南国のまぶしい光がブラインド越しに差し込み、アトリエをあたたかな空気で満たしている。
日中の汗ばむほどの暑さが続いているけれど、この場所にいると、どこまでも静かで、心は涼やかに落ち着いていく。
木槌を片手に、コンコンと響く音に包まれながら、いよいよ迎えた大切な造形作業に夢中になっていた。
ひとつのピンクゴールドとひとつのプラチナに、これまで少しずつタッチを加えてきた。
一度進むと戻ることのできない、金属を扱う繊細な手作業である。
ときには微妙な調整を加えながら、ここまで歩んできた。
そのようにして生まれる、ごくささやかな“揺らぎ”のようなものが、ひとつだけの息吹をリングに宿すことになる。
まるで、野原に咲いたばかりの一輪の花のように、
2本のリングのアウトラインには、お揃いのカーブを施した。
水面を漂う波のようにやわらかで、どこまでもスムーズな曲線だ。
これまで少しずつ異なっていた意匠を、はじめて一つの場所に繋ぎ合わせることができた。
視覚的にも、つけ心地にも優しいフォルムを作り出すことができたように思う。
鉄の台の上で、リングをそっと重ね合わせる。
ふと、夏のアトリエでお会いしたおふたりのことを思い出す。
新しい暮らしを始めたばかりのおふたりは、きっと今頃、それぞれの道を歩みながら、大忙しの日々を過ごしているのだろう。
なんだか、このふたつのリングが、おふたりの響きと重なるように思えて、微笑ましくなる。
うん、きっとよくなるだろう。
残すところは、内側の彫刻作業、石のセッティング、そして磨き上げ作業だ。
少し先の未来への希望を抱きながら、最後の仕上げ作業へと向けて準備を進めていくことにした。
今日も、ひとつひとつ。
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