぐっと下がるせいで、庭先の植物たちは冷たい雫を纏い、
やがて日が昇ると、世界はまるで宝石を散りばめたように、きらきらと輝き始める。
早朝の庭先で、一年ぶりに咲いた黄色い花や、いつものツユクサを眺めながら、
新しく始まる指輪作りの工程を思い描いていた。
いつの間にか、まだ夏の名残を思わせる明るい陽光がアトリエを包み込んでいる。
どこからか金木犀に似た甘い香りが漂ってくる。
朗らかな空気に満たされた、とても素敵な朝だった。
プラチナとピンクゴールドでは、作業温度や硬さが大きく異なり、
それぞれに適した工具やタッチを使い分けながら、その工程を進めていかなくてはならない。
まずは、彼のプラチナをリング状に巻く。
そして、酸素バーナーの炎に包み、真っ赤になるまで熱し、その両端をつなぎ合わせる。
およそ数十秒ほどの、とてもシンプルな作業ではあるが、
プラチナが熱を帯び、溶けながら大きく変化を遂げていく様を目の前にすると、
金属が携える、果てしない“時”のようなものを感じずにはいられない。
プラチナがつなぎ合わされ、ひとつのリングとなったところで、
鉄の芯金に通し、木槌で叩きながら、完全な円形を作り出していく。
コンコン、と昔ながらの手作業の音がアトリエに響く。
窓の向こうでは、島に接近中の台風が運ぶ風が、少しずつ強く吹き始めてきた。
このようにして金属は、形を変えながら、果てしない時間を通り抜けて、いま、わたしの手の中にある。
そしておふたりと出会い、屋久島の季節の中で結婚指輪を作っているのだと考えると、
この瞬間が、開花したばかりの花に宿る、一滴の雫のような奇跡に思えた。
オーダーメイドのお問い合わせはこちらまで
hp@kei-jewellery.com
tel: 0997-47-3547
出会い編