屋久島サウスのアトリエです。
指先に収まる小さなリングをつくるためには比較的サイズが大きな道具をよく使うように思う。
その中でも金槌、木槌の種類はなかなかに多い。
彼女のリングになるプラチナは、リングの形状にする前に金槌で打ち付けてその太さに太いところ、細いところの抑揚を与えていく。
こんこん、こんこん。
ハンマーはその表面をつるりと鏡のように磨き上げてある。
もう15年以上も前に大阪で創作活動をしていた頃に職人の先輩から譲り受けた手作りのハンマーを今もずっと大切に使っている。
リングに宿る温度感や味わいは、それをキャッチする誰かがいるときに初めて存在を成すのかもしれない。
昔ながらの手作業でじっくりと進めるお二人の結婚指輪作りだ。
たしかに、インスタグラムなどで作品を観ていただけるようになったこの頃ではあるけれど、感動したり、繋がったりする部分はずっと変わらないものなのかも、とも思う。
島に吹く風に静かに心を傾けながらタッチを積み重ねていこう。
素材はお揃いのプラチナである。
お二人はデザインも同じスタイルを選んでくれたのだけれど、よく見てみるとリズムを持った繊細さ(彼女のリング)としっかりとした安定感(彼のリング)のコントラストがあることがわかる。
そこにはもともとは一つであったものが二つになったような繋がりも感じられて!
少しずつではあるけれど、リングに宿りつつある息吹のようなものに鼓舞されてまた手を動かす。
今朝嬉しかったこと。
よく降る雨ではあるけれど、明るい雨が多くなってきたように思う。
庭先のミモザも雨と太陽をいっぱい受けて大きく育っていただきたい。
お二人のサイズ合うよう長さを調整してリング状にしたプラチナはその両端をつなぎ合わせるために酸素トーチの炎に包み込んだ。
つい先ほどまでは手でぎゅっと曲げることができたはずなのに、こうしてリングになると不思議ほどに強くなる。
1000度以上の高温にも耐えることができるの耐久性もプラチナの凄さなのだと思う。
作業机に向かっていると、
私たちよりもずっと長く在り続けるプラチナが、あるいはお二人を、そしてわたしたちをも繋ぎあわせてくれているのかもしれないな、と思えることがある。
圧倒的な時間軸の中に生かされているような感覚に救われる。
そのフィーリングは屋久島の森や海に佇むときのものに、とてもよく似ているような気がするのだ。
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